覚醒
――轟音。
床が、爆ぜた。
「わああああっ!!」
見えない。
何に斬られたのか、誰にも見えていない。
次の瞬間。
壁面が、縦に裂けた。
コンクリート片が、宙へ舞う。
「シールドを維持して!!」
再び、ミラの叫びが響く。
青白いシールドが、次々と展開された。
だが――
一枚が、砕け散る。
「――っ!!」
生徒が吹き飛んだ。
さらに。
天井が、赤く裂ける。
――レーザー。
だが、発射源が見えない。
「……っ」
倒れていた娘が、ゆっくりと意識を取り戻す。
その瞬間。
空間を、赤い光が走った。
――レーザー。
娘の顔をかすめ、そのまま身体へ流れる。
「……ぁ?」
ずれた。
「きゃああああっ!!」
目の前の光景に、 女子生徒が悲鳴を上げ倒れ込んだ。
タシトは、訓練場の中央で立ち尽くしていた。
周囲を、無数のレーザーがかすめていく。
「……っ」
ミルルは、特殊メガネ越しに視線を走らせる。
タシトのリング表示。
――“全制御”。
背筋が、凍った。
「た、隊長!!」
赤い閃光が、タシトへ迫る。
ミルルは、反射的に駆け出した。
激突。
「――っ!!」
ミルルは、タシトごと床へ倒れ込んだ。
赤いレーザーが、頭上を通過する。
即座にシールドを展開。
青く美しい光が、 二人を包み込む。
タシトが、ゆっくりと顔を上げた。
「……ミルル。やめろ」
低い声。
その瞬間だった。
ユウナギとカナタを覆っていたシールドが、 粉雪のように崩れ落ちる。
「持ち場へ戻れ! お前のペアは誰だ!?」
「……っ」
ミルルの表情が、凍りつく。
次の瞬間。
ユウナギ側の壁面が、爆ぜた。
ユウナギは、反射的にカナタを突き飛ばした。
床へ倒れ込む。
「……え? ユウナギ」
目が、合った。
一瞬だった。
それなのに――
永遠のように長く感じた。
次の瞬間。
赤が、弾けた。
――時間が止まる。
タシトも。
ミルルも。
誰一人、動かなかった。
ユウナギの下半身が、なかった。
「……ぁ」
カナタの喉から、 声にならない音が漏れる。
息が、できない。
視界が、揺れる。
「あああああああああっ!!!」
その瞬間。
カナタの中で、“何か”が切れた。
青白いオーラが、爆発する。
衝撃波が、 周囲の全てを吹き飛ばした。
壁が、ひび割れる。
天井が、崩壊していく。
空中で、 ステルスドローンが次々に爆散した。
「……まずい」
初めて、 タシトの声に焦りが混じる。
ミルルは、 すでに意識を失っていた。
その時。
崩壊する施設へ、 軍が突入してくる。
「防御に徹しろ!」
タシトが叫ぶ。
ミルルを抱え、 崩れた壁面の陰へ滑り込んだ。
生徒達も、 防御担当へ身を寄せる。
落下物の影へ避難しながら、 ヴェール・ガンで応戦した。
だが――
カナタの力は、 すでに制御を失っていた。
青白い覇気が、 空間ごと暴れ狂う。
カナタの瞳から、 血が流れていた。
軍の身体が、 次々に引き裂かれていく。
「……な、なんだ……あれは……」
兵士は、 言葉を残したまま崩れ落ちた。
軍は、 一方的に崩れ落ちていった。
それでも。
カナタを包む青白い光は、 収まらない。
「……カナタ」
ミラが、 苦しげにシールドを維持する。
「もう……だめ……」
その瞬間。
崩壊した瓦礫の中央で、 何かが光った。
優しい光。
――リエルだった。
(第百十一章・了)




