王国首都への山道
二人の〈狩人〉が、王国首都を目指して山中の道なき道を往く。一般的に狩人というと猟師と同義だが、〈杜〉の〈狩人〉となると王国軍人は一種の畏敬にも似た感情を持ち、共和国軍人は恐怖の対象、憎むべき相手といった感情を持つこととなる。
そもそも〈狩人〉が王国のために働くことになったのは、〈杜の民〉と呼ばれる王国外縁部の山岳地帯……深い森に住まう人々が、狩猟の技術、特に射撃に長け、それを持ってして幾たびか繰り返された王国と共和国との小競り合いの際に、王国側の先手に混じって戦ったことに端を発する。
〈杜〉が王国に近いという地勢によるものと、王室が代々、〈杜の民〉を庇護してきた歴史があり……それに恩義を感じた〈杜の民〉が王国国境の護り手である〈防人〉となってから、という由来もあるのだが……いつしかその〈防人〉の中に尋常ならざる射撃の名手が存在することが彼我の将兵に知れわたった。
そして、それこそが〈杜〉の〈狩人〉であると認知されるのまでにも、そう時を要さなかった。
〈狩人〉は二人とも焦げ茶色の旅装をしている。その服装と夕闇が、ただでも深く茂った木々の中に二人の姿を溶け込ませていた。
先に行く一人は若く、もう一人は初老だが、二人ともこの手の山道には慣れっこのようで、無言のまま、街の住人にとっては早いペースを保っている。
若い男の名はアウィス・シルワウィリデだった。そして、同行の初老の男は、アウィスの師匠である熟練の〈狩人〉だ。
しかし、近年、経験はともかく射撃の腕前は実質、弟子のほうが確かになりつつあった。
その二人の頭上を、王国空軍の大型輸送機が低く飛び過ぎて行く。アウィスが空を見上げる。目は輸送機を追っているが、表情を変えることはなかった。




