煙の向こう
「……まさか、軍なのか?」
爆音。
プラス先生は、転がるように地面を滑り――建物の影へ飛び込んだ。
次の瞬間。 背後の壁が、吹き飛ぶ。
「……っ」
即座にシールドを展開。
だが――
衝撃と同時に、シールドが砕け散った。
光の粒が、砂のように宙へ消える。
(対特殊能力兵器……!?)
頭上に、影。
反応が、間に合わない。
(――殺られる)
その時だった。
道の向こう側。
ヨガサが、倒れているのが見えた。
「……っ!」
プラス先生の表情が変わる。
次の瞬間――
閃光。
轟音が、街を揺らした。
周囲の窓ガラスが、一斉に砕け散る。
だが。
プラス先生の頭上には、強固なシールドが展開されていた。
「……何が」
視界の先。
黒い戦闘服の集団が、次々と崩れ落ちていく。
最後に立っていたのは――タシトだった。
「大丈夫か?」
タシトは、プラス先生を抱き起こす。
「ヨガサが……!」
「今、救急特殊医療班が来る」
短い返答。
その瞬間。
プラス先生の表情が、強張った。
「……運命が、移動したっていうのか」
拳を、強く握り締める。
「ヨガサに――」
◇
別館B棟。
閃光弾が、訓練場へ投げ込まれた。
白い光が、視界を焼く。
一瞬。
誰も、何が起きたのか理解できなかった。
突入してきたのは、 ゴーグルを装着したアークヘイム軍団。
天井へ向け、無差別に銃撃を始める。
「きゃあああっ!!」
生徒達の悲鳴が、訓練場に響いた。
「落ち着いて! シールドを張るのよ!!」
ミラが、呼吸を整えながら叫ぶ。
カナタは、何もできず後ずさった。
「カナタ!」
ユウナギが、その手を掴む。
「ユウナギ……!」
次の瞬間。
ミルルのシールドが、自身と二人を包み込んだ。
「俺が前を抑える。ミルルから離れるな!」
ヴェール・ガンを構え、 ユウナギはアークヘイム軍団へ狙いを定める。
「やめろ! うちらは敵じゃない!」
娘が叫ぶ。
その直後――
正面入口から、手榴弾が投げ込まれた。
爆発。
訓練場が、大きく揺れる。
「――っ!」
悲鳴。
煙。
さらに混乱した生徒の一人が、 シャイン・スフィアを放った。
閃光が、アークヘイム側へ炸裂する。
「撃つな!!」
娘の声が響く。
だが――
次の瞬間、 アークヘイム軍団が一斉に銃を乱射した。
「きゃあああっ!!」
シールドの外へ弾き出された生徒が、 その場へ倒れ込む。
「前も後ろも塞がれてる……」
ユウナギは、ヴェール・ガンを握る手に力を込めた。
「タシト隊長! どうすりゃいいんだよ!」
ソードの叫びが響く。
次の瞬間だった。
――轟音。
訓練場の壁面が、内側から吹き飛ぶ。
「――っ!?」
誰かが息を呑む。
煙の向こう。
グレーの戦闘スーツが、ゆっくりと姿を現す。
――タシトだった。
床へ転がった薬莢が、 彼の足元で静かに止まる。
「……全員、伏せろ」
低い声。
その瞬間。
空気が、変わった。
(第百九章・了)




