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狩人の血脈  作者: SKeLeton
第一章 過去
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王国首都のパレード(塔の最上階)

 パレードを見下ろす、とあるとうの最上階の窓辺まどべ、外部からは見えない奥まった位置にテーブルが設置されている。


 テーブルの上には穀物こくもつ入の麻袋あさぶくろが置かれており、その上には棒状のものがせられている。


 昼日中ひるひなかにも関わらず薄暗い室内だが、目が慣れてくれば、棒状の物体が小銃ライフルの銃身だと判別できる。


 その小銃は王国陸軍一般兵士に支給される、いわゆる全自動フルオート射撃が可能な自動給弾方式ではない。


 昨今の事情から言えば、旧式の部類に入るボルトアクション方式のものだ。つまり、一度射撃する度にレバーを引いて排莢はいきょうし、次弾を手動で送り込む手間がかかる。


 小銃上部のレールには、あまり倍率の高くない光学照準器スコープが装着されている。


 さびひとつ浮かばぬ黒光りする銃身と、つかい手に合わせて研磨けんまされ独特な光沢を放つ銃床じゅうしょうの木材から見て取れるのは、この物体がまごかたなくプロフェッショナルの道具、狙撃銃スナイパーライフルであるということだ。


 外部からの発見を避けるため窓から筒先つつさきを出さないように狙撃銃を構え、照準器を凝視ぎょうししているのは、これといって特徴のない中肉中背の少年である。


 不潔ではないが、特に身だしなみに気をつけているとは思えない。長くも短くもない黒い髪も、粗末なげ茶色の旅装りょそうも、そこいらの行商人ぎょうしょうにんのようにありきたりで、特に印象には残らないものだ。


 しかし、一見細身に見える肉体、二の腕の筋肉は無駄がなく引きまっており、手にした銃の筒先つつさきは固定されたかのように安定している。


 きたえ上げられた精神と肉体が、狙撃銃を無駄なく確実に支えているのだ。対象に向け、流れるようにスムーズに銃口が移動している。


 素人しろうとの目には今にも発砲するかのように見えるが、暴発しないように引き金に指をかけていない。ボルトも引かれておらず、したがって弾薬も射撃できる位置にない。


 薄暗い室内の中、もう一人、背の高い、かたわらの少年よりは年長の少年、オウル・クリスペルがいる。


 窓際だが外部からは陰となり見えない位置で、手にした双眼鏡を構えている。群衆をはじめ、周囲の建物の窓や屋上に目を光らせたままの姿勢で、


「世が世なら、オマエもアチラ側だったろうにな……」


 独り言のように口にするが、かたわらの〈もりたみ〉の少年、アウィス・シルワウィリデは無言で表情の変化もない。


 真剣な表情のまま、眼下を通り過ぎるパレードの車列を見るともなく見送り、周囲の建築物で狙撃手スナイパーが好みそうなポイントを再度チェックしている。


 肩には無駄な力は入っておらずリラックスしている。必要とあらば即座にボルトを引き、射撃に入ることができる状態にある。


 そのとき、独特な拍子を取るノックがした。


 オウルがドアに忍び寄る。


「お師匠ししょうが呼んでます」


 若い女の声を確認してからオウルがドアを開くと、妹弟子のリーゼロッテが音もなく部屋に入りドアを閉じた。


「オウル、お師匠ししょうが呼んでる。お疲れさまです。アウィス兄さま!」

「おいおい。なんでアウィスが兄さまで、俺は呼び捨てなんだヨ。俺のほうが兄弟子だろうが!」


 リーゼロッテの言葉の前半と後半でぜんぜん調子トーンが違っていた。オウルが愚痴ぐちりたくなるのもわからないではない。


「では、リロが?」

「はい。あたしがオウルのわりの観測手みはりです」


 リーゼロッテによると、不穏分子ふおんぶんし潜伏場所アジトが判明し、強襲きょうしゅうすることになったから〈もり〉からも増援ぞうえんを出すのだという。


「そうか。近接戦闘(CQB)ならオウル向きだ」

「うん。お師匠ししょうもそう言ってた」


 昔から、遠距離射撃はアウィスだったが、近接戦闘ならばオウルに一日いちじつちょうがあった。


 ちなみに、リロことリーゼロッテは弓が上手うまい。


 銃器の時代に弓かと思うかもしれないが、音も光も煙も臭いも発しない弓には、弓だけの使いみちがあるというものだ。

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