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不可逆の号令

――青は、選ばれた者だけが触れられる領域。


挿絵(By みてみん)


(……ユウナギは、そういう対象じゃない)


カナタの言葉がこだまする。


ユウナギは、ウサギのキーホルダーを手にしていた。

「……信じていいんだよな」


川原に座るユウナギ。

恒星ソレイユの光が、ゆっくりと陰っていく。


「都合いい時だけ隣にいるやつ?……なんて」

自分で言って、少しだけ笑った。


――カナタから来てくれただけで十分だったのに。


「なぁ、リエルどう思う?」キーホルダーに話かけた。

勿論、返事はない。





「シャインスフィアを“青”へと到達させ、

かつAttackレベル5以上を安定的に解放できた者から、ヴェール・ガンを付与する」


訓練施設の中央で、プラス先生が告げた。


「まじか……!」

ソードは、思わず声を漏らす。

「この時を、どれだけ待ってたか!」


「ヴェール・ガンは、極めて危険な銃だ。

許可のない持ち出し、私的使用は一切認めない」


「先生!質問です」ミルルが、積極的に質問をした。「Defenceには、何かないのですか?」


「お!ミルル良い質問だ!あるとも、レベル5を安定的に保てるDefenceには、ハードニング・グローブを付与する」


「――後に発表する。検査結果を待て」


小さなざわめきが空間をうめた。



いつもの中央特殊訓練施設の隣。

そこには、ヴェール・ガン専用の重厚な施設が併設されていた。


プラス先生は、基準に満たした者を呼び出していた。


集められたのは、

ユウナギ、ミルル、バーチ、ソードの四名。


残る二十六名の生徒たちは、

まだ通常の訓練施設に残されていた。


「特殊部隊一年生で、すでに四名のヴェール・ガン候補が出るとはな」 プラス先生は、隠しきれない誇りを滲ませる。


「それでは、使い方を説明する」


長テーブルの上に、静かに並べられた武器。 それが――ヴェール・ガンだった。


「武器を通すことで、シャインスフィアの出力は本来の二倍以上に引き上げられる」


「すげぇな」バーチは頭をかいた。


プラス先生は一丁を手に取り、構えを見せる。


「照準〈1〉は基本射撃。制御は容易だ」


「〈2〉は遠距離。……そして〈5〉」


プラス先生は、わずかに間を置いた。

「――建造物ごと消し飛ばす」


「ちょっ、それをこの装置に内蔵してて平気なのか? 誤発とか――」ソードは、顔が強ばる。


「心配はいらん」 プラス先生は銃身の一部を指で示した。 「ここにある小さなスロット。特別な石を入れなければ、作動しない」


「特別な石?」


「――王の誕生石だ」


それだけで、この武器が誰の意思のもとにあるのか、十分に理解できた。



一方――

同じ時刻、中央訓練施設では。


タシトが、二十六名の生徒の前に立っていた。


「青く光るシャインスフィアは、そう簡単には作れない、シールドもしかりだ」


その一言だけで、場の空気が引き締まる。


シャドは、ユウナギたちの姿がないことに気づいた。

――選抜されたんだな。

そう思い、胸の奥でひとつ納得する。


「卒業しても、届かない者の方が圧倒的に多い」


淡々と続く声。


「どうだ」


一拍。


「“一瞬でもいい”、青に届きかけたことがある者は――手を上げろ」


生徒たちは息を呑んだ。


ミラが、わずかに迷ってから手を上げる。


……一人。


シャドが、ミラを見て静かに続いた。


さらに――数人。


――それ以上は、上がらなかった。


タシトは、ゆっくりと全員を見渡す。


「……六人か」


「――今なら降りられる。どうする?」


――誰も動かない。


「……いいだろう」


「私が今ここで青にさせてやる」


今、ここで?


そんな短時間で――可能なのか。


シャドは思った。


何かが――確実に壊れる、と。



(第六十四章・了)


六人。


だが――

その全員が、先へ進めるわけではなかった。

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