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よくわかる日本の歴史 ~ただし、原始時代から日本にのみダンジョンがあったものとする~【第三部完】  作者: Mr.ティン
間章5 ~大平安魔人伝~

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源頼光は、清和源氏の嫡男として生を受けた

連日の遅刻申し訳ありません。

【源頼光】


拙者、源頼光は、幼き頃より厳しく育てられた。

清和源氏の嫡子として、父、源満仲から武の道を叩き込まれたのである。


「頼光、構えが甘い!」


父の声が、道場に響く。

拙者は、刀を構え直し、父に向って行った。

だが、容易く弾き飛ばされ、倒され、打ち据えられる。


幼き拙者にとって、父の稽古は過酷なものであった。

だが、それが当然だと、拙者も思っている。


「我ら清和源氏は、朝廷に仕える武門である。その誇りと責務を忘れるな」


父は、常にそう言っていた。

父、満仲は、祖父である源経基の息子である。

祖父は、かの藤原純友の乱で戦功を立てた武人だ。

その血を引く拙者もまた、武人として生きねばならない。

拙者は、そう教えられて育ったのである。


実際、世は源氏のような武士の力を欲していた。

多くの土豪が各地で力を伸ばし、朝廷とは別個の力を持とうとしているのだと、父は語っていた。

故にこそ、朝廷の武たる我ら清和源氏は、力を付けねばならぬのだと。

拙者も、その教え通りに、己を磨き続けたのだ。


やがて、拙者は青年となった。

そして、日々、他の清和源氏の郎党と共に、己を磨く修行に励んでいた。


特に、魔穴での修行は、拙者にとって重要なものであった。

魔穴に潜り、その中に満ちる霊力とも言うべき力を取り込む。

そうすることで、人は超人的な力を得ることができる。

拙者も、多くの魔穴に挑み、その力を得てきた。


既に、深部で現れる様な獣などしか歯ごたえを感じなくなった時の事。

ある日、拙者は父に尋ねた。


「父上、拙者はまだ未熟でありますか?」

「未熟だ。だが、お前は確実に強くなっている」


父は、そう答えた。


「頼光、お前は藤原秀郷という武人を知っているか?」

「はい。平将門を討った、東国の武人と聞いております」

「その通りだ。秀郷殿は、魔穴の奥で試練の鬼に鍛えられたという」


父の言葉に、拙者は驚いた。


「試練の鬼、でありますか?」

「うむ。伝説の武人、阿弖流為や、そして試練の鬼と呼ばれる存在に師事したと聞く」


父は、真剣な顔で続けた。


「頼光、お前も魔穴の奥を目指せ。そして、試練の鬼に出会い、鍛えられるのだ」

「承知いたしました」


拙者は、深く頭を下げた。

試練の鬼。

聞けば、かの軍神たる坂上田村麻呂もまた、試練の鬼に鍛えられたのだという。

その存在に出会い、鍛えられること。

それは後世に名を残す武人に至る道であり、源氏の頭領の嫡男として、拙者が目指すべき高みそのものであろう。

故に、それが拙者の新たな目標となったのである。


それから、拙者は各地の魔穴に挑み続けた。

より深く、より危険な場所へと潜っていく。

その過程で、拙者の力は飛躍的に高まっていった。

力を取り込むことで、身体能力が向上する。

力が増し、速さが増す。そして、感覚が研ぎ澄まされていく。


拙者は、特に刀の技も磨いた。

愛刀、安綱を手に、日々稽古を重ねたのだ。

魔穴で鍛えた超人的な力を、いかに刀の技に活かすか。

それが、拙者の課題であった。

一振りで岩を断ち、一閃で風を裂く。

そのような技を、拙者は身につけていった。



そして、ある日のこと。

都の近くにある魔穴に潜っていた時、拙者は奇妙なものを見つけた。

それは、通路であった。

だが、他の魔穴とは様子が違う。

通常、魔穴の通路は横や斜めに伸びている。

だが、この通路は、真下に向かって伸びているようであった。

しかも、その深さは尋常ではない。

魔穴の最深部とされる深さを遥かに超えているように思えた。


(これは……もしや)


拙者は、予感を覚えた。

試練の鬼は、魔穴の奥深くにいるという。

ならば、この通路の先に、その鬼がいるのではないか?

その期待と共に、拙者は、迷わずその通路に入り込んでいた。


通路は、深く、深く、下へと降りていく。

周囲の壁から、そして通路の先から、濃密な力が溢れ出ていた。

拙者の身体が、その力を吸収していくのが判る。


(……魔穴の深部は、力に満ちているとは言うが)


さらに力が増していくのを感じながら、拙者は進み続ける。

この様な力に溢れている場に棲まうものは、どれほどの力を持つのだろうか?

遭遇したとき、拙者の技は通じるのか?


その様な重いとともに、どれだけ降りただろうか?

時間の感覚が曖昧になっていたが、同時に拙者の心は高揚していた。

これほどの力に満ちた場所なのだ。

この先に、試練の鬼がいるという確信を抱きつつあったのだ。


そして、ふと気づいた。

通路の向こうから、何かが近づいてくる。

それも、これは足音だ。

拙者は刀の柄に手をかけた。


(来るか……)


拙者の感覚が、それを捉えた。

速い。

非常に速い動きだ。

そして、通路の奥の闇から、それが現れた。


一匹の鬼である。


人の姿に近いが、角が生えている。

肌は赤みがかり、筋骨隆々とした身体をしていた。


だが、拙者はすぐに悟った。


(……これは、試練の鬼ではない、な)


その鬼は、あまりにも若かった。

人で言えば、拙者と大して変わらぬ、元服したかしないか程度といったところか。

更に、その動きを見て、拙者は確信した。

動きが粗雑なのである。

力任せで、技が洗練されていない。

名高き武人たちを鍛えたという試練の鬼と呼ばれる存在が、このような粗雑な動きをするはずがない。


そう確信した拙者を見て、鬼はすぐさま襲いかかってきた。


「ガァァッ!!」

「ぬっ!」



鬼の速さは想像以上であり、拙者の目が、ようやく追えるほどの速さである。

魔穴で鍛えた拙者でさえ、辛うじて対応できる速度で、鬼の爪が拙者に迫る。

拙者は、その動きに辛うじて合わせ、刀を抜きざま斬り付けた。


ガキンッ!


刀と爪がぶつかり合い、火花が散る。

次の瞬間、切り返した刀が、鬼の腕に一筋の傷をつけた。

だが、鬼も踏み込み、拙者の鎧の一部を切り裂いていた。

括り付けていた紐が断たれたのだろう。

輿に下げていた荷物の幾らかが、辺りに散らばる。


(強く、速い……だが、技は未熟だ)


拙者は、鬼の実力を測った。

力と速さは、拙者を上回っている。

だが、技術では拙者が上であった。

ならば、勝機はある。


だが、その時である。

通路の奥から、さらなる足音が響いてきたのだ。

複数、しかも数が多い。


(まずいな……)


拙者は、瞬時に判断した。

一対一ならば、勝機はある。

だが、複数を相手にするのは危険だ。

そして、通路の奥から、さらなる鬼たちが現れた。

頭が馬のもの、牛のもの。

肌が赤いもの、青いもの。

様々な鬼たちが、こちらに向かってくる。


「やむを得ん……撤退する!」


拙者は、即座に身を翻した。

鬼たちが、拙者を追ってくる。

だが、拙者は来た道を全速力で駆け上がった。

魔穴で鍛えた脚力を最大限に発揮し、鬼たちを振り切る。

やがて、鬼たちの気配が遠ざかった。

拙者を深追いすることはないようだ。


しばらく後、拙者は、地上へと戻っていた。

自らの身の無事に、深く息をつく。

そして水を飲もうとして、腰に付けていた荷物を軒並み失っていた事に気が付いた。


「水に、傷を洗う酒も落としたか……」


糧食に水、そして気付けや傷の手当てに使う酒までも落したことに、拙者は苦い顔を浮かべてしまう。


(……拙者の未熟さを、痛感した)


あの若き鬼にすら、力で劣っていた。

そして、複数の敵を相手にする準備もできていなかった。

拙者は、まだまだ修行が足りない。


だが、同時に思う。


(あの鬼と、いつかまた会うだろう)


なぜか、そう確信していた。

あの若き鬼との戦いは、まだ終わっていない。

いつか、必ず再戦する。

その時こそ、拙者は全力で戦い、勝利を収めるのだ。


拙者は、愛刀、安綱を見つめた。

この刀で、いつかあの鬼を討つ。そう誓ったのである。


そして、拙者はさらなる修行に励むことを決めた。

試練の鬼に出会うため。そして、あの若き鬼と再戦するため。

拙者、源頼光の戦いは、まだ始まったばかりなのである。

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