王国首都郊外の農場(納屋1)
王国首都郊外の農場、納屋を改築した格納庫の中に小型機が佇んでいる。
薄暗い格納庫の中に、塗装されていない機体……その金属の地肌の銀色がぼんやりと浮かび上がっている。
外部電源からケーブルが繋がれた機体には、俯瞰すれば三角形に見えるΔ翼と呼ばれる主翼がある。
その機体は、まるで矢尻のように細く鋭く見える。
キャノピーは開かれ、作業服姿の小柄な男が狭い操縦席 にぎりぎりといった様子で収まり、灯の入った計器を窮屈そうにいじっている。
「正直、惜しいです。ここまで仕上げておきながら、持っていかれてしまうなんて……。あなた以外、この機体を御せる者なぞいませんよ!」
機体脇の搭乗用梯子に足を掛け、操縦席を覗き込んだ作業服の男が語りかけた。
「仕方がないさ。指示書の通り、これ以上、操縦席 に機器を詰め込んだら、 普通のパイロットは収まらなくなる」
操縦席 の男、クルト・ヒンメル王国空軍技師長はかつてない悔しさを噛み締めながら、気持ちとは裏腹に肯定するかのような言葉を吐いた。
この機体には思い入れがある。この先、王国空軍で戦闘機の設計段階から技師兼テストパイロットとして関わることがあるだろうか。
なまじ今後、計画があったとて、これだけ尖鋭的な機体にはならないだろう。この機体は一種の奇跡なのだ。王国空軍にとっても、自分にとっても。
しかし、 追加兵装、追加機器もたいがいだが、戦闘機の 上下並列複座なんて聞いたこともない。大型爆撃機ではあるまいに……。




