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よくわかる日本の歴史 ~ただし、原始時代から日本にのみダンジョンがあったものとする~【第三部完】  作者: Mr.ティン
玖章 平安時代 後期 ~摂関政治の頂点と衰退 そして武士の時代へ~

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藤原道長の晩年は、闘病と仏教に傾倒する日々を送ったとされる

日付変わる前に間に合った……!

あと、しばらく正午更新は難しいかもです。

【藤原道長】


摂政となった麻呂。されど、その地位に留まったのは、わずか一年でおじゃった。

麻呂は、息子の頼通を呼び寄せた。


「頼通よ、麻呂は摂政の職を、お前に譲ろうと思うのでおじゃる」

「父上、それは……まだお早いのでは」


頼通が、驚いた顔で麻呂を見た。


「いや、早くはないのでおじゃる。麻呂は、藤原氏の長期支配を考えておる」

「長期支配、でございますか」

「そうでおじゃる。麻呂一代で権勢を極めても、それが続かねば意味がない。早期の世代交代こそが、一族の繁栄を保つ道でおじゃる」


麻呂の言葉に、頼通は深く考え込んだ。


「それに、麻呂は摂政を辞しても、権勢が揺るがぬ自信があるのでおじゃる」

「……承知いたしました、父上」


頼通が、深く頭を下げた。

こうして、麻呂は摂政の職を頼通に譲り、自らは太政大臣に就任したのでおじゃる。


太政大臣。

それは、まるで天に届くかのような、朝廷の最高位でおじゃる。


されど、麻呂は実務を頼通に任せ、自らは「氏長者」として藤原氏全体を統率する道を選んだのでおじゃる。


(実務は若い者に任せ、麻呂は大局を見るのでおじゃる)


麻呂は、そう考えた。

そして、その翌年、麻呂の三女・威子が、帝の中宮となったのでおじゃる。

これで、麻呂の娘三人が、全て帝の妃となった。

世に言う「一家三后」の誕生でおじゃった。


その夜、麻呂は宴を開いた。

月が、まるで完璧な円を描くかのように、美しく輝いておった。

麻呂は、その月を見上げながら、心の内から湧き上がる歌を詠んだのでおじゃる。


「この世をば 我が世とぞ思ふ 望月の 欠けたることも 無しと思へば」


麻呂の声が宴の場に響き、それを聞いた者達の、驚きともつかぬ声が聞こえておじゃる。

まさに、麻呂の権勢は、欠けることのない満月のようでおじゃった。

聞いたものは傲慢と捉えたやもしれぬ。

されど事実として、娘三人が帝の妃となり、孫が帝となり、藤原氏の繁栄は盤石となった。


(麻呂は、遂にここまで来たのでおじゃる)


麻呂は、深い満足感に包まれた。


されど、同時に麻呂も理解はしておった。

満月の後には、欠けていくしかないことを。


それからしばらくして、麻呂の身体に異変が現れ始めたのでおじゃる。

喉が、まるで砂漠のように渇く。

水を飲んでも飲んでも、満たされぬ。

身体が、だるく重い。

陰陽寮の医師が、麻呂を診察し、こう告げた。


「これは、水飲みの病かと思われます」


医師の言葉に、麻呂は眉をひそめた。


「水飲みの病……でおじゃるか」

「はい。裕福な食生活が続くと、このような病になることがあると聞きます」


医師の説明に、麻呂は深く頷いた。


(そうでおじゃるか……麻呂も、身体が衰え始めたのでおじゃるな)


麻呂は、自らの老いを実感した。

そして、麻呂は決断したのでおじゃる。

出家の道を選ぶことを。


政治的影響力は保持しつつも、仏門に入ることで、来世の安寧を願うのでおじゃる。


麻呂は、剃髪し、法衣を纏った。

鏡に映る自分の姿は、まるで別人のようでおじゃった。


(これも、麻呂の人生の一つの節目でおじゃる)


麻呂は、そう思った。


出家後、麻呂は法成寺の建立に力を注いだ。


法成寺は、まるで極楽浄土を地上に再現したかのような、壮麗な寺院でおじゃった。

金堂、阿弥陀堂、薬師堂、五大堂、そして美しい庭園。


その全てが、麻呂の仏教への深い帰依と、権勢の象徴を示しておった。


「これは、見事な寺でおじゃるな」


麻呂は、完成した法成寺を見て、深い感慨に浸った。

法成寺は、世に『御堂殿』と呼ばれるようになり、麻呂もまた『御堂関白』と呼ばれるようになったのでおじゃる。

されど、麻呂の身体は、次第に衰えていった。


水飲みの病の症状は、日に日に重くなっていったのでおじゃる。

身体が重く、まるで鉛を纏っているかのようでおじゃった。


そんな時でおじゃる。

魔穴博士である安倍晴明が、麻呂を訪ねてきたのは。


「道長様、お身体の具合はいかがですか」

「晴明か……正直、芳しくないのでおじゃる」


麻呂は、正直に答えた。


「実は、一つ提案があります」

「提案、でおじゃるか」

「はい。魔穴産の薬を試されてはいかがでしょうか。また、魔穴の浅い階層に入ることで、身体が活性化することもあります」


晴明の言葉に、麻呂は目を見開いた。


「魔穴に……入るのでおじゃるか」

「はい。もちろん、危険のない浅い階層です。そこで軽い運動をされると、症状が緩和されるかもしれません。そして今ならば、まだ間に合いましょう」


晴明の提案に、麻呂は少し考えてから頷いた。


「分かったでおじゃる。試してみるのでおじゃる」


こうして、麻呂は魔穴に入ることになったのでおじゃる。



魔穴の入口は、まるで異界への扉のようでおじゃった。

晴明の案内で、麻呂は浅い階層に足を踏み入れたそこは、まさしく異境でおじゃった。


「ここなら、危険は少ないです」

「ふむ……確かに、空気が違うのでおじゃるな」


麻呂は、魔穴の空気を吸った。

それは、まるで生命力が満ちているかのような、不思議な感覚でおじゃった。


「では、軽く弓の稽古でもされてはいかがですか。魔穴には、小さな魔物もおりますので」


晴明の言葉に、麻呂は弓を手に取った。

久しぶりに握る弓は、まるで昔の友人のように、手に馴染んだのでおじゃる。


そして、魔穴の奥から、小さな魔物が現れた。

鼠にも似たその魔物は、確かに今の麻呂でも討てそうなものでおじゃった。

麻呂は、弓を引き、かつてのやり方を再現したのでおじゃる。


(『この矢当たれ』)


麻呂が念じると、矢は、まるで導かれるかのように魔物に命中した。


「おお……まだ、できるのでおじゃるな」

「お見事でございます」


麻呂は、久しぶりに武人としての自分を取り戻したような気がしたのでおじゃる。


それから、麻呂は定期的に魔穴に通うようになった。

弓を引き、魔物を倒す。

その繰り返しの中で、麻呂の身体は、まるで春の雪が解けるかのように、徐々に軽くなっていった。


水飲みの病の症状も、魔穴産の薬草と、魔穴での運動により、幾分緩和されたのでおじゃる。


(魔穴とは、恐ろしい場所であると同時に、人を救う場所でもあるのでおじゃるな)


麻呂は、魔穴の存在意義を、実感として感じ取り、ある決断をしたのでおじゃる。

そして麻呂は、頼通を呼び寄せた。


「頼通よ、麻呂には分かったことがあるのでおじゃる」

「何でございますか、父上」

「魔穴は、ただ危険なだけの場所ではない。正しく管理すれば、人々を救う力にもなるのでおじゃる」


麻呂の言葉に、頼通は真剣な顔で聞いた。


「魔穴寮を重用せよ。晴明殿の知恵を借りて、魔穴を国の力とするのでおじゃる」

「承知いたしました、父上」


頼通が、深く頭を下げた。

こうして、麻呂の知恵は、次の世代へと受け継がれていったのでおじゃる。


されど、寄る年波には、誰も勝てぬ。

麻呂の身体は、徐々に衰えていった。

魔穴での運動も、次第に困難になっていった。


そして、ある年の冬。

都に、流行り病が蔓延したのでおじゃる。

麻呂もその病に倒れ、自覚したのでおじゃる。

来るべき時が、来たのだと。

床に臥せる麻呂のもとに、頼通が駆けつけた。


「父上!」

「頼通か……心配するでない」


麻呂はなんとか笑ったものの、それは弱々しく見えたようでおじゃるな。

頼通が何かをこらえておったが、最後にいくつか託さねばならぬ。


「麻呂は、やるべきことは全てやったのでおじゃる」

「父上……」

「藤原氏は、お前が守るのでおじゃる。麻呂が築いた基盤を、しっかりと守り、さらに発展させよ」

「はい、必ずや」


頼通の目から、涙が流れた。


「それに……麻呂には、誇れるものがあるのでおじゃる」


麻呂は、かすかに笑った。


「香子殿の源氏物語、諾子殿の枕草子……あの素晴らしい文化を支えられたこと。それが、麻呂の誉でおじゃる」


麻呂の声は、次第に弱くなっていった。


「政治だけではない……文化も、人の心も、全て大切にせよ……」

「父上……父上!」


頼通の叫び声が、部屋に響いた。

されど、麻呂の瞳は、既に閉じられておった。

麻呂は、こうして、まるで満月が沈むかのように、静かに世を去ったのでおじゃった。


されど、麻呂の築いた基盤は、揺るがなかった。


三代の帝の外祖父として、藤原氏の権勢は続いていった。

魔穴寮は、国を守る重要な機関として発展していった。

法成寺は、人々の信仰の拠り所となった。


そして、何より、麻呂が支えた文化は、千年の時を越えて、今も人々の心を打ち続けておる。


源氏物語は、世界中で読まれ。

枕草子は、日本文学の至宝として輝き続ける。


藤原道長。

その名は、権力者としてだけでなく、文化の庇護者としても、長く歴史に刻まれることとなったのでおじゃった。


月は、今も変わらず、空に輝いておる。

まるで、麻呂が詠んだ歌を、今も歌い続けているかのように。


「この世をば 我が世とぞ思ふ 望月の 欠けたることも 無しと思へば」


その歌は、千年の時を越えて、今も人々の心に響き続けておるのでおじゃる。

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