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あの日の光

特殊訓練施設の地下――長いスロープの先に、訓練場が広がっている。


夕暮れの校舎とは切り離された、

静かで冷たい空間。


地下からプラス先生が上がってくる。すれ違いざま、立ち止まり、ユウナギへ視線を向けた。


「……あまり、無理するなよ」


短く言う。その声音には、心配よりも――彼の覚悟を知った大人の静かな理解があった。


「強くなりたいんです」


ユウナギは答え、視線を逸らさずに言い切る。

そしてそのまま、地下へと降りていった。


――あの時、タシトはシャインスフィアを容易く操っていた。


戦いのとき、怒りが人を壊す。

だが同時に――怒りは力にもなる。


《一度、その感情を受け止める――そして、利用する》


タシトの赤く輝くシャインスフィアが、

静かに、音もなく、青へと色を変えた光景が脳裏に焼きついている。


――怒り、か。


それは、カナタを奪われた怒り?

喪失の感情?


ユウナギは考える。

だが――想像できない。


カナタを失うなんて。

そんな未来、思い描けるはずがない。


……怒れない。


ユウナギの掌に、赤いシャインスフィアが宿る。


以前よりも力強く、確かな輝き。

だが、その色は変わらない。


怒りを受け止め、握りしめる。

それでも――最後には手放さなければならない。


それでも、特訓は続いた。


目の前に立つ鉄の的。


意識を深く沈める。

――カナタの顔が浮かぶ。

胸が締めつけられる。


涙が、頬を伝った。


赤いシャインスフィアが放たれる。

鋭く、迷いなく――鉄板に直撃。

制御だけは、揺らがない。


翌日も。

その翌日も。

皆が帰ったあと、施設が閉まるぎりぎりまで、ユウナギは一人、地下に立っていた。




ユウナギが八歳だった頃。 彼は、学校でも目を引く存在だった。

可憐で、触れれば壊れてしまいそうな花のように。


ある日の下校時間。

ユウナギは、じょうろで花壇の花に水をやりながら話しかけていた。小さな苗が、光を求めて葉を広げている。


「元気に育つんだよ~」そして、微笑む。


そう言えば、このつぼみ――カナタが植えたやつだな。

自然と笑みが浮かぶ。


ユウナギは、じょうろを片付けるため、

校庭裏にある物置の扉を開けた。

物置は、雑然として散らかっていた。

「みんな、適当に突っ込んでるな……」

整理を始めるユウナギ。


ジャリ……背後で、いくつもの足音が止まった。


振り向くと、数人の生徒がユウナギを囲んでいた。

見たことのない上級生たち。体格差は明らかだった。


「……」


「ちやほやされてんじゃねーぞ。

俺の妹泣かしやがって」


身に覚えのない因縁。


遠くでは、上級生のひとりが、

笑いながら、花壇の花を踏みにじっていた。

何度も、何度も。


「なんてことを……」


次の瞬間――

突然、腹を蹴り上げられた。

一瞬、目の前が真っ暗になった。

そして地面に倒れた。


「……うっ……」


ただそれしか言えない。

囲まれるだけの、どうしようもなく“弱い存在”。


「その顔、ボコボコにしてやるよ!」


上級生のひとりがユウナギの襟を掴んで、拳を振り上げた。


「ダサいことするな!!」


その声が、空気を切り裂いた。


――視線が、ゆっくりと上がる。




(第三十八章・了)


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