暗号
「……確認ですが」
タシトは静かにマクロを見た。
「壊してしまっても、構いませんか?」
「……え?」
マクロは仲間と顔を見合わせた。口角が上がる。
「ああ、壊せるならどうぞ。でも、こいつらかなり強いよ」
(た、隊長……! 今はタジィトくんです!)ミルルの心の声が叫ぶ。
一体のアンドロイドの身体に刻まれたラインが淡く点滅する。
「痛い目くらいは見せてやれ」
「ちょっと!マクロ」ミルルが唇を噛み締めた。
次の瞬間、アンドロイドは回転しながら高速の後ろ回し蹴りを放った。
タシトは半歩踏み込み、その蹴りを紙一重でかわす。近くのバールを拾い上げ振り向いたアンドロイドの胴体の隙間に刺しこんだ。
アンドロイドは、音をたてショートした。
「……あ」
マクロは、一瞬の出来事に言葉を失った。
「特殊能力を使うレベルでもありませんね」
タシトは、足に付いた誇りを払う。
「すげぇ……」二人の仲間から言葉が漏れていた。
(た、隊長……! かっこいいですけど、目立ちすぎです……!)ミルルは、瞳を輝かせた。
「じゃあ四体同時ならどうだ?アストレアの特殊能力見せてもらおうか?」
「ダメだ」
その時、一人の男が言葉を投げた。アンドロイドの製造中の男が戻ってきた。
「もう十分だ。一体いくらすると思ってるんだ? マクロ」
「……し、社長」
「すまなかったね、無理難題押し付けて。しかし特殊能力出すまでもなかった……のは、ちょっとおじさんショックだったな」
(いえ、社長……! 隊長は今、全制御されてるんです。むしろ止めてくれて助かりました……)
ミルルがほっと胸を撫で下ろす。
「これでも町工場で最先端な方なんだ」
落胆し目を伏せる。社長と呼ばれた男は、下町ながらに、小さな会社を立ち上げ戦闘用アンドロイドを開発してる最中だった。
「能力すら使わせられなかった。それが現実だ」
「初動が読めました。反応型の制御にした方が、実戦では強いかもしれません」
タシトが穏やかに話す。
「タジィトくん、全然強いじゃない!」ルディは、驚きで口元が緩む。
「いや、訓練で毎日教官に叩き込まれてますので」
「……タジィト、君がアストレアに帰るまでには、次は簡単に負けないくらいには仕上げとくよ」マクロが罰がわるそうに言った。
「……アストレアに帰るまでですか」タシトは、小さく呟くと、ふと伏し目がちになった。
「わかりました」
――その時だった。奥のモニターのニュース画面にノイズが走った。
【☆◎▲‡$℃□#□□……】
ミルルの目が見開く。
「……ミルルのくそバカやろう。イーストサイド飛行場へ来い?」
「これって……バーチ?」
「……だれがくそバカよ!!」ミルルは小さく呟いた。
「タジィトくん!」ミルルは、思わずタシトを見た。
タシトは、小さく首を横に振る。
――行くな。
そう告げるようだった。
(第百二十九章・了)




