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言えなかった答え

気まずい沈黙が、テーブルに落ちていた。


ミンチカツを頬張りながらソードが話を切り出した。

「カナタちゃん、タシト隊長の弱点教えてよ」


「え?……タシト隊長のですか?」


「だって、一緒に住んでるんでしょ?」


ソードがバーチの様子を見ながら、ミンチカツを飲み込んだ。

怪訝な表情を見せるバーチに、舌を出すと――話を続けた。


「あそこまで、強そうなやつ……いや教官の、弱点がひとつでもあれば、共感出来るでしょ?教官だけに」


「しょうもな」バーチ。


「確かに、俺も素朴に知りたいかも。リングだって軍のトップになってくると非公開だろ?」シャドも同調する。「リングの数も気になるしな……少佐だろ?若干14で」


ユウナギは、ゆっくりとハンバーグを口にしていた。


「リングの数は、わからない。いつも袖で隠れているので。弱点は……」カナタは、タシトの弱点を探した。思い当たらず首をふる。


「へぇ、一緒に住んでる割に謎多いな。生活感とか全然見えないね」ソードがニヤリと微笑む。


「やめろよ、昼間から」バーチがソードのいつもの乗りに釘をさす。そして、ユウナギを見た。

ユウナギは、表情変えずに食べ続けていた。


「私、ユウナギと話したい」カナタは、ユウナギを見つめた。


「……何?」ユウナギが手を止めてフォークを置いた。


「ユウナギ、私、ユウナギのこと何も知らない」


「……どうしたの?急に」


「例えば、家族のこととか。ユウナギが言える範囲で知りたい」


「ん?両親は、普通の研究者だよ。

星の土とか、海とか、そんなの調べてる。今は離れて生活してる。惑星アストレアで」


「そうなの?何で話してくれなかったの?」


「いや。

カナタと家族の話しないから、

なんとなく、俺もしなかった」


「……そっか、気を使ってくれてたの?」


「使ってないよ。そう言うのより

ただ、普通にカナタの横にいる方が自然だったからさ」


「カッコいいユウナギ」ソードは、自然に言葉が漏れた。


ユウナギの顔が赤くなった気がした。


「ユウナギは、カッコいいと思うよ男の俺からしても。なんでカナタちゃんユウナギじゃ駄目だったのかな?あ、何でもない」バーチは、頭を抱えた。


「……ユウナギは、そういう対象じゃない」カナタは、言葉を濁す。


「……」ユウナギの手に力が入る。


シャドは、席を立つ。

「……俺、先行くわ」


「……ごめん。カナタにとって俺って、何?」


一拍置いて――


「都合いい時だけ隣にいるやつ?」


「え?……それは」


「俺らも行こうか」バーチは、半ば強引にソードを引っ張り席を立った。


残されたのは、二人だけだった。


沈黙が、静かに降りてくる。


「あ、でも俺は、カナタを信じてるよ。今でも。

例えカナタがタシト隊長に、手料理作っていても……なんて」


「なぜ……それを」


「あんな、まっ昼間の大階段の下でタシト隊長に駆け寄って話してたら皆注目するんじゃない?近くにいたやつらが、聞きたくもないのに教えてきてさ」


「あ、……私、ユウナギにも手料理作る。ユウナギさえ良ければ」


「はは……気持ちだけ受け取っておくよ」


ユウナギは、席を立った。


――こんなはずじゃない。

カナタは、手をつけていない昼食を、ひとり見つめた。


「ありがとな」


頭に触れたその手は――

すぐに離れて、戻ってこなかった。



(第六十三章・了)


ここまで読んでくださり、ありがとうございます。


少しだけ、関係が動いた回になりました。

踏み出した一歩は、必ずしも優しい形になるとは限らないのかもしれません。


それでも、カナタは前に進もうとしています。

次も見守っていただけたら嬉しいです。

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