干渉
ミルルは、ポワレの母屋で食事の準備を手伝っていた。背後でニュースが流れる。
『近年、惑星グランディアでは、能力者流入に伴う干渉事件が増加』
『政府は、入惑審査基準を更にあげる方針です』
ミルルは、息を呑んだ。
(……もし、グランディア側へ拘束されたら?)
条約違反。
高能力者の無許可入惑。
その先を想像し――背筋が冷えた。
タシトは、ゴールディの手伝いをしていた。
「ごめんね、タジィトくん。この、引き出しをどうしても移動したくて」
奥の部屋で模様替えが行われていた。
「いえ、男手があって良かったです」
「ありがとう。アンドロイドが調子よくなくて。こっち持つから、そっち側持ってくれる?」
「あ、この程度なら俺ひとりで運べます」
タシトは上着を脱いだ。
黒のタイトな長袖シャツ越しでも、鍛えられた腕の線が分かる。
「え?そうなの。重いよ」
そう言うと、引き出しを軽々と隣の部屋へ運んだ。
引き出しを持ち上げた腕へ、筋肉が浮かんだ。
「……へぇ」
ゴールディが、思わず目を丸くする。
「見た目より、ずっと鍛えてるのね」
「学校では毎日基礎訓練がありますから」
「凄い筋肉ね……」
ゴールディが、ちらりと台所を見る。
「ちょっと触ってみてもいい?」
台所。
ミルルの手がわずかに止まる。
「……それは、少し困りますね。僕も年頃の男なんで」タシトは頭をかいてみせた。
「あ!ごめんなさい」
ゴールディは我に返ると、思わず台所へ視線を向けた。
(……青春ねぇ)
二人は、隣の部屋から戻って来た。タシトは食器を出す手伝いをしていた。
食器を並べながら、ポワレがタシトの腕を見る。
「ねぇ、そのリング。本物?」
「ポワレ姉さん、ここにブイヨンを入れたら良いの?」ミルルが、慌てて口を挟む。
ミルルは、ヒヤヒヤしながら、思わずタシトへ視線を向けた。
「……これは、一部本物です」
「今流行りのファッション?」
「君のレベルって……」
「俺は、……ミルルさんほどなくて」
ミルルが目をしばたかせる。
「いや、大したものよ。特殊能力者ってだけでねぇ、ルディ?」
「そうそう、一般人は、アストレアの能力者に憧れてる人が多くてね」
「ま、政府は、あんまり良く思ってないみたいだけど」
ポワレは、そう言うとウィンクした。
◇
「クラフスロー地区六番街にて、十数秒程度の高能力反応を感知しました」
惑星グランディア――中央干渉監理局。
「入惑リストを高能力者順に照合していますが、該当者はいません」
「観測値は、通常能力者の範囲を遥かに超えています」
短い沈黙。
「能力者の無許可入惑も視野に入れ、捜査を開始します」
「惑星間安全条約第七条違反ならば――」
低い声。
「即時拘束。抵抗時は抹殺しろ」
(第百二十四章・了)




