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よくわかる日本の歴史 ~ただし、原始時代から日本にのみダンジョンがあったものとする~【第三部完】  作者: Mr.ティン
玖章 平安時代 後期 ~摂関政治の頂点と衰退 そして武士の時代へ~

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藤原道長の娘・彰子の第一子である後一条天皇が即位し、摂関政治は最盛期を迎える

【藤原道長】


彰子が帝の中宮に冊立された後も、麻呂の政治的動きは、まるで川の流れが止まらぬように、活発化していった。


されど、麻呂の前には、まだ一つの問題がおじゃった。

それは兄・道隆殿の娘である定子の存在でおじゃる。


定子は、帝の中宮として、既に宮中で確固たる地位を築いておった。

政治的に見れば、定子の存在は、彰子の立場にとって都合の悪いものでおじゃった。


なれど、同時に定子は、麻呂の姪でもあるのでおじゃる。

兄の娘として、麻呂は定子を気にかけておった。


(定子も、よう頑張っておる)


麻呂は、内心でそう呟いた。


(父・道隆殿を失った中で、宮中での地位を守り続けておる)


定子の強さを、麻呂は認めておった。


そして、定子に仕える女房たちも、まるで星々が輝くように、優れた者たちが集まっておった。

その中でも、諾子、世に言う清少納言は、特に才気煥発な女性でおじゃった。


諾子が執筆した『枕草子』を、麻呂は密かに読んでおった。


(これは……素晴らしい)


麻呂は、その作品に心を奪われた。


『春はあけぼの』から始まる、その鮮やかな描写。

四季折々の美しさを、まるで絵巻物を見るかのように描き出す筆致。

宮中の出来事を、機知に富んだ言葉で綴る才能。


(諾子殿の感性は、まさに天賦のものでおじゃる)


麻呂は、夜更けまで、その草子を読み耽った。


政治的には、定子の勢力を支えるこの作品は、彰子にとって都合の悪いものかもしれぬ。

されど、文化として、作品として見れば、これほど素晴らしいものはない。


(この作品は、後世に残るべきものでおじゃる)


麻呂は、そう確信した。


そして、麻呂は密かに、定子とその女房たちの活動を援助し始めた。

表立ってはできぬが、物資の提供や、宮中での地位の保全など、できる限りの支援を行ったのでおじゃる。


(……政治と文化は、別のものでおじゃろう)


麻呂は、自分の政を担う部分──定子たちを排除すべきと言う心の声に、言い聞かせたのでおじゃる。


(優れた文化は、誰が作ろうとも、守るべきでおじゃる)


今の宮中では、女房達が様々に書を嗜んでおじゃる。

枕草子を否定するなら、それらの動きは勢いを失ってしまうでおじゃろう。

それは、彰子の元に集う者達の動きを縛る者でもあるのでおじゃる。

故に麻呂は、枕草子を広まるままにしたのでおじゃった。



一方で、麻呂は大陸の情勢にも目を向けておった。


大陸では、既に宋が建国され、安定期に入りつつあった。

宋と日乃本は、この時期正式な国交は行っておらぬが、個人での貿易、私貿易は禁じられておらなんだ。


麻呂も、私貿易を活発に行っておった。

大宰府を起点として、宋との交流を深め、富を得ておった。


その富は、麻呂の権力の基盤となった。

宋からもたらされる書物や品々は、まるで宝物のように、宮中を彩った。


されど、半島の情勢は、まるで嵐の海のように不安定でおじゃった。


半島とその根元の東北部では、契丹が高麗を攻め続けておる。

高麗は、南方を日乃本と同盟を結んだ後百済、北方を契丹に挟まれ、まるで鋏に挟まれた獣のように、危うい状況でおじゃった。


(このままでは、いずれ日乃本にも影響が及ぶやもしれぬ)


麻呂は、危機感を抱いた。


そこで、麻呂はある決断を下したのでおじゃる。


麻呂は、陰陽寮の長である安倍晴明を呼び寄せた。


「晴明殿、麻呂には考えがあるのでおじゃる」

「はい、道長様。何でしょうか」


晴明が、まるで水のように淡々と答えた。


「陰陽寮を母体とした、新たな公的部署を設立したいのでおじゃる」

「新たな部署、でございますか」

「そうでおじゃる。全国の魔穴を管理運用する機関を作りたいのでおじゃる」


麻呂の言葉に、晴明は興味深そうに目を細めた。


「それは、面白い提案ですね」

「陰陽師たちと、源氏や平氏を始めとした武士たち、更には源氏に降った酒呑童子たちのような、力ある在野の者たちを中心とする組織でおじゃる」

「なるほど。魔穴の管理と、同時に防衛力の強化ですね」

「その通りでおじゃる。半島への防衛策であり、また各地の地方豪族への力の誇示も視野に入れておるのでおじゃる」


麻呂の言葉に、晴明は深く頷いた。


「承知いたしました。私も協力いたします」

「この部署は、『魔穴寮』と名付けるのでおじゃる。そして、初代の長として、晴明殿に『魔穴博士』の位を授けたいのでおじゃる」

「光栄です、道長様」


晴明が、静かに頭を下げた。


こうして、新たな組織が設立されたのでおじゃる。

魔穴寮は、今まであった防人制度とも組み合わされながら、国を守る新たな力となっていった。


時は流れ、宮中では新たな文化の華が咲き誇ろうとしておった。


彰子に仕える女房の一人、香子、世に言う紫式部が、新たな物語を執筆し始めたのでおじゃる。


その物語の名は、『源氏物語』。


麻呂は、その執筆を密かに後押しした。

香子に必要な書物を提供し、執筆に集中できる環境を整えたのでおじゃる。


そして、麻呂は、その物語が完成していく過程を、まるで飢えた獣が獲物を求めるかのように、むさぼり読んだ。


(これは……何という物語でおじゃるか!)


麻呂は、感嘆の声を上げた。


光源氏という、まるで理想を体現したかのような主人公。

その恋愛遍歴を、繊細な心理描写で描き出す筆致。

女性たちの心の機微を、まるで見てきたかのように書き綴る才能。


(香子殿は、まさに天才でおじゃる!)


麻呂は、夜を徹して物語を読み続けた。


若紫の巻では、幼い紫の上と光源氏の出会いに心を打たれ。

葵の巻では、葵の上の死に涙し。

須磨の巻では、光源氏の流離に胸を痛めた。


(この物語は、人の心の全てを描いておる)


麻呂は、まるで物語の世界に迷い込んだかのように、現実を忘れて読み耽った。


政務の合間にも、麻呂は物語を読んだ。

評議の前にも、物語を読んだ。

寝る前にも、物語を読んだ。


周囲の者たちは、麻呂の様子を不思議そうに見ておったが、麻呂は気にしなかった。


(これほどの作品に出会えるとは、麻呂は幸せ者でおじゃる)


麻呂は、心からそう思った。


そして、遂に物語が完成した時、麻呂は確信したのでおじゃる。


(この物語は、千年後も読み継がれるでおじゃろう)


麻呂は、深く頷いた。


(そして、麻呂がこの物語を支えたことは、麻呂の誉でおじゃる)


麻呂は、香子に惜しみない賛辞を送った。

政治の世界でも、麻呂の権力は着実に固まっていった。

麻呂の娘・妍子が、帝に入内した。

そして、彰子が皇子を出産したのでおじゃる。


その皇子こそ、後に帝となる御方でおじゃった。


麻呂は、皇子を抱き上げた。


「この子が、いずれ帝となるのでおじゃるな」


麻呂の声には、深い感慨があった。

されど、まだ道のりは終わっておらなんだ。


やがて、帝が譲位を決意された。

そして新たな帝が即位されたのでおじゃる。

されど、新たな帝にとって、麻呂は外戚ではない。

これは政治的に微妙な状況を生み出したのでおじゃる。

朝廷には、まるで冷たい風が吹くかのように、緊張が走っておじゃった。


故にこそ、麻呂は慎重に行動した。

新たな帝との関係を保ちつつ、自らの権力基盤を守ることに腐心したのでおじゃる。


されど、運命は再び、麻呂に味方でおじゃった。

新たな帝が、目の病にかかられたのでおじゃる。

その病は、次第に重くなり、帝としての差配が困難になっていった。

麻呂は、帝の病を心配しつつも、内心では次の展開を見据えておった。


(このままでは、帝は譲位されるやもしれぬ)


麻呂の予想は、的中した。


帝は、遂に譲位を余儀なくされた。

そして、次の帝として、彰子の第一子が即位されたのでおじゃる。

麻呂は、その即位の儀を、まるで夢を見るかのような心地で見守った。


(遂に、この時が来たのでおじゃる)


麻呂の胸は、高鳴った。

新たな帝の外祖父として、麻呂は摂政に任じられたのでおじゃる。

摂政。

それは、まるで頂に立つかのような、最高の権力でおじゃる。


麻呂は、摂政として、朝廷を統べることとなった。

これが、摂関政治の最盛期でおじゃった。


麻呂は、内裏の高楼から、都を見下ろした。


(麻呂は、遂にここまで来たのでおじゃる)


麻呂の目には、都の全てが見えた。


怪異や魔人が潜む、この平安の都。

されど、麻呂の治世の下で、都は安定を保っておる。


源氏や平氏の武士たちが、怪異を討ち払う。

陰陽師たちが、魔人の策を打ち砕く。

魔穴寮が、全国の魔穴を管理し、国を守る。


そして、麻呂が、政治の頂点から、全てを統べる。


(これが、麻呂の成した世でおじゃる)


麻呂は、深く息を吐いた。


兄たちが早世し、甥の伊周と争い、定子を気にかけ、文化を支え、国際情勢を見据え、新たな組織を作り、娘を帝に嫁がせ、そして遂に摂政となった。


長い、長い道のりでおじゃった。

されど、麻呂の戦いは、まだ終わらぬ。

摂政として、麻呂はこれからも、平安の都を守り続けなければならぬ。

怪異や魔人が潜む、この世を。

人々が安心して暮らせる、この世を。


麻呂は、その責任の重さを、改めて感じた。

されど、同時に、麻呂は誇りも感じておった。


(麻呂は、この世を守る者でおじゃる)


麻呂は、拳を握りしめた。


(そして、この世に文化の華を咲かせる者でもおじゃる)


麻呂は、香子の『源氏物語』と、諾子の『枕草子』を思い出した。

政治と文化。

武力と芸術。

権力と美。

その全てを、麻呂は守り、育ててきたのでおじゃる。


(これが、麻呂の道でおじゃった)


麻呂は、そう確信したのでおじゃる。

空には、まるで未来を祝福するかのように、美しい月が浮かんでおった。

麻呂は、その月を見上げながら、心の中で誓ったのでおじゃる。


(麻呂は、この世を守り続けるのでおじゃる)


麻呂の、摂政・藤原道長の治世は、今、最盛期を迎えようとしておったのでおじゃる。

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