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狩人の血脈  作者: SKeLeton
第二章 現在
23/38

王国陸軍工廠(試作兵器保管庫)

 どちらが前とも決めかねる形状の戦闘車輌せんとうしゃりょう牽引けんいんされている。多数の砲身が生えた戦車の砲塔キューポラが大型の台車にせられて、何人もの作業服姿の男たちに押されている。


 その中を案内されている、若い〈狩人かりゅうど〉の姿があった。アウィス・シルワウィリデである。


 案内するオットー・マンハイム王国陸軍技師長は、ずんずん奥に進んでいく。ここ王国陸軍工廠内部おうこくりくぐんこうしょうないぶは、朝だというのに日差しが届かない穴蔵あなぐらのような場所だ。


 しかし、周囲の男たちは意に介さず、なんらかの熱意を持って作業に当たっている。周囲の会釈えしゃくする男たちに、技師長はその都度、「おう!」と、うなずきながらおうじている。


「空軍さんが何かと思いやあ、〈防人さきもり〉を寄越よこすたあネ。アンタもとんだとばっちりだったナ」


 無言無表情の若い男に、腹を立てそうになる技師長だったが、空軍とはいえ上層部に食い込んでいるヴァルシュタット中佐の紹介状が存分に効力を発揮していたこともあり、ぐっとこらえた。


 二人はほどなく通称「地下墓所カタコンベ」と呼ばれている、試作兵器保管庫へ続く地下への階段前に到着した。


「地の果てまでご案内だあナ」

「……」


 階段を降り最深部に到達すると、マンハイム技師長は所持していた宝箱でも開けるような鍵で大仰おうぎょう錠前じょうまえを開き、アウィスにも手伝わせて、重い鉄扉てっぴに取り付いた。


 すると、ガラゴロと重い扉がゆっくり開いていき、おのれの意志とは関係なしに眠らされた不幸な「けもの」たちの奇妙な姿が出現した。


 銃身がL字型に曲がった銃や、先端にパラボラアンテナ状のものが装着されている小銃のような形をした装置などが、通路から差し込んだ光の中に浮かび上がる。


「こっちだ」


 薄暗がりの中でもマンハイム技師長は迷わず導き、奥まった一画で立ち止まった。彼が目の前の架台かだいに掛けられた難燃性カバーをぐと、そこには銃にしてはやけに長く、砲としては口径が小さ過ぎる独特な「火器」が、異様な存在感を示しながら固定されていた。


上層部うえからの要求性能ってのをとことん突き詰めていったらこのありさまサ。性能は悪かねえのに使い道がねえっときたもんだ。どの銃よりも射程は長いが、全長もダントツに長い。とことん命中精度優先の設計で単発式だから連射はきかねえ。もちろん反動も大きいゼ」

さわっても?」

「そりゃあかまわねえが、一人じゃビクともしないゼ……。でも、んなこたあ、最初からわかりきったことじゃあねえか。机で算盤ソロバンばっかはじいてる連中にゃあ、想像力ってヤツが欠けてやがんのヨ」


 アウィスは、聞いているのやらいないのやら、不幸な生い立ちの試作銃に近付き、下から腕で抱えるような姿勢を取った。


「オイ、やめておけって」


 銃身の固定具を外し、足場を確認して腕に力を入れると、ゆっくりと持ち上げて、音もなく銃架じゅうかに戻す。


「確かに重量はある。だが、バランスは悪くない。単発式なのも、動作の安定面から考えて悪い選択ではない」


 技師長は、振り返ったアウィスの口元にひそやかな笑みを見た。そしてアウィスは、ボルトハンドルがスムーズに引けるのを確認し「良い銃ですよ」と言いながら思った。


 この「獣」はとびきり凶暴きょうぼうそうだが、手なずけることができれば存分ぞんぶんに働いてくれるに違いない、と。


 そして、「しかし、この銃床じゅうしょうを見たら〈もり〉のみんなはいったいなんと言うだろう?」とも。

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