追跡開始
金色の特殊スーツを身に纏い、専用機から降りるセテオス。
そこは惑星グランディア。 政府特別航空基地。
小雨が降っていた。
軍人たちが一斉に敬礼する。
その先で待っていた外交官は、 透明な輪状フレームに薄い幕を張った雨具を身につけていた。
「お待ちしておりました、第六席」
セテオスは返事もせずに歩きだした。
外交官は慌てて後を追った。
セテオスは、スーツ越しの腹をつまんだ。
「……太ったか」
それだけ呟く。
オルデンコアの最高幹部なのに全く緊張感がない。
なのに誰も逆らえない。
◇
外交官は、一礼をして玄関で待機する。
「ここでお待ちしております」
セテオスと部下が製造者に案内された。
観葉植物が並ぶ広い空間を抜け、無機質な場所にたどり着いた。
中央には二体のアンドロイドが並んでいた。
まだ機動していない。
「へぇ、これが惑星グランディアの非公式の戦闘アンドロイドか……」
「……アストレア軍の主力戦闘機なら十機は買える額です」
セテオスの部下が小さく呟いた。
「見た目は普通の人間ですが。破壊力は、こちらの映像でご確認ください」
製造者がモニターを起動する。
男のアンドロイドが映像の中で動く。時折動きが速すぎて映像に映らない。
特殊金属の直径二メートルもの柱をいとも簡単に真っ二つにへし折っていた。
「……へえ。こっちも兵器の進化が凄いね」
セテオスが笑う。
「はい。油断させるのも戦術のひとつですので」
「うむ、即金で払うよ」
セテオスは端末へIDをかざした。
一瞬の認証音。
〈〈決済は完了いたしました〉〉
セテオスはアンドロイドに近づいた。
「……男型と女型か」
どちらも人間と区別がつかないほど精度が高い。
セテオスはしばらく二体を眺めた。
「……ただ、ちょっとイケメンにし過ぎじゃない?」
「……は?」
「女の子が可愛いのは良いけど」
「性能は申し分ありません」
「そうだね」
セテオスは女型アンドロイドの頬を指先で軽く叩いた。
「タシト少佐がどう反応するのか楽しみだ」
「……え?」
◇
「ひぇーここが惑星グランディアかよ!」ソードは、目をしばたかせた。
グランディア最大級の交通・情報ハブ、
レノ・リンクシティ。
街は、人とアンドロイドでごった返していた。
人間とアンドロイドが普通に会話している。
配達も警備もアンドロイド。
店の半分は無人だった。
交差する駅でチラシを配っていたのは、 観光客向けの案内アンドロイドだった。
「……可愛い」
ソードは思わずチラシを受け取る。
観光客用のアンドロイドによるマッサージ。
【日頃の疲れを取りませんか?】広告の見出し。
「取るよ!お兄さんは!疲れを取る!」ソードはそう言うと隣のバーチを見た。
バーチは、まだどこか上の空だった。
「せっかく来たんだし、ちょっとは気分晴らそうぜ?」ソードはバーチの背中に腕を回す。
「……任務中だろ?」
「真面目か!だからって、こんな広大な惑星でタシト隊長をどうやって探すんだよ。街だっていくつあると思ってるんだ?」
「ミルルとコンタクトを取れる方法を探す」
「通信は繋がらないぜ。俺たちは特殊部隊専用の通信網からも切られている」
ソードは手首のリングを見た。
バーチと共にグランディアの観光客用通信網へ接続してみたが、ミルルたちとは依然として連絡が取れない。
「ほら、必死にならなくても時がくれば、来るもんは来る精神よ。きっとミルルなら何かコンタクトを取ってくるんじゃね?」
「時間は限られているんだぞ!」
「プラス先生は、なんて言ってた?軍より先に見つけろ?だ!」
バーチは、ソードの腕を勢いよく振り払う。
ソードは目をしばたかせた。
「わかりましたよ!だんな。いつからそんな真面目になっちまったんだよ」
「……くそが、最初から真面目だっつーの」
これ以上無駄に論争するのも疲れる。バーチは、静かに毒づいた。
◇
「機密情報によれば、ロゴゴタウンで数秒間の高能力反応が検出されています」
「アストレア基準へ換算すると、レベル八程度です」
短い沈黙。
「……タシトだな」
セテオスは笑った。
(第百二十六章・了)




