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消される未来

上層部による極秘会議が終わった後も、 室内には重苦しい空気が残っていた。


「“婚約者を人質”に取れば良いものを」


「浅はかだな。知ったその瞬間に、俺たちはタシトに殺られる。そもそも人質に取れるかもわからない」オッドーは言った。


「リダルダ様の話では、 王を説得できないなら――」


「脅迫してでも、タシトのリングを完全封鎖するしかないと……」


「本気で、タシトを殺る気だな」


「……王に圧力をかけるなど。事後報告で済む話ではあるまい」


「それは、もはや謀反ではないのか?」


沈黙。


「セリュー殿がいる。どうやるんだ?」


その場の誰もが、 同じ人物の名を思い浮かべていた。


「……まさか、ルイゼン殿が」


「オルデン・コア側についていたとはな……」



「どうした? ルイゼン」


エルナスが、端末から視線を上げた。


「無事、カナタさんを訓練施設別館B棟へ送迎しました」


「そうか。ありがとう」


王の視線は、再び端末へ戻る。


わずかな沈黙。


「……エルナス様。タシト少佐の件ですが」


ルイゼンは、静かに口を開いた。


「彼は、計り知れない力を持っています。先日の王宮での呼び出しで――私程度の者でも、それを感じました」


「……」


エルナスは、何も答えない。


「差し出がましいことは承知しております。ですが……タシト少佐のリングを、ある程度制御下に置くべきではないかと」


一拍。


「完全制御とまではいかなくとも」



「……そうだな。彼は何を考えているのか掴めないところが多い」


エルナスは、端末を静かに閉じた。


「だからこそ、彼は狙われたと私は思っている。居住区の崩壊にしても――だが彼がもう一度狙われたら命の保証がない」


静寂が落ちる。窓の外で青の蝶が舞う。


「……それでは、カナタが悲しむ」


「……その方が、都合が良い者達もいるのでしょう」

ルイゼンは、わずかに視線を落とした。


「もっとも――エルナス様の前で口にする気はありませんが」



ルイゼンが退出した後、

エルナスは、首をゆっくり横に振った。


「……私にも都合が良いとでも言いたかったのか、ルイゼン」


エルナスは、小さく息を吐く。


「……悪ふざけだ」



(第百二章・了)


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