表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
よくわかる日本の歴史 ~ただし、原始時代から日本にのみダンジョンがあったものとする~【第三部完】  作者: Mr.ティン
間章5 ~大平安魔人伝~

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

179/186

源頼光には、多くの怪異を退治した伝承が残っている

遅刻しましたが、何とか本日中に投下です。

【源頼光】


拙者は、突如として原因不明の病に倒れた。

燃えるような高熱が容赦なく続き、身体が思うように動かぬのだ。

頭が割れるように激しく痛み、視界が揺れて定まらぬ。


(これは……一体何だ……)


拙者は、病床で苦しみながら、己の異常を探ろうとしていた。

だが、原因が全く分からない。

医師も、薬師も、ただ首を傾げるばかりで、有効な手立てを示せずにいる。


「頼光様、ご気分はいかがですか?」


忠実なる郎党の一人が、心配げな面持ちで拙者に尋ねてきた。


「まだ……一向に良くならぬ……」


拙者は、かろうじて掠れた声で答えた。

身体が、まるで鉛のように重い。


「これは困りましたな……薬師も、原因が分からぬと申しております」


郎党は、深く心配そうな顔をしている。

拙者の病が、ただならぬものであることを、皆が感じ取っていた。


そこで、拙者の父、満仲が断固とした決断を下した。


「陰陽師を呼べ。これは、普通の病ではあるまい」


父の命により、都の名だたる陰陽師たちが、源氏の屋敷に次々と招かれた。

その中には、陰陽寮の長である加茂忠行とその弟子の姿もあった。


「これは……」


忠行殿は、拙者の様子を仔細に診て、鋭い眼差しで何かに気づいたようだった。


「これは病ではありませぬな。おそらくは、呪詛かと」


忠行殿の断言に、屋敷に集まった者たちがざわめいた。

父が、厳しい顔で尋ねた。


「呪詛、と申されたか?」

「左様。何者かが、頼光殿に強力な呪詛をかけている」


忠行殿は、真剣な顔で言った。


「晴明よ、お前はどう見る?」


忠行殿が、傍らに控える弟子に尋ねると、晴明なる弟子が落ち着いた声で答える。


「はい。私も同じく、呪詛だと判断します。それも、かなり強力な呪詛です。何か、強大な怪異の仕業でしょう」


その冷静な分析に、拙者は歯ぎしりした。


(何者だ……拙者に呪詛をかける者は……)


清和源氏の嫡子として、朝廷のために多くの怪異を討ってきた拙者だ。

恨みを買う相手は、数知れぬ。

しかし、さしもの忠行殿も、今のままでは呪詛の主は判らぬらしい。



そんな中だ。

怪しげな風体の僧侶が、突然屋敷にやってきたのは。


「拙僧も、頼光様の病状を診させていただきたく参りました」


僧侶は、そう言って、拙者の寝所に近づいてきた。

だが、拙者は、その僧侶から明らかに不穏なものを感じ取った。

何か、邪悪な気配が、その身から漂っている。


(これは……)


拙者は、咄嗟に、常に枕元に置いていた愛刀、安綱を掴んだ。

そして、病床にありながらも、僧侶に鋭く斬りかかった。


「ぬうっ!」


病に臥していても、拙者の剣技は決して衰えていない。

魔穴で鍛え上げた技が、今、発揮される。

刀が、僧侶の身体を鋭く切り裂いた。


「ギギギ……!」


僧侶が、人ならぬ苦しげな声を上げた。

そして、その姿が醜悪に変わっていく。

人の姿が崩れ、巨大な蜘蛛の姿が露わになった。


「蜘蛛……!」


周囲の者たちが、驚愕の声を上げた。

晴明が、鋭く叫んだ。


「これは……呪詛の塊のような分身です!」

「本体が、どこかに潜んでいるはず」


忠行殿も、素早く前に出た。


「逃がすな!」

「ギィッ!」

「くっ……」


だが、傷ついた蜘蛛は糸を素早く吐いて、屋敷から必死に逃げ出したのだ。

拙者は、追おうとしたが、身体が思うように動かない。

まだ、呪詛が完全には解けていないのだ。


「頼光様、ご無理をなさっては!」


郎党が、拙者を慌てて止める。

普段であれば振り払えた矢もしれぬが、今はそれさえできぬ。

代りに拙者は、忠行殿に願った。


「忠行殿、あの蜘蛛を……」

「ご安心めされよ」


忠行殿が、鮮やかに符を投げた。


「呪詛は術師へ還るべし!」


符が、逃げる蜘蛛に見事に命中した。

蜘蛛が、苦しそうに甲高く鳴き、汚泥のような体液が散らばる。


「ギギギギ……!」


そして、蜘蛛の醜い身体に、光る印が鮮やかにつけられた。

それに構わず、逃げていく蜘蛛。

その背を見やりながら、忠行殿は、我ら源氏の者にこう告げたのだ。


「この印を追えば、本体の居場所が必ず分かるはずです」

「かたじけない! ……金時! お前たちは、あの蜘蛛を追え!」


拙者は、信頼する郎党に命じた。


「おう! 任せとけ!」


金時が、力強く元気よく答えた。



【坂田金時】


オイラは、仲間の郎党たちと共に、蜘蛛を追って都を駆けた。

蜘蛛には、陰陽師様がつけた光る印がついてる。

それを追えば、本体の場所が分かるんだ。


「金時、あれだ!」


他の郎党が、鋭く指さした。

蜘蛛が、人気のない都の外れに向かってる。


「よし、逃がすな! 追うぞ!」


オイラたちは、必死に蜘蛛を追い続けた。

やがて、人があまり近づかない蓮台野に辿り着いた。

死者を葬る場所として知られる、陰気な場所だ。


「こんなところに……」


蜘蛛は、人目につかない鬱蒼とした茂みの中に入っていった。

オイラたちも、警戒しながら茂みに分け入る。

すると、そこには、人から忘れ去られたかのような魔穴の入口があった。


「魔穴……こんなところに隠れてたのか」


オイラは、驚きながらも納得した。

都の近くに、誰も知らない魔穴があったのか。


「入るぞ。気をつけろよ」


オイラは、仲間たちと共に魔穴に入った。

中は暗くて湿っていて、嫌な空気が漂ってる。

そして、粘りつくような蜘蛛の糸が、そこら中に不気味に張られてる。


「気をつけろ。罠があるかもしれん」


慎重な郎党の一人が、警告を発した。

オイラたちは、注意深く進んだ。

やがて、信じられないほど広い部屋に辿り着いた。

まるで屋敷が丸ごと入りそうなくらい、とんでもなくでっかい部屋だ。

そして、その中は、おびただしい量の蜘蛛の糸だらけ。


「うわ……すげぇ……」


オイラは、その異様な光景に驚いた。

そして、部屋の中央に、それはいた。

想像を絶する巨大な蜘蛛。

各脚が、まるで大木みたいに太く、恐ろしい存在感を放っている。


「ギギギギ……」


蜘蛛が、苦しそうに不気味に鳴いてる。

呪詛返しが、しっかり効いてるんだ。


「今だ! やっつけるぞ!」


オイラは、怯まずに蜘蛛に突っ込んだ。

鍛え上げた拳を、蜘蛛の巨体に力いっぱい叩き込む。


「おりゃー!」


オイラの剛力が込められた拳が、蜘蛛の身体に激しく当たった。

だが、蜘蛛の身体は予想以上に硬い。

簡単には、倒れそうにない。


「ギギギ! ミナモトノ……ヨリミツ……オソロシイ……」


蜘蛛が、片言の言葉を発した。


「オオクノ……ワガ眷属ヲ……ホロボシタ……」


怪異たちを討ってきた頼光様への恐怖が、その言葉に滲んでいる。


「チョウテイノ……イヌメ……」


蜘蛛が、怒りと憎悪を込めて呪詛の言葉を吐いた。

そして、呪いが込められた糸を吐いてきた。

その糸は、ただの糸じゃない。

強力な呪詛が、嫌というほど込められてる。


「くっ……」


糸が、オイラの身体に絡みつく。

動きが、どんどん鈍くなる。


「金時!」


他の郎党も、次々と糸に絡まれてる。

これは、かなりまずい。


「オイラは……負けねぇ!」


オイラは、全身に力を込めた。

足柄山で鍛えた怪力で、糸を無理やり引きちぎる。

そして、蜘蛛の太い脚を力いっぱい掴んだ。


「動くな!」


オイラは、持てる全ての力で蜘蛛を押さえ込んだ。

だが、巨大な蜘蛛も必死に抵抗する。

このままでは、消耗戦になってしまう。


(誰か……早く来てくれ……)


オイラは、そう願った。



【源頼光】


拙者は、忠行殿、晴明殿たちと共に、蓮台野へと急いだ。

呪詛返しが功を奏したのか、拙者の身体は、徐々に動けるようになっていた。


「頼光殿、大丈夫ですか?」


忠行殿が、気遣わしげに尋ねてきた。


「ああ。何とか、動ける」


拙者は、力強く答えた。

愛刀、安綱をしっかりと握りしめる。

あの蜘蛛の本体を、必ずこの手で討つ。


やがて、郎党たちが見つけた魔穴に辿り着いた。

薄暗い穴の中に入ると、金時たちの必死の声が聞こえた。


「頼光様!」


「金時、よく耐えた。見事だ」


拙者は、忠実な郎党を心から労った。

金時は、想像を絶する巨大な蜘蛛を、満身創痍になりながらも必死に押さえ込んでいた。


「ミナモトノ……ヨリミツ……!」


蜘蛛が、拙者を見て恐怖と憎悪の声を上げた。


「ツイニ……キタカ……」


「忠行殿、晴明殿、お願いします」


「承知しました」


忠行殿が、鮮やかに符を投げた。


「朱雀よ、来たれ!」


紅蓮の炎を纏った神鳥が、力強く現れた。

四神の一柱、朱雀だ。


「糸を、焼き払え!」


朱雀が、浄化の炎を激しく吐いた。

呪詛が込められた蜘蛛の糸が、次々と燃えていく。


「私も」


晴明が、落ち着いた声で式神を呼んだ。


「珊底羅大将よ、来たれ!」


十二神将の一柱、珊底羅大将が威厳を持って現れた。

火行の陽側を司る神将であり、その炎の力は強大だ。


「火炎の力を!」


珊底羅大将が、浄化の炎を放つ。


二つの炎が、呪詛の糸を次々と焼き払っていく。

空間が、見る見るうちに動きやすくなった。


「よし、攻めるぞ!」


拙者は、蜘蛛に鋭く斬りかかった。

郎党たちも、主の後に続く。


「おりゃー!」


金時が、渾身の力で蜘蛛の脚を殴りつける。

他の郎党も、鍛え上げた刀で次々と斬りつける。


「ギギギ……チョウテイヲ……ノロウ……」


蜘蛛は、最後まで朝廷への呪詛を吐きながら、激しく暴れた。

だが、もう逃げ道はない。


「トドメだ!」


拙者は、魔穴で鍛えた脚力で高く跳んだ。

そして、愛刀・安綱を渾身の力で振り下ろす。

刀が、蜘蛛の醜い頭と胴を一刀両断に切り離した。


「ギギギ……」


蜘蛛が、断末魔の声を上げた。

そして、巨体が崩れ落ち、完全に動かなくなった。


「やった……」


金時が、安堵の声を上げた。


「ご苦労だった、皆の者」


拙者は、忠実に戦った郎党たちを心から労った。


「これで、呪詛も完全に解けるでしょう」


忠行殿が、安堵の表情で言った。


「ありがとうございます、忠行殿、晴明殿」


拙者は、深く頭を下げた。



その後、巨大な蜘蛛の骸は、都の人々の目に触れる場所で晒された。

人々は、その想像を絶する巨大さに驚愕した。


そして、源氏の武名は、さらに高まった。

拙者と郎党たちの、強さと忠義を、都の人々に示すことができた。


また、忠行殿と晴明殿の名声も、大いに高まった。

呪詛を見抜き、呪詛返しをし、そして蜘蛛を退治する手助けをした。

術者としての、その卓越した力を、都の人々に知らしめたのだ。


拙者は、この戦いを通じて、改めて悟った。

武だけでは、足りぬ。

術の力も、また必要である。


そして、何より大切なのは、忠義を尽くしてくれる優れた郎党の存在だ。


彼らが拙者に忠義を捧げてくれるのは、拙者が清和源氏の嫡子だからだけではない。

拙者が、その忠義に値する頭領でなければならぬ。


強く、正しく、そして郎党を守る。

それが、拙者の責務である。


拙者、源頼光は、これからも、朝廷のために戦っていく。

そして、忠義を尽くしてくれる郎党たちを、決して無駄死にさせぬ。

彼らの忠義に、必ず応えてみせる。


拙者は、そう固く心に誓ったのである。

以下のXアカウントで告知や更新のアナウンスをしています。

https://twitter.com/Mrtyin

日々、皆様のブックマーク登録や評価、反応などが更新の励みになっております。

誠にありがとうございます。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ