レノ・リンクシティ
そこはロゴゴタウンへ向かう中継都市。
レノ・リンクシティ。
交通と情報が集まる場所として栄える街だった。
「ミルルの父親が、昔この辺りに滞在していたらしい」
バーチがIDリングに送られてきたプラス先生の情報を確認する。
「……まぁ、手掛かりがここしかないんなら、ミルルに賭けるしかねぇか」ソードが辺りを見回した。
今日も多くの観光客とアンドロイドで賑わっていた。
「ミゲル、ちょっと口の回り汚し過ぎじゃない?」
女は笑いながら、男の口元をハンカチで拭いた。
「違うんだよ!このチョコレートパフェが濃厚過ぎて、旨すぎる」
「はいはい」
美男美女のカップル。
二人は談笑しながら街を歩く。
「ねぇ、サリー。あの犬、お花売ってるよ」
しっぽを振りながら花を売るアンドロイド犬、観光客に大人気だった。
「本当だ。可愛い」
「アンドロイド犬ってしゃべったりするのかな?」
「それ!思った! あの花、買って帰りましょう!」
サリーが笑う。
ミゲルも笑った。
『おい、お前らいつまで遊んでるんだ』
突然、声が響いた。
二人は顔を見合わせ、苦笑した。
◇
「なぁ、バーチ。まじでやんのか?」
「……他にあるのか?」
バーチは手首のリングを見た。
「あの電波塔から市内の公共表示システムへ侵入する」
目の前には、都市開発以前から残る旧式の電波塔がそびえ立っていた。
「今は予備設備だ。監視も最新施設ほど厳しくない」
ソードが電波塔を見上げる。
「……それでも無茶だろ。どこで警報が鳴るか分かったもんじゃねぇ」
「表示するのは暗号だけだ」
「表向きは、☆◎▲‡……ただの記号にしか見えない」
「でも、ミルルなら分かる」
数秒表示できれば十分だった。
ソードが暗号を見て苦笑する。
「悪くないね……」
「……他に方法がない」
バーチは暗号を見つめた。
◇
暗号を流すと、二人は電波塔から駆け下りた。
「いや、待て! 逆に怪しいって、走ったら!」
ソードが後ろから叫ぶ。
二人は人混みへ飛び込んだ。
「違う!先に待ち合わせ場所へ着かれたら終わりだ!」
後ろを振り返る。
「あ!危ない!」
バーチは、ぶつかった。
「いてて……」
ミゲルが身体を起こした。
「あっ……!」
サリーが座り込んだミゲルへ駆け寄る。
「大丈夫?」
ミゲルは服についたチョコレートを見て苦笑する。
「せっかくのパフェが台無しだ」
ミゲルはバーチを見た。
一瞬だけ、視線が止まる。
「……行こう、サリー」
「あ、すみません! 弁償します……」
バーチがIDリングに触れた、その瞬間。
「待て、バーチ!」
ソードが腕を掴んだ。
通行人が一瞬だけ足を止める。
だが、人の流れは何事もなかったように動き始めた。
ごく普通の恋人同士にしか見えない。
ただ、女の美しさだけが、妙に印象に残った。
ソードは去っていく二人を見送った。
「……」
「なんだよ」
「……いや」
二人は再び人混みへ消えていった。
(第百二十七章・了)




