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観測誤差

軍の端末に、タシト・レヴァントの名を打ち込む。


表示された記録。


年齢、十五。

レベル推定、十二。

現在――レベル八まで解除。


任務成功率。

生存率。

身体診断は、別枠。


そして――


「……損耗、ゼロ」


その文字列だけが、やけに浮いて見えた。


喉が、鳴った。



――遅れた。


あの一瞬。


掴めたはずの感覚を、取りこぼした。


「エルナス……」


タシトは、シャワーを浴びていた。


壁に拳を当てる。


鈍い音が、狭い空間に響いた。



特殊能力値測定センター通称、

オルデン・コア。


いくつもの弧を描く巨大な柱。

整いすぎた構造は、

どこか無機質だった。


「オッドーさん、こんにちは」


「あ、どうも。今日は久しぶりに、特殊部隊の連中の能力レベルを確認しに来ました」


「……また、上で何か動いてるんですか」


「さあ……どうでしょう」


光るマップ図が弛い半球体で中央に設置されていた。

名前とレベルそして力関係、手をかざすとプロファイルが小さく表示される。


――特殊部隊の勢力図。


俺たちにとっては、


化け物の集まり――。


(タシト・レヴァント!?)


「タシト・レヴァントの数値、変わりました?」


「彼の初期登録値と、今では随分差があるようです。生まれた時の数値は変わらないはずですが……」


「……リング無しで制御しているのか」


「……怖いことを言わないでくださいよ。初期値の不具合ですよ」


「スコーラオ・ヴァルディスの最上位は変わりませんね」


「――建前では」


「……?」


オッドーは、端末エリアの奥へと足を向けた。


そこは静かで薄暗い。

床だけが、青白く光っていた。


「このデータ、少し見せてもらえるか」近くにいた、技術者に言葉を投げかける。


「え?あ、はい」


「このデータ、変わってないか?」


名前の記された名簿を見つめながら、オッドーは眉をひそめた。


「……仕様の範囲内です。問題ありません」


「……そうか?」


「ただ……」


隣の技術者が、若手の肘を強く突いた。

「それ以上はやめとけ」


「……」


(……増えていた?)


(――あり得ない)


喉が、乾いた。


天井が弓を描くその廊下を歩くオッドーの後ろ姿に、一人の男が呟いた。


「……一応、上に報告しておけ」


「……はい」



(第八十一章・了)


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