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狩人の血脈  作者: SKeLeton
第二章 現在
35/38

王国首都郊外の農場(敷地内3)

 共和国の男……アレクサンドル・コドロフは恐怖きょうふしていた。


 戦場におもむく兵士には多かれ少なかれ恐怖きょうふは付き物だが、そのときの恐怖きょうふはいつも戦場で感じるたぐいのものとは明らかに違っていた。


 見えはしなかったが、経験から、攻撃はおそらく狙撃手スナイパーによるもの。それも熟練の……ということに気付いたからだ。


 狙撃手かれらは、味方にすればこれだけ心強い者はない。


 しかし、敵にすれば……一騎打ちの時代は忘却ぼうきゃく彼方かなたに過ぎ去り、戦場で個人がいくさ趨勢すうせいをどうこうするという話はついぞ聞かなくなった昨今さっこん……。


 もし、一人で戦況を変える者がいるとするならば、それは狙撃手スナイパー以外にない。


 練度の高い狙撃手スナイパーは、あるときは小隊プラトゥーンの自由をうばい戦意を喪失そうしつさせ、あるときは指揮官をたおして大隊バタリオンの機能を麻痺まひさせる。


 実際、彼も小規模な遭遇戦そうぐうせんで、手練てだれの狙撃手スナイパーが味方の劣勢れっせいくつがえすのを見たことが何度かあったし、“あの高地”では〈狩人かりゅうど〉に狙撃されさんざんな目にあっている。


 アレクサンドルのなけなしの理性が“即時撤退そくじてったい”の四文字を頭の中で繰り返していたが、彼の感情が撤退てったいを許さなかった。


 にわか軍人や政治屋には臆病おくびょうとも揶揄やゆされる冷静かつ堅実けんじつな用兵が持ち味のアレクサンドルだったが、いつ終わるとも知れぬ、左遷させんがごとき敵地での特殊任務暮らしが彼を変えてしまった。


 アレクサンドルは、焦燥しょうそうに駆られていた。


 そして、誰にでもわかりやすい成果が必要だという、彼らしからぬ結論に至ってしまった。


 だから、自分の判断で襲撃しゅうげきを早めた。成果を手土産てみやげに、義父に口をいてもらい軍へ復帰するつもりだった。


 それがどうだ。目論見もくろみは見事に外れ、味方に損害が続出し……このまま自分だけ無事に帰ったとしても、最早もはや、陸軍に居場所があるかどうかはわからない。


 そうだ、たおれた仲間たちのためにも、手ぶらでは帰れないのだ。


 そのとき、また銃声がして、仲間が一人どさりと倒れると微動びどうだにしなくなった。


「!!」


 アレクサンドルは、“あの高地”で〈狩人かりゅうど〉に狙撃され、危うく戦死するところだったことをまざまざと思い出してしまい……絶句ぜっくしたまま思考が止まってしまった。

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