表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
PR
80/95

白の証明

カナタは、エルナスの言葉を思い返していた。


(……カナタ。

君を、タシト少佐のもとへ戻す気にはなれない)


カナタの顔に熱がこもる。


「ど、どういう意味なんだろう……」


熱くなった頬を、両手で押さえる。


婚約者である事を知った上での言葉。

そう考えるほど、混乱した。


「いや、そんなはずない」


惑星の王が、 ただのランニング仲間だった自分に――

「……次、合わせる顔ないよ」


深いため息が漏れた。



誰もいない空間で、タシトは手をかざした。


「……消えていない」


座標が――“ずらされている”。


「……まだ継続している」


王宮周辺に展開された、座標撹乱フィールド。


カナタの気配は掴めない。


だが――その干渉は、まだ維持されていた。


タシトは、端末から軍のファイルを開いた。


オルデン・コアにつながる、三人の上層。


視線が止まる。


「……変わっている」


そして――その場から消えた。



「……私を狙ったのは、お前だそうだな?」


灯りの落ちた廊下で、

男の背後に影が差した。


――気配は、ない。


ただ――


背中に、人差し指が触れている。


「タ、タシト・レヴァント!」


「……」


「……な、何のことかわからない」


「嘘が下手だな」


指先が、わずかに熱を帯びた。


「今ここで消すこともできる。

お前の家族ごとな」


「……っ!」


「だが――やめておく」


沈黙。


「ひとつ、仕事をやる」


「……え?」


「オルデン・コアに戻れ」


「な……」


「何もするな。何も変えるな。

ただ“見てこい”」


「……」


「お前が見たものを、そのまま持ってこい。

一つでも隠せば――次はない」



「あなた、大丈夫?」


「……ああ」


男は、料理に手をつけなかった。


「ああ、悪い。仕事を思い出した」


席を立つ。


玄関へ向かう途中、

部活帰りの息子とすれ違った。


「お父さん、どこ行くの?」


「……少しな。すぐ戻る」


「無理しないでね」


その声に、足が止まりかける。


振り返らない。


――脅された。


あの男に。


背中に触れられた感覚が、まだ消えない。


息子と同じくらいの年齢の青年。

だが、中身はまるで違う。


(……普通でよかったはずだ)


特殊能力もない。

ただ真面目に働いてきただけだ。


それでも、ここまで来た。


――オルデン・コア(特殊能力値特定センター)


惑星全体の能力者データを管理する本部。


(何もない。そうだ、何もないはずだ)


タシト・レヴァント。


あれは、人間じゃない。


グロジアを無傷で消し去った男。


「……家族を守る」


小さく、呟く。


扉に手をかける。


「……オルデン・コアは、何も隠していない」


言い聞かせるように。


「全部、見せてやるよ――タシト・レヴァント」



(第八十章・了)


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ