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追跡

プラス先生は、校庭の自販機でコーヒーを買っていた。


背後に、気配が走る。


振り返る。


「……あなたは」


一瞬だけ、プラス先生の目が見開かれた。



事務室。


バーチとソードが、プラス先生の前に立たされていた。


「お前たちはクラス内でも能力反応が平均的だ。今回の任務には都合がいい」


「……ディスってます?ヴェール・ガン保持者なんですけど」


ソードが軽く笑う。


しかしプラス先生は表情を変えない。


「詳細はここでは言えない。だが――タシト隊長の件だ」


その瞬間。


バーチの声が落ちた。


「……俺には無理っす」


ソードが横目で見る。


バーチの顔には、まだ“あの事件”の影が残っていた。



「むちゃくちゃだよな。国家レベルの大事に、俺たちみたいなヒヨコが任命されるなんてな」


「……」


バーチとソードは、特殊部隊専用の飛行船に乗り込んでいた。


表向きは、惑星間能力者交流プログラム。

実態は、タシト隊長確保のための監視任務だった。


「俺、タシト隊長に殺されたらどうしよ」ソードは、バーチに話しかけた。


「……」


バーチは黙り続けていた。


「何だろう……お前、そんな奴だったか?なってしまったことは仕方ないじゃないか。前を向こうぜってお前の名言だよな?」


「わかってるよ。……気持ちの整理が付かなくて」


「……足だけは引っ張るなよな」


「……どの口が言うか」


そして、バーチは飛行船の窓から外を眺めた。



軍上層部による緊急会議が継続されていた。


「惑星アストレアの強制追跡モードに、反応はなかった」


「……では、成果は?」


リダルダの指が、机を軽く叩く。


「一つ、興味深いデータがございます」


モニターが切り替わる。


「ミルル・セーレン。対象人物の家系情報です」


「へぇ、それはどういうことかしら?」


リダルダが目を細める。

長い爪が光を弾いた。


「彼女の父親が、現在グランディア側に接触している形跡があります」


一瞬、空気が止まる。


「なら、場所は確定だね」


椅子の一つが、わずかに軋む。


「惑星グランディア……なら、僕が行こうか。面白そうだし」


第六席。


セテオス。


オルデンコアの最年少、

その声だけが、妙に軽かった。


彼は現場の人間ではない。 そして、特殊能力者でもなかった。


だが、その発言を否定する者はいなかった。


「報告します!」


慌てて軍人が駆け込んだ。


「第五席のIDリングが惑星アストレアの湖で発見されました」


「……本人は」


「未発見です」


「湖底も捜索済みです」


短い沈黙。


「……七席に続いて五席も!?」


どこかで声が漏れる。


「内部抗争は、やめてよ~」


セテオスが肩をすくめた。


誰も笑わなかった。



プラス先生は、今日もコーヒーを事務室で飲みながら缶を揺らしていた。


「妙だな。まさかあの時、ルイゼンさんではなくて、セリュー殿が直接来られるなんてな……」


ボソリと呟いた。



(第百二十五章・了)


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