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狩人の血脈  作者: SKeLeton
第一章 過去
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王国首都の安宿

 王国首都は、夜のとばりが下りても昼間のパレードの興奮冷めやらぬといった様子で、熱気をはらんだ空気に包まれていた。


 〈防人さきもり〉の男たちも宿舎としている安宿やすやどの一室で、安酒場やすさかばや酒もまかな安食堂やすしょくどうたぐいからあふれ出してくるのであろう陽気な笑い声や、なまりのない王国風の歌声を装備の点検清掃をしながら聞いていた。


 パレードの警備から解放されたアウィスも、狙撃銃を整備している。


 整備といっても、試射もままならない王国首都では、いつ零点規正ぜろてんきせいと呼ばれる照準調整ができるかわからない。


 照準器スコープは装着したまま、引き金など可動部分の注油や銃身の清掃といった最低限できることをしておくしかない。


 そこへ独特な拍子を取るノックの音がひびく。ドア付近にいた中年の〈狩人かりゅうど〉が音もなくすっと立ち上がる。


たれか?」


 誰何すいかの後、中年の〈狩人かりゅうど〉がドアを開けると、息を切らせた若い〈防人さきもり〉が部屋に入って来るなり一声を放った。


「姫の! セレスティーナさまのグラスに毒が!!」


 一斉に立ち上がる男たち。


「なんと!!」

「王国の警備は何をしていたのだ!!」


 〈もりたみ〉たちは口々にさけび、場は騒然そうぜんとなった。


 そのとき、髪に白い物が混じった初老の〈防人さきもり〉が左手をげ、前に進み出た。


 それを見た〈防人さきもり〉たちは、さすが訓練された者の素早さか、一瞬で落ち着きを取り戻した。


 押し黙った〈防人さきもり〉たちを背に、静かに問う声が、ほかに会話する者がない室内にやけに響いた。


「して、セレスティーナさまのご容態ようだいは?」


 その中で、アウィスはずっと無言だった。


 彼の狙撃銃を握った腕には、必要のない力が入りふるえている。


 口元くちもとは引き締められ、目は凶報きょうほうをもたらした若い〈防人さきもり〉を見つめているが、そのひとみには何がうつっているのか。


「医者は血流けつりゅうにも呼気こきにも問題がないと。しかし、意識が……」


 アウィスは、報告する声を遠くに聞きながら、昼間のパレード警戒中に照準器越しに見た、ライトグリーンのドレスに包まれた微笑ほほえみの記憶がよみがえり、その映像を確かにた気がした。


 どうしようもない無力感に襲われ、こうべれたアウィスは、両手の狙撃銃をさらに握り締めた。


 オウルは、そのアウィスの様子をいつまでも見つめていた。


 いつも陽気なこの男が見せたことのないような、暗い暗いひとみで。

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