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王の領域

王宮の廊下を歩く。


背後のざわめきは、まだ遠くに残っていた。


セリューも何も言わなかった。


「……」


エルナスは足を止める。


窓の外には夜景。


静かだった。


(あれしかなかった)


視線を伏せる。


(それでも、あれ以外の答えはない)



「プラス先生、カナタの長期休暇って何ですか?」


――嫌な予感が、消えなかった。


夕方の事務室で、

ユウナギは、間を詰めた。


「……知らない。ただ遠いご友人から連絡が来た」


「遠いご友人?タシト隊長ではなくて?」


「そうだ。ただ、タシト隊長も承知している」


「ど、どういったご友人ですか?カナタに……そんな人、いません」


言いきるユウナギに、プラス先生は苦笑い。


「いつかのラン友じゃない?花束の……あ、すまん、適当に言った」


「……」


ユウナギは、近くにあった、椅子にもたれ掛かった。


「おい!大丈夫か?ユウナギ。顔色が悪いぞ」


「なぜ、タシト隊長は、カナタを手放したんですか?」口にした瞬間、自分でも違和感が走った。


――誰にもカナタを渡したくないのに。


タシト隊長とカナタは、深い関係にならない。どこかで、そう信じていた。


リュックに付いたウサギのキーホルダーが揺れる。


――でも、エルナス王は違う。


あの人は、

五年前から――同じ目で見ている。


ユウナギは、息が浅くなる。


「先生。俺、カナタのいる場所、分かるかもしれません。

今度は、俺に着いてきてくれませんか?」


「……ごめん。ちなみにどこ?」


「王宮です」



「……気づけば、お前と動いてること多いな」プラス先生は笑って話す。


コロニー北東区――王宮が近づく。


警備体制が厳しくなる。

人の気配は、ほとんどない。


いくつものシステムの門を通過する。


リングのIDが瞬時に身元を判別した。


「どなたに用事ですか?」関門所で初めて人が出てきた。

王宮は、まだ先だった。


「えっと……」プラス先生は、ユウナギをみた。


「……エルナス王に、お逢いしたいです」


「……」


返事はない。

――わずかな間のあと。


「少し確認しますのでお待ちください」ようやく来た返事は確認の了承に対するものだった。


しばらくの間。


「お待たせしました。今から迎えがまいりますのでしばらくお待ちください」


「え?」プラス先生は、ユウナギをみた。


ユウナギの瞳は、揺れていなかった。


城までは、無人の車が行き来する。

到着すると二人は乗り込んだ。


「先生、迷惑かけたらすみません」


「ち、ちょっと、何をするつもりだ?」


「何も。ただ――エルナス王がどういう人か、確かめたいだけです」


「そっか。……先生は、お前の味方だぞ。何があってもだ」


「……先生」


「……今のはサービスしすぎたな」

先生は、視線を上へ逃がした。


頭上にそびえる、コロニー内の城。


王宮は、惑星アストレアの歴史を映した厳かな建造物と、最先端の融合だった。


「……本当に王に直接、会えるのかな。にわかに信じられん」


「あの人が王か?」


城の入り口を通る。装飾が美しい。


「いえ、似てますがセリューさんです」


「あ、そうだったな。先生緊張してるぞ」


「こんにちは、ユウナギくん。お久しぶりだね」

セリューが出迎えた。


「こんにちは、セリューさん」


「王がお待ちだよ。案内します」そう言うとプラス先生を一瞥してお辞儀した。


「……まじか」


――王が、待っている。



(第八十三章・了)


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