不可逆の号令
(……ユウナギは、そういう対象じゃない)
カナタの言葉がこだまする。
ユウナギは、ウサギのキーホルダーを手にしていた。
「……信じていいんだよな」
川原に座るユウナギ。
恒星ソレイユの光が、ゆっくりと陰っていく。
「都合いい時だけ隣にいるやつ?……なんて」
自分で言って、少しだけ笑った。
――カナタから来てくれただけで十分だったのに。
「なぁ、リエルどう思う?」キーホルダーに話かけた。
勿論、返事はない。
◇
「シャインスフィアを“青”へと到達させ、
かつAttackレベル5以上を安定的に解放できた者から、ヴェール・ガンを付与する」
訓練施設の中央で、プラス先生が告げた。
「まじか……!」
ソードは、思わず声を漏らす。
「この時を、どれだけ待ってたか!」
「ヴェール・ガンは、極めて危険な銃だ。
許可のない持ち出し、私的使用は一切認めない」
「先生!質問です」ミルルが、積極的に質問をした。「Defenceには、何かないのですか?」
「お!ミルル良い質問だ!あるとも、レベル5を安定的に保てるDefenceには、ハードニング・グローブを付与する」
「――後に発表する。検査結果を待て」
小さなざわめきが空間をうめた。
◇
いつもの中央特殊訓練施設の隣。
そこには、ヴェール・ガン専用の重厚な施設が併設されていた。
プラス先生は、基準に満たした者を呼び出していた。
集められたのは、
ユウナギ、ミルル、バーチ、ソードの四名。
残る二十六名の生徒たちは、
まだ通常の訓練施設に残されていた。
「特殊部隊一年生で、すでに四名のヴェール・ガン候補が出るとはな」 プラス先生は、隠しきれない誇りを滲ませる。
「それでは、使い方を説明する」
長テーブルの上に、静かに並べられた武器。 それが――ヴェール・ガンだった。
「武器を通すことで、シャインスフィアの出力は本来の二倍以上に引き上げられる」
「すげぇな」バーチは頭をかいた。
プラス先生は一丁を手に取り、構えを見せる。
「照準〈1〉は基本射撃。制御は容易だ」
「〈2〉は遠距離。……そして〈5〉」
プラス先生は、わずかに間を置いた。
「――建造物ごと消し飛ばす」
「ちょっ、それをこの装置に内蔵してて平気なのか? 誤発とか――」ソードは、顔が強ばる。
「心配はいらん」 プラス先生は銃身の一部を指で示した。 「ここにある小さなスロット。特別な石を入れなければ、作動しない」
「特別な石?」
「――王の誕生石だ」
それだけで、この武器が誰の意思のもとにあるのか、十分に理解できた。
◇
一方――
同じ時刻、中央訓練施設では。
タシトが、二十六名の生徒の前に立っていた。
「青く光るシャインスフィアは、そう簡単には作れない、シールドもしかりだ」
その一言だけで、場の空気が引き締まる。
シャドは、ユウナギたちの姿がないことに気づいた。
――選抜されたんだな。
そう思い、胸の奥でひとつ納得する。
「卒業しても、届かない者の方が圧倒的に多い」
淡々と続く声。
「どうだ」
一拍。
「“一瞬でもいい”、青に届きかけたことがある者は――手を上げろ」
生徒たちは息を呑んだ。
ミラが、わずかに迷ってから手を上げる。
……一人。
シャドが、ミラを見て静かに続いた。
さらに――数人。
――それ以上は、上がらなかった。
タシトは、ゆっくりと全員を見渡す。
「……六人か」
「――今なら降りられる。どうする?」
――誰も動かない。
「……いいだろう」
「私が今ここで青にさせてやる」
今、ここで?
そんな短時間で――可能なのか。
シャドは思った。
何かが――確実に壊れる、と。
(第六十四章・了)
六人。
だが――
その全員が、先へ進めるわけではなかった。




