誘拐?
四阿でエリーゼはメイドのカレンに少しだけ、悩みを打ち明ける。
「お嬢様、きっとそれらのことはシールズ小公爵様と一緒に解決していけば宜しいのです。夫婦になるのですから。」
カレンは笑顔でエリーゼに伝える。
「ふふ。そうね、ありがとう。」
エリーゼは戻るわ。と立ち上がる。
「エリーゼ=ウォルト様ですね?」
「どちら様でしょうか?」
見たことがない中年男性が声をかけてきた。
何か嫌な感じを察し、カレンがエリーゼと男の間に入る。
「申し訳ございません。パーティー会場はあちらでございます。この場はお引取り…」
バタッ!
カレンは急に倒れ込んだ。
「か、カレン!?」
「貴女がエリーゼ様ですね。手荒なことはしたくありませんので、大人しくしていてください。」
「…わ、分かりました…あの彼女を、四阿に横にしてはいただけませんか…?」
「承知。」
男が目配せすると二人男が出てきて、カレンを横にしてくれた。
「ありがとうございます…。」
「いえ…。では参りましょうか。高貴な御方がお待ちですから。」
「高貴な…御方…?」
エリーゼは理由も解らず付いていくしかなかった。
(ハルから離れた罰かしら…それに、カレンは大丈夫かしら…しかも高貴な御方って…誰…?)
不安でいっぱいのエリーゼ。
男に案内された先は綺麗な装飾の施された馬車だった。
「殿下、お連れしました。」
(で、殿下ですって!?)
男が馬車の扉を開けると姿絵を見たことがあるこの国の第三王子デュークが座っていた。
「さっさと乗ってくれないか?あまり目立ちたくないのだ。」
エリーゼは、目立ちたくないのに何故、王家の馬車で?と疑問に思うも言葉を飲み込んで、馬車へ乗り込んだ。
「第三王子殿下にご挨拶申し上げます。」
「エリーゼ=ウォルト嬢、俺のことを覚えていないのか?」
「えっ…?はじめましてでは…?」
「はあ…残念だよリゼ…
ガレント商会の常連の中でも一番仲が良かったと自負があったのに…」
「え…商会って…まさか、クロイツ様!?」
「おっ、正解だよ。久しぶりだね。」
「クロイツ様は第三王子殿下でしたの?」
驚いてデュークの顔を見るエリーゼ。
「うん。俺は元々、身体が弱かったから側妃である母親の実家である伯爵家に預けられていたんだよ。その時に買い物していたのが、ガレント商会。」
「そうだったのですね。驚きですわ。」
デュークは貴族子息には珍しく、使用人と一緒に商会に直接買い物へ来ていた少年だったのだ。
「ね、リゼは俺との約束忘れてるの…?」
「約束ですか…?」
「俺が元気になったら、求婚していいか訊いたら、君はいいよ!って言ってくれたよね?」
「そ、それは子どもの頃の約束で…」
「俺はずっと願っていたんだ。君が俺の傍で笑ってくれることを。リゼ、俺はずっと君のことが…」
「殿下、それ以上はなりませんわ。それに、私はハルト様をお慕いしております。この気持ちは絶対なのです。申し訳ありませんが…」
彼女が謝罪のために頭を下げようとすると「リゼ!!」と馬車の外から、エリーゼの愛しい人の声が聞こえた。




