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追跡開始

金色の特殊スーツを身に纏い、専用機から降りるセテオス。


そこは惑星グランディア。 政府特別航空基地。


小雨が降っていた。


軍人たちが一斉に敬礼する。


その先で待っていた外交官は、 透明な輪状フレームに薄い幕を張った雨具を身につけていた。


「お待ちしておりました、第六席」


セテオスは返事もせずに歩きだした。


外交官は慌てて後を追った。


セテオスは、スーツ越しの腹をつまんだ。


「……太ったか」


それだけ呟く。


オルデンコアの最高幹部なのに全く緊張感がない。


なのに誰も逆らえない。



外交官は、一礼をして玄関で待機する。

「ここでお待ちしております」


セテオスと部下が製造者に案内された。

観葉植物が並ぶ広い空間を抜け、無機質な場所にたどり着いた。



中央には二体のアンドロイドが並んでいた。


まだ機動していない。


「へぇ、これが惑星グランディアの非公式の戦闘アンドロイドか……」


「……アストレア軍の主力戦闘機なら十機は買える額です」

セテオスの部下が小さく呟いた。


「見た目は普通の人間ですが。破壊力は、こちらの映像でご確認ください」


製造者がモニターを起動する。


男のアンドロイドが映像の中で動く。時折動きが速すぎて映像に映らない。

特殊金属の直径二メートルもの柱をいとも簡単に真っ二つにへし折っていた。


「……へえ。こっちも兵器の進化が凄いね」


セテオスが笑う。


「はい。油断させるのも戦術のひとつですので」


「うむ、即金で払うよ」


セテオスは端末へIDをかざした。


一瞬の認証音。


〈〈決済は完了いたしました〉〉


セテオスはアンドロイドに近づいた。


「……男型と女型か」


どちらも人間と区別がつかないほど精度が高い。


セテオスはしばらく二体を眺めた。


「……ただ、ちょっとイケメンにし過ぎじゃない?」


「……は?」


「女の子が可愛いのは良いけど」


「性能は申し分ありません」


「そうだね」


セテオスは女型アンドロイドの頬を指先で軽く叩いた。


「タシト少佐がどう反応するのか楽しみだ」


「……え?」



「ひぇーここが惑星グランディアかよ!」ソードは、目をしばたかせた。


グランディア最大級の交通・情報ハブ、

レノ・リンクシティ。


街は、人とアンドロイドでごった返していた。


人間とアンドロイドが普通に会話している。

配達も警備もアンドロイド。

店の半分は無人だった。


交差する駅でチラシを配っていたのは、 観光客向けの案内アンドロイドだった。


「……可愛い」


ソードは思わずチラシを受け取る。


観光客用のアンドロイドによるマッサージ。

【日頃の疲れを取りませんか?】広告の見出し。


「取るよ!お兄さんは!疲れを取る!」ソードはそう言うと隣のバーチを見た。


バーチは、まだどこか上の空だった。


「せっかく来たんだし、ちょっとは気分晴らそうぜ?」ソードはバーチの背中に腕を回す。


「……任務中だろ?」


「真面目か!だからって、こんな広大な惑星でタシト隊長をどうやって探すんだよ。街だっていくつあると思ってるんだ?」


「ミルルとコンタクトを取れる方法を探す」


「通信は繋がらないぜ。俺たちは特殊部隊専用の通信網からも切られている」


ソードは手首のリングを見た。


バーチと共にグランディアの観光客用通信網へ接続してみたが、ミルルたちとは依然として連絡が取れない。


「ほら、必死にならなくても時がくれば、来るもんは来る精神よ。きっとミルルなら何かコンタクトを取ってくるんじゃね?」


「時間は限られているんだぞ!」


「プラス先生は、なんて言ってた?軍より先に見つけろ?だ!」


バーチは、ソードの腕を勢いよく振り払う。


ソードは目をしばたかせた。

「わかりましたよ!だんな。いつからそんな真面目になっちまったんだよ」


「……くそが、最初から真面目だっつーの」


これ以上無駄に論争するのも疲れる。バーチは、静かに毒づいた。



「機密情報によれば、ロゴゴタウンで数秒間の高能力反応が検出されています」


「アストレア基準へ換算すると、レベル八程度です」


短い沈黙。


「……タシトだな」


セテオスは笑った。


(第百二十六章・了)


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