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影の照準

光の当たる者がいる。

歓声を浴びる者がいる。


だが――

照準を決めているのが、

本当に“自分”とは限らない。

「ユウナギは照準〈2〉を選択しろ」


ヴェール・ガンの遠距離仕様。

照準二を選択した瞬間、 銃身が点滅と共に細長く変形した。


百メートル先の標的へ向け、 ユウナギは静かに構える。


「うえっ、かっけー……!」


ソードは、思わず声を漏らした。

そのまま、自分の手にあるヴェール・ガンを見る。


「お前は、まだ〈1〉のままだ」


プラス先生が、即座にたしなめた。


「ちっ、了解」


ソードは舌打ちすると、 ふと、おぼつかない様子のシャドを見た。


シャドは、ヴェール・ガンを見つめたまま固まっている。


「おいおい、シャド。大丈夫かよ。今から緊張して、どうすんだよ?」

ソードが顔を覗き込む。


「集中しろよ、ソード」


バーチの激が飛んだ。


「はいはい、旦那」

ソードは、だるそうにバーチを一瞥する。


次の瞬間。


ヴェール・ガンを構え、 出現した敵影を次々と撃ち落としていった。


「……」


最後の一体を撃ち抜くと、 ソードは舌を出して見せる。


「こいつとのソウルメイトって、今さら何でなんだよ……」


バーチは、恨めしそうにプラス先生を睨んだ。


近くでは、すでにハードニング・グローブを使いこなしているミルルが、

それを授かったばかりの〈Defence〉側のミラともう一人の男子生徒に、手際よく装着の仕方を教えていた。



その日の夕方、

シャドはまた一人、国立公園の広場に立っていた。


黄色に輝くシャインスフィアを見つめながら、シャドは小さく呟いた。


「こんなに綺麗なのに……お前じゃ駄目なんだとよ」


兄、ケティオスのことを思い出す。


レベル九。AttackとDefenceを使いこなす、優しくて強い自慢の兄。

卒業と同時に特殊部隊の上層部から声がかかった、稀にみる珍しい存在。


妬ましかった。

けれど俺は、痛いのが嫌いだ。群れるのも嫌いだ。


ゲームの中でヒーローになれれば、それで満足していた。


……ユウナギ・カーレンに会うまでは。


レベル七。Attack側。同じ条件のはずなのに、あいつは前に出る。

タシト隊長に迷いなく話しかける姿が、やけに眩しい。


何より俺の心を乱したのは――

自分で作ったアバターが、偶然にもユウナギそのものだったことだ。


特に、髪の色、ほくろの位置。


笑えるくらい一致していた。


変えてみた。だが、一度そう思ってしまえば想いが消えない。

何年も共に歩んだ“理想の自分”が、現実の誰かと重なってしまった。


兄にもなれず、ヒーローにもなれない。


だからゲームをやめた。


気づけば、ユウナギの粗ばかり目で追っていた。


友達のふりをしている――俺は。


自分で青にさえ出来ない。


——追い付きたかった。

追い越したかった。


なのに、この不安定な青は――


……タシト隊長に、

引き上げられただけの“青”だった。



(第六十九章・了)


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