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よくわかる日本の歴史 ~ただし、原始時代から日本にのみダンジョンがあったものとする~【第三部完】  作者: Mr.ティン
間章5 ~大平安魔人伝~

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大江山異聞録 第一幕

今回はちょっと短め。

何とか帰省中の分の書き溜め確保できました。

【とある土豪】


兼房は、朝廷から派遣された軍勢と共に、大江山の麓に到着していた。

その数は、優に千を超える。

朝廷の精鋭たちが、兼房の訴えに応じて集められたのだ。


(これで、あの忌まわしい鬼どもを滅ぼせる……)


兼房は、内心で勝ち誇っていた。

朝廷の将は、厳めしい顔をした武人だった。


「兼房殿、本当にこの山に、鬼どもがおるのだな?」


将が、兼房に確認した。


「はい。酒呑童子なる凶悪な鬼が、この大江山に巣食っております」


兼房は、力を込めて答えた。


「その鬼は、人里を襲い、女子供をさらい、喰らうという悪逆非道な行いを繰り返しております」


兼房の言葉には、誇張が含まれていた。

いや、誇張どころか、全くの虚偽も混ぜ込んでいた。

酒呑童子たちは、確かに酒や食料を奪っていた。

しかし、人を殺したという話は、兼房は聞いていない。


だが、兼房にとっては、そんなことはどうでもよかった。

あの鬼どもを滅ぼせればいい。

それだけだった。


「分かった。では、明日、大江山に攻め入る」


将が、決断を下した。


「お任せください。私が、道案内をいたします」


兼房は、深々と頭を下げた。


(見ておれ、酒呑童子。貴様ら鬼どもを、朝廷の力で滅ぼしてやる)


兼房は、復讐への期待に胸を膨らませていた。



【酒呑童子】


ある日の事や。

配下の一人が、息を切らしてかけこんで来たんや。

物見に出していたその配下は、切羽詰まった声でこういったんや。


「酒呑様、兵がぎょうさん、山の麓に集まっとります!」

「兵? また土豪かいな?」


思い出すのは、ついこの間やって来た連中や。

またわいらを攻めるつもりやろうか?

せやけど、配下は必死に首を振ったんや。


「あれは、土豪やない。鎧がよう整っていたんや。多分、朝廷や」

「朝廷……やと?」


流石にわいも顔をしかめてしもうた。

朝廷の恐ろしさは、わいでも知っとる。

昔会った武者は、わいでも勝てるかわからん強さやった。


「……で、数は?」

「千を超えております。しかも、皆、鍛えられた兵のようで……」


配下の言葉に、わいは更に顔をしかめた。


「千か……厄介やな」


わいらの配下は、せいぜい百もおらん。

数で圧倒的に不利や。

しかも、朝廷の兵は、魔穴などで鍛えられとる。

わいらの配下でも、容易には倒せん相手やろう。


「茨木、どないしたらええと思う?」


わいは、片腕である茨木に尋ねた。

茨木は、術者やった経験があるから、知恵が回る。

こういう時は、茨木の意見を聞くのが一番や。


「そうですなぁ……」


茨木は、少し考え込んだ。


「地の利はありますが、数が多すぎます。正面から戦えば、配下に多くの犠牲が出るでしょう」

「やっぱりそうか。何か、ええ策はないか?」


茨木の言葉に、わいは頷いた。

更にわいが尋ねたが、茨木は首を横に振る。


「すぐには思いつきませんわ。少し時間をいただければ……」


茨木が困った顔をしとる。

何時もなら簡単に何やら思いつく茨木が、や。

それほど、状況は厳しいんやろう。


「ほう、困っとるようやな」


その時や。

突然、空から声がかかったのは。


「誰や!?」


わいらが、一斉に空を見上げると、そこには、人を乗せられるほど巨大な鷹がおった。

さらにその鷹の背には、壮年の法師が座っとる。


「何や、お前は……」


わいは、警戒しながら尋ねると、法師が、飄々と答えた。


「儂か? 儂は、道満。道満法師とも呼ばれておるのう」

「道満法師……!」


茨木が、驚愕の声を上げた。

茨木の反応を見て、わいは悟った。

この法師は、只者やないんやと。


「本物の、道満法師……!」

「茨木、知っとるんか?」


わいが尋ねると、茨木は緊張した顔で頷いた。


「はい。この方は、本物の道満法師です。うちの師匠を打ち負かした、あの術者です」


茨木の言葉に、わいは道満法師を改めて見た。

この法師が、茨木の師匠を倒した相手か。


「ほう、お前が茨木童子か。道元の弟子やったな」


道満法師が、茨木を見て言った。


「お前の師匠は、矜持のない奴やったが、お前はどうや?」

「うちは、師匠とは違います。今は、酒呑様に仕えております」


道満法師の問いに、茨木は少し考えてから答える。

茨木の言葉に、道満法師は満足そうに頷いたんや。


「そうか。ならば、話は早い」


道満法師が、わいを見た。


「酒呑童子、お前らに助力しに来た」

「助力? なんでや?」


道満法師の言葉に、わいは首をかしげてもうた。

わいらに道満法師が力を貸す理由がわからん。

思わずわいが尋ねると、道満法師は笑った。


「儂の名を騙った偽物が、お前らを操ろうとしたそうやな」


道満法師の言葉に、わいは思い出した。

あの、偽物の道満法師のことか。


「ああ。あいつは、わいらを倒してしまったけどな」

「そうや。儂の名を騙った矜持のない所業や。そんな奴を討ってくれたお前らに、儂は借りがある」


わいが答えると、道満法師は満足そうに頷いた。

道満法師の言葉に、わいは首を傾げた。


「借り?」

「そうや。儂の名を汚した奴を討ってくれたんやからな。その借りを返さんことには、気が済まん」


道満法師は、真剣な顔で言った。


「このまま、お前らが朝廷に討たれたんでは、儂はその借りを返せん。やから、助力に来たんや」


道満法師の説明に、わいは少し考えた。

この法師は、妙な理屈で動いとるけど、悪い奴やないみたいや。


「茨木、どう思う?」


わいが意見を求めると、茨木は少し複雑な顔をしとった。


「……正直、うちは道満法師とは因縁があります。師匠を打ち負かされましたから」


そう言う茨木には、いろいろ思う所があるんやろう。

せやけど、わいを見た茨木はこういったんや。


「ですが、このままでは、酒呑様や配下の皆に、多大な被害が出ます。道満法師の力を借りるべきだと、うちは思います」


茨木の言葉に、わいは頷く。

茨木が、過去の因縁を捨てて、わいらのために意見を言うてくれた。

それが、嬉しかったんや。


「分かった。道満法師、お前の力を借りるで」


わいが答えると、道満法師は満足そうに笑った。


「よし、任せとけ。儂の術で、朝廷の軍をあっと言わせたる」


道満法師が、自信満々に言った。


「ところで、酒呑童子。お前、面白い奴やな」


道満法師が、わいを見て言った。


「何がや?」

「鬼のくせに、自由に生きようとしとる。そういう奴は、嫌いやない」


わいが尋ねると、道満法師は笑う。

道満法師の言葉に、わいも笑った。


「そうか。お前も、面白い人間やな」


わいと道満法師は、互いに笑い合った。

こうして、わいらは道満法師の力を借りることになったんや。


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