五体のアンドロイド
「いつも、べったりなのね、あなたとミルルって」
ルディがタシトの隣を歩く。少し離れてミルルは、辺りを物色するように歩いていた。
歩くにつれ、人通りは少なくなっていく。
「……僕が頼りないので」頭をかくタシト。
「見た目は、体格もいいし強そうなのにね」
十五歳になっていくらか経つタシトは、もうどこからみても大人だった。
「……」
二人の間に、短い沈黙が落ちた。
遠くから聞こえる街の喧騒だけが、その沈黙を埋めていた。
「……ミルルがぞっこんなのわかるわぁ、なんだかミステリアスよね、君って」
「ねぇ、ルディ。一体どこに連れてくの?」ミルルが後ろから問いかけた。
港には、古びたビルや倉庫が建ち並んでいた。
「いやね、ミルルが戻ったっていうから、ぜひ会いたいってきかないのよ、アイツ」
「まさか、マクロ?」
「そう! よく分かったわね」ルディが笑う。
「おい、そんなこと一言も言ってねーぞ、ルディ」
上から男の影。
ひび割れたビルの2階建ての窓から覗き込んだのは、濃い緑に染めた髪の青年だった。
「……久しぶりだな、ミルル。まだ“あれ”動かしてるのか」
2階へ上がるとマクロが改めて出迎えた。
「ミルルが選んだっていう男はそいつか?」
「やめてよ!マクロ!」ミルルの顔が真っ赤になり、タシトをみた。
タシトは、ただ黙って状況をみていた。
後ろにはマクロの仲間が三人座って見ていた。
「へぇ、何か嫉妬しちまうな」
マクロは、タシトを上から下まで、まじまじと見た。
「ま、まぁまぁだな」
「……俺、マクロ・ガナス。よろしくな」
手を差し出すマクロ。
「タジィト・ラミンです」タシトは、手を握り返した。
「……」
マクロが少し目を見開いた。そして、握っていた手をみた。
「嫉妬とか、なに言ってるの!私と言うものがいながら」ルディは、マクロを蹴った。
「え?二人付き合ってるの?」ミルルは、眉間にシワがよる。
「ま、そういうことね。ミルルが全然帰ってこないから」ルディは、照れたように肩をすぼめた。
「私に遠慮してたわけ?幼なじみのマクロとは、なんもないけど?」ミルルは、タシトにアピールするように話す。
「それ言いすぎだろ」
「改造ロボットは、もう動かしてないわ。それに惑星アストレアは、持ち込み禁止だし」
「なら、俺のをみてよ」
後ろの三人うち二人が大きな布を剥がす。
残り一人は、改造途中のアンドロイドの元へ戻っていった。
布が落ちた瞬間、空気が変わった。
そこには五体のアンドロイドが並んでいた。
無機質な瞳だけが、一斉にこちらを向いていた。
「……あなたも改造してたのね?」
「そう、ミルルに負けたくなくて。戦闘用にな」
「戦闘用?……私は、お掃除ロボットを空飛ぶロボットに変えた程度だったのに?」
「ははは、そうだった!ドローンがあるのにな」
「やめて」ミルルは、にらんだ。
「ねぇ、タジィトくん。ちょっと俺のアンドロイドと手合わせしてくれない?」
「ルディから聞いたんだ。君、攻撃側なんでしょ?」
空気が裂けた。
一瞬にして、ミルルの顔が青ざめる。
「帰るわ!ルディ」ミルルは、呼び出された理由を把握した。
「見損なったわ、マクロ!」
「何で?身体をはった実験大好きだったじゃんか?」
「私ならともかく、タ、タジィトは別なの!」
「へぇ」マクロが、にわかに驚く。「特別なのか?どう特別なんだ?」
「ごめん!ミルル。マクロ謝りなさい!」
「え?俺、何か悪いこと言った??」
「分かんないけど、彼は紳士なのよ。こんな実験に巻き込むのはやめときなさい!」ルディは、ミルルの顔が尋常でないほど青ざめていることに、気付いて擁護した。
「構いませんよ。実験にお付き合いします」
空気を、割ったのはタシトだった。
(第百二十八章・了)




