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鉄と海の帝国  作者: 007
第4章 泥沼

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資金の濁流2

そして日銀引き受けの転売は『銀行にとって断れない経済的利点』を組み合わせた、より高度な誘導という形を、大蔵省は採用した。それはつまり『国債を買うことが、銀行にとっても最も安全で利益になる状況』を大蔵省と日銀が作り出したのである。

まずは日銀による『金利の固定ペギング』だった。これが最大のポイントとなった。中央銀行である日銀が、国債の金利を極めて低い水準(長期債で2.5%、短期債で0.375%)に『完全に固定』すると宣言したのだ。

普通、金利が上がると国債の価格は下がって損をするが、日銀が金利を絶対に変えないと保証した為に銀行は『国債はいつでも額面で売れる、現金と同じくらい安全な資産だ』と確信した。それは大蔵省が望んだ日銀引き受けの転売を『事実上の強制』する事になった。金融再編した五大メガバンクは他に貸付先(平和産業)がない中、日銀が価値を保証してくれる国債を買うのが、経営上『最も賢い選択』になるよう追い込まれたのである。

そして大蔵省は『戦時貸付運動』という大規模な国債販売キャンペーンを行い、五大メガバンクは販売代理店として機能した。窓口での凄まじい営業が行われ五大メガバンクは顧客に対し、預金を引き出して国債を買うよう熱心に勧めたのである。

それは『愛国心の格付け』として大々的に報じられる事になり五大メガバンクがどれだけ国債を売ったか、あるいは買ったかが大日本帝国全土で汎ゆる媒体で公開されたのだ。その為に五大メガバンクの経営者達は『非国民』と思われないように、更には自分達の財閥の名誉の為に競って割当目標を達成しようとしたのだ。

そして大蔵省は預金準備率の緩和を行った。銀行は本来、預金の一部を『準備金』として日銀に預けなければならないが、『国債を買う為の資金についてはこの規制を緩める』といった特別措置が取られた。これはいわば『国債を買うなら、手元の現金が少なくても良い』というルール変更でありこれにより、五大メガバンクは手元の資金を限界まで国債購入に回せるようになった。

この大日本帝国の手法は独特の手法とされ『国債を買うのは安全ですよ、金利も保証しますよ。さあ、連合国の兵器廠を守るために協力しましょう!』という、経済的プロパガンダ成功例と戦後称賛された。

これにより結果的には五大メガバンクの資産の多くを国債に変えさせたが、それは『呼びつけて命令する』という野蛮な形ではなく、『そうせざるを得ない経済環境を作り出し、愛国心で味付けする』という、より洗練された(あるいは巧妙な)コントロール術となった。

これにより資金の濁流が、大日本帝国の戦争経済を席巻する事になったのである。

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