表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
PR
55/92

触れてはいけない過去

久しぶりに降り立ったその星は、変わらず緑に満ちていた。


「久しぶりの帰省だな」プラス先生は、ユウナギに話しかけた。

空港のゲートを、腕のリングのIDをかざし通り抜ける。


「ここから、海辺にある特殊訓練施設・別館B棟にいく」


「はい」


二人は、モノレールへ乗り換えた。


車内は観光客で賑わっている。 だが、施設へ近づくにつれ、 乗客は少しずつ減っていった。


海が見えてきた。恒星ソレイユの光が乱反射して、水面が輝く。


コロニーでは見ることのなかった、どこまでも続く青空が広がっていた。


「あそこに見えるのが別館B棟だ」


そこには、巨大で鋼鉄な建物がいくつも立っていた。通常の施設とは明らかに違う、戦闘を前提とした構造だった。


「話って、なんだ?ユウナギ」プラス先生は、荷物をおろす。リュックから水筒を取り出し水分補給をする。


「……先生に技を教えて欲しくて」


「俺に?どんな?」プラス先生は、積極的なユウナギを微笑ましく思った。


「離れたところからシャインスフィアを出す方法です」


空気が、わずかに張り詰めた。


「……ユウナギ、わるい。お前には無理だ」


「え?どうして?」


「あの技は、Defenceも使いこなすことができるレベル8以上のものなんだ」


「……レベル8以上?」


「Defenceの空間把握と融合された技なんだよ。どこで知ったかは知らないが」


タシト隊長は、技を1つ教えてやると、いって見せつけた。

――最初から出来ないと分かっていながら。


ユウナギの拳に力が入った。


俺に――カナタを守れないってことを、

最初から分からせるためだったんだ。


「手のひらのシャインスフィアを分散させる方法なら教えてやれる」プラス先生は、付け加えた。


「あ……」いつかタシト隊長が授業で披露していた技だ。


「お願いします」


「せっかくだし、施設使わせてもらおうか」プラス先生は、ユウナギの肩に手を置いた。「ここは、暑い。お前も水分補給しろ」


ユウナギは、近くにあったリング端末決済の自動販売機から、水を購入するとごくりと飲み干した。


「先生は、俺に用があるんですよね?」


「……ああ。あまり学校で話したくなくてな。カナタ・アレイシアのことだ」


「カナタの?」ユウナギに、わずかな緊張が走った。


「お前たち幼なじみだろ?」


「はい」


「……八年前のこと、少し聞かせてくれないか?」


二人は、施設目前にある公共の長椅子に腰かけた。


「俺とカナタは、五歳から一緒でした。 学校でも、皆が憧れてたんです。 強くて――優しくて」


「今はちょっと想像出来ないな」プラス先生は、顎を触った。


「八歳の時に、爆発事故があったんです。俺も詳しく知りません。病院に駆けつけた時には――

もう、そこにいたのは――“別人”みたいだった」


「記憶喪失と報告されてるやつだな。レベルも11からゼロに」


「はい。その頃からカナタはレベルにやたらと執着を持っていた」


「自分がゼロだからか?」


「わかりません。……期待が、重かったのかもしれません」


「なるほど。では、四年前の事故についてはどうだ?」


「……」

ユウナギは、すぐには答えられなかった。


「どうした?何か、言えないことでもあるのか?」


四年前の“倒壊事故”という名で隠された――

タシト隊長とスコーラオの戦闘による施設破壊。


プラス先生を巻き込んで良いのだろうか。

――消された事実。


「先生……実は」


(第五十五章・了)


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ