リエルの記憶
「先生、実は……何も知らないんです」
――言えなかった。 ここで話せば、何かが壊れる気がした。
「そっか、なら仕方ない。……先生もあまり首を突っ込むなって警告されててな」
「誰にですか?」
「ヨガサに。未来が何となく見えるんだとさ」
「へぇ……占いみたいなものですか。
彼女、来て早々に占い師目指してるって言ってましたよね」
「さぁな。ただヨガサは、実はな、お前と同じレベル7を持ってるんだ。しかもAttack。
だがAttackの能力がどうにも弱い。そこに力が分散されてるのかもな」
「……もしそれが本当なら、俺いっぱい見てもらいたいことあるな」ユウナギは、小さく笑った。
「ま、俺は気にせず進むさ。未来は、自分で決める」
二人は、施設の内部に移動した。
「凄いですね。物々しいというか」
「おもいっきりぶっぱなしてもある程度大丈夫だから自由にやれ」
ユウナギは、深く呼吸をした。
手のひらに、青く光るシャインスフィアを出す。
「ほぉ、綺麗な青だ」プラス先生は、感心していた。
「分散させるイメージを持っても分散は始まりません」ユウナギは、作ったシャインスフィアを的に投げた。金属音が響いた。
「何故、せっかく作ったシャインスフィアを投げたんだ?」プラス先生は言う。
「何故って……」ユウナギは、はっとした。「シャインスフィアって、しまうことできるんですか?」
「出来ない、だが弱めることは出来る」
ユウナギは、もう一度シャインスフィアを出した。
弱める――。
「そうか!弱めようとした時に分散が起こる!」
「正解だ!ユウナギ」
ユウナギは、シャインスフィアを弱めようと集中した。
――だが、光は逆に強くなる。
「……違う」
力を込めるほど、遠ざかる。
なら――逆か。
もう一度。今度は“力を抜く”ように意識する。
――その瞬間。光が揺れた。
「ああ、そうか、集中したからか。意識も分散させないと弱まらないってことですね」
「……呑み込みが早いな」
次の瞬間――
ユウナギの手のひらのシャインスフィアは、二つに分かれていた。
そして、集中し直すと二つのシャインスフィアは強く輝き直した。
拍手の音が、遅れて響いた。
「へぇ、凄いじゃないですか」一人の爽やかな男が近づいてきた。
「あなたは!」プラス先生は、驚いた。
ユウナギもどこかで見覚えがあった。だが思い出せない。
「プラス先生こんにちは。
ルイゼン・エメラルドです」
「こんにちは、どうして、ここにあなたが?」
「隣の館に新しい施設の増設が予定されてるので視察に来ました。放ったエネルギーを吸収出来るという――初の施設なので」
ルイゼンは、ユウナギを見た。
「君が確か、カナタくんの幼なじみの」
「何故それを?」
「私は、王の側近の1人ですから。あなたのことは知っています」
――王の側近。
セリューのように常に王の傍にいるタイプではないのだろう。ユウナギはそう感じた。
「君のシャインスフィアは、色が綺麗だね。……何でだろう」ルイゼンは、首をかしげた。
「こいつはレベル7なんですがね。……まだ伸びる途中なんですよ」プラス先生はユウナギを見て話した。
「……そうですか」
ルイゼンは小さく頷いた。
「ですが、生まれ持ったレベルが変わることに例外はないですね」
「あそこにあるキーホルダーって、君の?」
「あ……はい」カナタから預かってるやつだ。カバンに着けていたのをルイゼンは見逃さなかった。
「久しぶりに見たよ。そのキーホルダー持ってる人」
「え?」
「これって、リエルだよね」
(第五十六章・了)




