王国首都郊外の農場(母屋入口付近1)
先ほどの予期せぬルトギエルの来訪、そしてやり取りの後、やっとのことで気をとり直したレティシアは、〈アトロファネウラ〉のところへ向かう前にやるべきことを思い立った。
すべての元凶である特製耐Gスーツ(いささかしつこいかもしれないが、透過性の……)を着替えてしまうことだ。
そのためレティシアは、女性更衣室となっていた母屋の一室でファスナーを下ろしかけていた。
だが、そこで連続した射撃音を聞いた彼女は、椅子に掛けてあったホルスターの押さえを外して自動拳銃を引き抜き、フライトジャケットを羽織ると音のした方角へ急いだ。
そこで目にしたのは、開け放たれた入口の扉とその先の車、そしてそれを盾として伏せる兄、ルトギエルの姿だった。
公用車にはいくつか弾痕があったが、幸いにもこの日、ルトギエルはお忍びで訪れたため自ら運転しており、運転手は乗っていなかった。
「兄上!!」
思わず戸口から踏み出そうとしたレティシアの足元に、タタタと三点射が加えられる。
機関銃というものは全自動で連続射撃し続けると発射の反動で銃口が跳ね上がり、収弾率が下がって標的に命中しにくくなる。
さらには、連射すればすぐに弾倉が空になるため、引き金のひと引きで三発だけ銃弾が放たれる、三点バースト射撃は非常に利に適っている。
レティシアは空軍操縦手とはいえ、基礎訓練時に一通りは歩兵の戦闘訓練を受け、携行火器の知識は持っている。
襲撃者は素人ではない「戦闘慣れしている!」、レティシアは戦慄を覚えた。
そのとき、一階正面の窓にも一斉射が叩き込まれ、レティシアと射撃音を聞き付け何事かと集って来た王国空軍兵たちは、思わず家具の陰に身を隠した。
彼らの頭上に、砕かれたガラスの破片が容赦なく降り注ぐ。
レティシアは、猫を思わせる敏捷さで割れた窓枠越しに拳銃で応射を試みるが、彼女の 操縦士携行用の 小口径では埒が明かないことを悟る。
そして、細身の身体のいったいどこからそれだけのものが出るのかという大音声を周囲に放った。
「もっと強力な武器はないのかっ!?」
「〈納屋〉に20ミリが!」と整備兵が応じるが……。
それは(航空機)兵装の機関砲であろうが! もし仮に銃座があったとて、この状態でどうやって格納庫まで行けというのか!? 装甲車の用意でもあるのか? ぜひ教えてもらいたいものだな!! と思いつつ、レティシアがその兵士の顔をじろりと睨むと、申し訳なさそうな目にぶつかった。
きっと、本人も言ってしまってから「しまった」と思っているのだな……などと考える。
戦闘中は、いろいろなことが一瞬で頭を過ぎるものだというが……このことか。
して、兄上は?




