表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
PR
110/130

全制御

「……タシト・レヴァント」


娘は、目を見開いた。


「……本当に、アンドロイドなのか?」


そこには、 混乱する訓練生達へ冷静に指示を飛ばす青年がいた。


その姿は、とても“人形”には見えなかった。


「……」


アークヘイム軍団が、 一斉にタシトへ銃口を向ける。

生徒達は、頭を伏せたまま目を閉じた。


「……こいつが?」


男は、額に汗を滲ませながら笑った。


タシトが、片手をわずかに動かした。


それだけだった。


次の瞬間。


頭上の空気が、弾けた。


「……何をした?」


ユウナギの声が震える。


ミルルも、何が起きたのか分からなかった。


気づけば――


アークヘイム軍団が、一斉に崩れ落ちていた。



「応戦の可能性がありますので――全解除で向かいます」


ルイゼンは、エルナスの傍らで静かに告げた。


「……施設内部を把握しているのは、ルイゼンだけだ」


エルナスが、セリューへ視線を向ける。


セリューは、無言で頷いた。


短い沈黙。


やがて――

エルナスは、自らのリングへ指を触れた。


淡い光。


一瞬だけ、空中に数字が浮かび上がる。


そして、消えた。


――ルイゼンのリングが、“全解除”される。


空気が、わずかに軋んだ。


次の瞬間。


ルイゼンのヴェール・ガンが、 エルナスのこめかみに当てられていた。


「……っ!」


セリューが反応する。


「動くな」


低い声。


その瞬間、 セリューの動きが止まった。


「今の私は、あなたより上だ」




「……ルイゼン?」


エルナスは、ルイゼンをゆっくりと見る。


「タシト少佐のリングを全制御してください」


ヴェール・ガンのトリガーに、力が入る。


「なぜだ」


エルナスは、目をそらさない。


「あなたが決断しないからです」


「違う」


エルナスは、目を逸らさない。


「……なぜ、お前たちは、そこまでタシトにこだわる」


一瞬。

ルイゼンの瞳から、感情が消える。


「こだわっているのではありません」


冷めた声だった。


「これは、合理的判断です」


「タシト少佐は、 国家単位のリスクとなり始めています」


「……彼一人で、均衡が崩れると?」


「軍でも制御できない。ならば、いずれ矛先はオルデンコアへ向きます」


「……だから、王へ銃を向けるのか」


静寂が落ちた。


ルイゼンのヴェール・ガンは、微動だにしない。


「オルデンコアは、世界の中枢です」


「均衡が崩れる前に、管理する必要があります」


「王から離れろ」


セリューのシールドが、強く発光した。

だが――次の瞬間。


シールドが、砕け散った。


「――っ!?」


即座に、青白い閃光が走った。


セリューの首元から血が静かに滴り落ちる。


「私が、“手を下せない”人間だと思っているのですか?」


ルイゼンの声に、感情はなかった。


気づけば。


セリューの周囲には、 青く鋭い光が幾重にも浮かんでいた。



別館B棟。


安堵する間もなく、 撃たれた生徒達へ仲間が駆け寄っていた。


「しっかりしろ!」


「誰か!救急班を!」


混乱の中。


タシトだけは、静かだった。


特殊救急医療班へ通信を繋いでいる。


その時だった。


――ガラスが砕ける。


正面の窓を突き破り、“何か”が侵入した。

だが、見えない。


「――っ」


タシトが手をかざす。


次の瞬間。


爆発。


空中から火花が散り、 複数のドローンが床へ叩き落とされた。


「……ステルスドローン」

ミルルが、息を呑む。


生徒達の緊張が、再び張り詰める。


その時――

タシトの腕のリングが、発光した。


「――!?」


空気が、変わった。


――“全制御”。


次の瞬間。

誰もいないはずの天井から、無数のレーザーが走る。


床が、深く切り裂かれた。


タシトの表情が、初めて崩れた。



(第百十章・了)


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ