結婚前夜
エリーゼはウォルト家で最後の晩餐を楽しんだ。
明日、エリーゼはシールズ公爵へ嫁ぐ…
「娘が嫁ぐというのは寂しいものだな。リゼよ、無理してはいけないよ?」
侯爵が慈愛に満ちた表情をエリーゼへ向けて語りかける。
「リゼちゃんが我が家へきて2年とちょっとしか経っていないなんて。何だかあっと言う間だったわね…。」
夫人も慈愛に満ちた表情を向ける。
「リゼが妹になって、そんな少ししか経っていないのね。もっといた気がするわ…。それこそ、最初から姉妹だったのかと思うほどだったわ。
リゼ、ハルト様が嫌になったら、いつでも帰っていらっしゃいね?我が家はいつでも貴女を待っているわ。」
姉は笑顔を向ける。
「マリア、エリーゼに嫌われたらハルトが可哀想だろ…まったく…
でもエリーゼ、いつでもお茶しにおいで。義父上も義母上もマリアも待っているから。もちろん僕も。ウォルト家は君の家なんだから。」
サイクスも笑顔を向ける。
「はい…。
お父様、私を引き取ってくださってありがとうございます。実の娘のように接してくださってとても嬉しかったです。
お母様、本当の母のお話をいっぱいしてくださってありがとうございました。本当の母のように私を愛してくれて嬉しかったです。」
エリーゼの頬を涙が伝う。
「リゼ…」
「リゼちゃん…」
侯爵夫妻は涙を拭う。
「お姉様、お姉様は私の憧れの令嬢であり、夫人です。私を受け入れてくださってありがとうございました。お姉様の妹になれて幸せですわ。」
「リゼ…私たち、今度は夫人同士でも仲良しよ。」
姉は涙を流しながらも笑顔だ。
「サイクスお義兄様、ハルト様の件ではたくさんお世話になりました。お姉様とサイクスお義兄様がいなかったら、ハルとも上手くいかなかったかもしれません…。これからも仲良くしてくださいね。ありがとうございました。」
サイクスはマリアの背中を擦りながら笑顔を向ける。
「皆様のことが大好きです!お世話なりました。本当にありがとうございました…。」
エリーゼの言葉を聞いて、夫人とマリアはエリーゼを抱きしめる。
「お母様、お姉様…!」
「「リゼ…!」」
泣いてばかりいたエリーゼを夫人とマリアが落ち着かせる。
「リゼ、泣き腫らしてしまっては明日が大変よ?
結婚式は晴れ舞台。ハルト様の隣に万全の状態で立たなくてはならないのだから。」
マリアはメイドに頼みエリーゼは湯浴みに向かう。
「それでは、皆様、おやすみなさい。」
そう言って、エリーゼはサロンを出た。彼女の背中を見送り、サロンに残った侯爵夫妻とマリアとサイクス。
「リゼを引き取って良かったな…。」
侯爵がエリーゼと過ごした日々を思い返している。
「そうですね。リゼちゃんがとうとうお嫁に行くのね…
ローナもきっと祝福しているわよね…。」
ローナとはエリーゼの本当の母の名前だ。
「お父様、お母様、サイクス、私たちも明日に備えて休みましょう。」
マリアが声をかけると皆が頷きそれぞれ部屋へ戻るのだった。




