生き残った者達
コロニー・ルミナリア。
中央特殊訓練施設。
プラス先生の前には、七人だけが立っていた。
「……休ませたところで、考え込むだけだ」
静かな声だった。
「今は身体を動かせ。呼吸を止めるな」
誰も返事をしない。
「君達は、生き残った」
短い沈黙。
「なら、次を考えろ」
ミラは、唇を噛んだ。
ユウナギの生死は、まだ分からない。
スコーラオに託すしかなかった。
タシト隊長とミルルも、行方不明。
二十一名の死傷者。
その中には、昨日まで隣にいた顔もある。
もう、いない。
訓練施設の空気は、静まり返っていた。
ミラは、立っているだけで精一杯だった。
ふと、隣のシャドを見る。
その横顔は、いつも以上に蒼白く見えた。
「それでは、反射訓練を行う!」
プラス先生の声が響く。
「武器を手放した瞬間の次動作を叩き込め!」
接近戦用ホログラムが起動した。
「考えるな。感じろ!」
その時だった。
「……っ」
バーチが、何度も顔を拭っている。
「大丈夫か?」
ソードが、小さく声をかけた。
「わかんねぇ」
掠れた声。
「止まんねぇんだ。 目に虫でも入ったみてぇでよぉ」
「……」
ソードは、それ以上何も言わなかった。
◇
ミラは、カナタに会いに来ていた。
救急特殊救命センター。
白い病室には、機械音だけが静かに響いている。
「現在も強い精神負荷状態が続いています」
担当医が、端末を見ながら説明した。
「無理に覚醒させれば、重度の錯乱を引き起こす可能性があります」
ミラの表情が強張る。
「そのため現在は、鎮静処置を継続しています」
モニター越しのカナタは、 静かに眠っていた。
「……回復は、するんですか?」
「断定はできません」
短い沈黙。
「記憶干渉系の投薬で、精神負荷を軽減する方法もあります」
「……え?」
「ただし――」
医師の声が、わずかに低くなる。
「長期使用した場合、 記憶定着や感情形成へ影響が残る可能性があります」
◇
ミラは、スコーラオに連絡を取っていた。
『なんだい?ミラちゃん』
「……あの、お忙しい時にすみません」
『いいんだよ。ミラちゃんの通話なら大歓迎だよ』
スコーラオの声は、いつもに増して明るい。
ミラは、ユウナギの状態を聞くのが怖かった。
だが、その声は―― 不思議と絶望だけには聞こえなかった。
「ユウナギは……」
『そうだねぇ、生命反応は維持し続けているよ。これはね、今まではあり得ないことだったんだよ』
「そうなんですか?」
『ただ、まだ損傷部位からの再生が始まってなくてね』
「……」
生きている。
ユウナギは、四日経った今も生き続けている。
安心なんて、できない。
それでも――
その事実だけが、今のミラには救いだった。
『なんなら、会いに来る?』
「……いいんですか?」
『ずっと稼働してるから、いつでもおいでよ』
その声の向こうでは、システム音が絶え間なく鳴り続けていた。
まるで――
誰かの命を、必死に繋ぎ止めているように。
(第百十七章・了)




