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狩人の血脈  作者: SKeLeton
第二章 現在
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王国首都郊外の農場(敷地内1)

 共和国の意向を受けた男たちがびていたのは偵察任務のみであり、戦時でもないから威力偵察いりょくていさつである必要もなく、つまりは探りを入れるだけのはずだったのだ。


 しかし、彼らは王国空軍で重要人物ともくされるルトギエル・ヴァルシュタット中佐が〈農場ファーム〉を訪れるところを目撃してしまった。


 そこから、彼らの運命の歯車が狂いはじめた。


 折悪おりあしく〈農場ファーム〉はこのとき、王国郊外の農場跡地を王国空軍が買い上げ急遽設営中きゅうついせつえいちゅうだった。


 そのため、外部からの襲撃しゅうげきに対してお世辞にもそなえているとはいえない状況にあった。


 それを見て取った共和国の現地工作員エージェントたちは、持参した装備の威力いりょくを確かめたいという誘惑にあらがうことができなかった。


 完全なるいさみ足だったが、責任の所在が曖昧あいまいになりがちな共和国体制の弊害へいがいが思わぬところで発現はつげんしたのかもしれなかった。


『奴が出て来たところを狙います』


 小型通信機で報告を受けた腹の出た男は、浮かない顔をかたわらの若い男に向けた。


 この若い男、すっかり王国市民っぽい洒脱しゃだつな服装が身についているが、実はオウルである。


 オウルは〈もり〉を出てからはクロウと名乗なのり、水を得た魚のように王国と共和国の狭間はざま暗躍あんやくしていた。


「下見のはずじゃあなかったか。時期尚早じきしょうそうでは?」

「私も止めたさ。だが、我が国は良くも悪くも多数決が多くてね。まあ、王国れんちゅう計画プロジェクト頓挫とんざするなら同じことだろ……」


 クロウことオウルは、そりゃあ、責任の所在が曖昧あいまいになるし、勘違いする者も出てくるワケだと心の中で思いながら肩をすくめた。


 それを見た男は、だから現地の指揮権はすべて私に寄越よこせといったのだ……という、軍上層部に対する批判とも取られかねない発言と、若いがイヤに落ち着き払ったこの男に対する苛立いらだちをかろうじて飲み込んだ。


 二人の現在位置は、〈農場ファーム〉から離れてはいるが丘になっていて、母屋おもや納屋シェッド、今は拡張された農薬散布用の小型機が使用していた滑走路かっそうろを見渡すことができた。


 日は落ちかけていたが、まだ双眼鏡で人間の識別が可能だった。


 もう少しヴァルシュタット中佐が訪れる時間帯が遅ければ、あたりは薄闇はくぼに包まれ、あるいはこのような事態にはおちいらなかったのかもしれない。


 偵察要員を乗せたなんの変哲へんてつもない自家用自動車……四人乗り(セダン)がゆっくり〈農場ファームに近づき、一台目から三名、次の一台からも三名と、計六名の男たちが降車する。


 平時、他国で隠密行動の偵察部隊にしてはずいぶんな多勢たぜいだった。


 当初の計画では後日、実際に襲撃する必要が出てきた際に齟齬そごなきよう、なるべく現場をませる……という、作戦立案者の企図きとがあったらしい。


 男たちはいかにも王国の労働者風の服装はしていたが、右手には短機関銃サブマシンガンがあり、上着のわきの下のふくらみには自動拳銃をしのばせていた。


 彼らの足取りは落ち着いており、身のこなしにも無駄がなく、歩行中でもあまり銃がれていない。


 それは、なんらかしらかの軍事的な訓練を受けたことがある者であるあかしだった。


 彼らに油断はなかったが、心のどこかに王国の軍隊は古臭ふるくさく、装備も共和国に比べ旧式だというあなどりりがなかったといえばうそになるだろう。


 それに加えて、これから出現する戦闘にはつきものの想定外な要素が、彼らの運命を決定づけてしまうことになる。


 仮に襲撃者の中に短機関銃サブマシンガンよりも射程距離の長い、小銃ライフルで武装した者がじっていれば、戦闘の推移すいいはある程度は変わったのかもしれない。


 だが、強襲きょうしゅうではなく偵察任務ていさつにんむだったため、主武装メインアームには現地調達した自家用車でも取り回しのよい、短機関銃サブマシンガンを選択していた。


 そのため、戦闘は比較的、近距離ショートレンジではじまることとなった。


 母屋おもやの扉が開き、駐車された公用車へとルトギエル・ヴァルシュタット中佐が歩き出したとき、薄暮はくぼの中、接近する見知らぬ男たちとその手の短機関銃サブマシンガンを見た。


 その銃口が自分へ向きかけたとき、ルトギエルは反射的に身を伏せた。


 元来がんらい、ヴァルシュタット家の人間は目が良いとの定評があるが、元戦闘機乗りの彼は反射神経も悪くない。


 しかし、ルトギエルは公用車のかげに転がり込み、腰のホルスターから軍用拳銃を抜いて応射おうしゃしようとしたものの、そこで身動きが取れなくなってしまった。


 襲撃者側も標的に予想以上に早く発見されたことと、その後の素早い身のこなしも予想外、予想以上だったので、あっけにとられていた。


 だが、この時点で襲撃者たちは、主導権は自分たちがにぎっており、後は包囲の輪を縮めるだけだということを疑ってはいなかった。


 その証拠に……反撃は拳銃によるものだけであり、標的は釘付くぎづけで動けないではないか。

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