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青の差

「シャド、ちょっと顔貸しな」


放課後、教室は帰り支度のざわめきに包まれていた。

その中で、ソードが低い声でシャドに詰め寄った。

周りの生徒が横目で様子をうかがう中、

隣にはバーチがいて、

そのやり取りを遠くからユウナギが見ていた。


「な、何?」

シャドは驚いて、思わず机を押し出した。


「ははは、冗談。最近ユウナギと仲良しだからさ、俺らとも飯食いに、どうよ?」


「びっくりするな、もう!

ユウナギが一緒なら、行くよ」

シャドは、ユウナギを見た。そこにいたはずのユウナギがすでにいなかった。


「え!?ユウナギ?」


「女じゃあるめーし、いちいち連れとも探すなって」ソードが笑う。


シャドは、少し考えたあげく、そのまま近くの喫茶店へ向かった。


木目のテーブルと、少し古いソファ。

訓練を終えた身体を預けるには、ちょうどいい。


彼らはどっしりとソファに身を沈め、

テーブル備え付けの端末で注文を始めた。


「あ、俺、苺パフェっと!」

真っ先にバーチが選ぶ。


「俺はチョコと生クリーム、たっぷりな」

続いてソード。


「ちょっと……すごいな。これが君らの飯?」

シャドは目を丸くした。


「頭使った後は、甘いの欲しくなるよな。

ヤロー同士の時しか、こういうの食えないけどさ」バーチは、テーブルをさっとならし食べる準備を始めた。


「そうなの?じゃ俺も同じのにしよ」

シャドが、端末を操作して注文をしている。


「なぁ、シャドってさ、Attackレベル7だろ?」ソードが興味深く聞く。


「そうだよ」


「すげえな、ユウナギと同じか」バーチは、顎に手をおいて考える。


一瞬、会話が途切れた。


「でさ、タシト隊長なんだけどよ。あのガキの弱点、探さねぇ?……このままだと、いつか俺らやられるぞ」ソードが恨めしく目を細める。


「いきなりだな、お前」バーチが笑った。


「ガキって……」シャドの顔色が引く。


「まぁ、弱点って言うのもいろんな意味でだ。ソードは、変な方向に考えてるけど、俺は強くなるために知りたい」


「ああ、なるほど」


「なぁ、この後なんだけどさ。訓練施設戻って、練習しない?」

バーチが言う。


「まじか!? 勘弁してくれよ!弱み握れば解決なんだよ」

ソードが肩をすくめる。


最初に、パフェが運ばれてきた。

きらびやかな甘い香りが漂った。


「確かにあのタシト隊長の技、痺れたよな。シャインスフィアの分散……」シャドは思い返していた。


「その前に青く光らせないとだろ?」バーチは、腕を組んで小さく息を吐いた。


「お前ら……」


「じゃあ訓練施設に戻ってみる?俺も青く光らせたいし」

シャドは、ちょっと楽しそうだった。



高い天井に並ぶ均一な照明は、

影を許さない――訓練のためだけに作られた光だった。

天井付近には、分厚い特殊強化ガラスの窓がはめ込まれ、

外側から関係者が見学できるようになっていた。


窓から光が漏れる。

シャドが下を覗き込んだ。


強化ガラスの先には、

ユウナギがひとり、立っている。


「……ユウナギ」

シャドは、思わず息を呑む。


「え?ユウナギも訓練してたんだ」バーチから、熱い笑みが浮かんだ。


「熱心だねぇ」ソードは、両手を広げる。


三人は、訓練場にスロープを伝って速足で下り、訓練場へ足を踏み入れた。


「……お前ら」ユウナギは、顔をあげた。


「放課後急にいなくなったと思ってたけど、ここでずっと練習してたんだね」シャドは、ユウナギに話しかけた。


ソードがリュックを卸すと両手にシャインスフィアを一つずつ生み出した。


「俺だって、黙って殺られる性分じゃねえ」


緑に光る。そして、一目散に的をめがけて投げた。


鈍い音が、施設内に響いた。


「来て早々、元気なやろーだな」バーチは、息を深く吸った。


「へぇ……緑か。……すごいな」

シャドも集中し、黄色のスフィアを形作る。

「まだまだだな。今の俺の限界だよ」シャドが頭をかいた。


「……どうした?お前らも練習か?」ユウナギは額の汗を拭った。


「青色に光らせたくてね」シャドは、苦笑い。


ユウナギは答えなかった。

ただ、静かに掌を見つめる。

——何かを確かめるように。


その瞬間だった。


ユウナギの手の中で、

青く、美しく輝くシャインスフィアが形成される。


迷いなく、金属製の看板へと投げ放った。


次の瞬間、看板は原型を失った。


「……すげ」


三人は言葉を失った。

——さっきまでのユウナギとは、別人のようだった。



(第四十三章・了)


「変わった」


その一言だけが、

彼らの中に、確かに残った。

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