↑ページトップへ
表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
九龍の華 ―死んだはずの大学生、平安の世で天下を読む―』  作者: あめのひくもり


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

PR
16/21

第十六話 死なせないための戦

第十六話 死なせないための戦


鳳国軍、一万二千。


大亀国艦隊、上陸開始。


海陸国反乱軍、停戦交渉中。


九龍軍先鋒、三千。


数字だけ見れば。


どう考えても。


九龍国側が不利だった。


     ◇


「本隊は?」


華が聞く。


景親が答える。


「明日には一部が到着する」


「全部じゃない?」


「無理だ」


「何人」


「四千」


華は地図を見る。


先鋒三千。


増援四千。


計七千。


鳳国軍だけで一万二千。


さらに大亀国。


上陸兵力は不明。


海陸国軍も。


完全に味方ではない。


「正面からやったら」


華が言う。


「負ける?」


部屋が静かになる。


武将の一人が顔をしかめた。


景親は答えた。


「普通にやればな」


華はその言葉を聞いて。


少しだけ安心した。


強がらない。


この人は。


戦場で。


数字を誤魔化さない。


「じゃあ」


華は言った。


「普通にやらなければいい」


何人かの武将が華を見る。


もう。


誰も笑わない。


少なくとも。


前ほどは。


     ◇


「まず」


華は海陸国軍の位置を指す。


「ここ」


景親が見る。


「停戦交渉中だ」


「味方にできない?」


「無理だろう」


「完全な味方じゃなくていい」


「では」


「動かないでいてもらう」


景親が少し考える。


「鳳国と大亀国に加わらせない」


「はい」


「どうする」


華は言う。


「今まで通り」


「何が」


「本当のことを見せる」


景親の目が動く。


「鳳国は」


華が言う。


「海陸国のために戦ってない」


一つ。


「大亀国も」


二つ。


「九龍国を削りたいだけ」


三つ。


「だから」


「海陸国軍には」


一拍。


「自分たちの国を守るなら、どちらにも付くなって」


景親は腕を組む。


「中立を求める?」


「今だけ」


華は答えた。


「戦争が終わった後」


少し。


「海陸国との関係は」


「やり直せばいい」


景親の眉が動く。


「属国だぞ」


「だから」


華は言う。


「反乱された」


部屋。


静か。


かなり危ない発言だ。


九龍国の支配そのものを。


疑っている。


景親が華を見る。


怒らない。


ただ。


「お前」


「はい」


「それを皇帝の前でも言うか」


華は少し考えた。


「内容によります」


景親。


口元が。


僅かに緩む。


「少しは都を覚えたな」


「命大事なので」


「結構」


     ◇


次に。


華は南。


大亀国軍。


「大亀国は」


景親が言う。


「海から来る」


「海軍強い?」


「六国でも上位」


「九龍国は」


「陸ほどではない」


華は考える。


海。


船。


港。


補給。


上陸。


前世。


歴史。


いくつも。


浮かぶ。


「上陸したら」


「うん」


「船に戻らないと困る?」


景親が華を見る。


「何が言いたい」


「物資」


華は言う。


「全部船から来るでしょ」


「当然だ」


「なら」


指。


海岸。


「船を沈めるんじゃなくて」


一拍。


「陸との間を切る」


「どうやって」


「夜」


華が言う。


「小舟」


「火」


武将の一人が言う。


「火攻めか」


「半分違う」


華は答える。


「船じゃなくて」


「桟橋」


「荷揚げ場」


「倉」


「小舟」


「大型船は残す」


景親。


目。


変わる。


「なぜ」


「帰れるようにするため」


部屋。


少し静か。


「追い詰めたら」


華は言う。


「死ぬまで戦う」


一拍。


「逃げ道を残せば」


「逃げる?」


「少なくとも」


華は少し考える。


「死ぬ以外の選択肢がある」


景親が。


長く。


華を見る。


「お前は」


「はい」


「敵を殺したいのか」


華の目が。


少し下がる。


「殺したくないです」


「でも」


「必要なら」


一拍。


「殺す」


華は答えた。


「ただ」


「うん」


「必要じゃないのに殺すのは」


華は言う。


「嫌です」


景親は。


何も言わなかった。


ただ。


「分かった」


一言。


     ◇


最後。


鳳国。


一万二千。


陸軍。


強い。


正面。


これが。


一番厄介。


「こっちは」


華が地図を見る。


「補給路切るだけじゃ止まらない?」


「鳳国軍は山岳戦に強い」


「兵站も」


「固い」


「なら」


華は考える。


「戦う場所を選ぶ」


景親が頷く。


「どこだ」


華は。


地図。


川。


湿地。


細い道。


「ここ」


「平野ではないな」


「狭い」


「うむ」


「でも」


華は言う。


「海陸国側に抜けるには便利」


景親。


理解する。


「誘う?」


「はい」


「囮は」


華が黙る。


景親が見る。


「まさか」


華が。


少し笑う。


「俺」


五条が。


即座に。


「却下」


部屋中。


一瞬。


静か。


華が五条を見る。


「まだ全部言ってない」


「言わなくても分かる」


「でも」


「却下」


「軍監」


「護衛対象」


「勅命」


「知ったことか」


景親が。


珍しく。


笑った。


「五条」


「何だ」


「今回は私も同意だ」


華が。


不満そう。


「何で」


景親が答える。


「敵が」


一拍。


「お前を殺したがっているからだ」


華の顔。


変わる。


「だから囮になるんじゃ」


「逆だ」


景親は言う。


「お前を囮にした瞬間」


一拍。


「敵が何をするか読めなくなる」


華は黙る。


確かに。


鳳国。


大亀国。


海陸国。


さらに。


平司。


皇宮内部。


華を狙う者は。


多い。


しかも。


理由が違う。


「囮は」


景親が言う。


「私がやる」


華が見る。


「大将軍が?」


「ああ」


「危険」


「お前に言われたくない」


また。


これだ。


     ◇


その日の午後。


海陸国軍から。


使者。


「停戦を継続したい」


景親が聞く。


「条件は」


使者が答える。


「鳳国・大亀国いずれにも与しない」


華の目が。


少し。


明るくなる。


「その代わり」


使者。


続ける。


「九龍国軍も」


一拍。


「海陸国民へ攻撃を加えないこと」


景親が。


華を見る。


華も。


景親を見る。


「いいんじゃない?」


武将の一人。


「勝手な」


華が言う。


「民衆を攻撃する予定あった?」


男。


止まる。


「ないなら」


華は言う。


「問題ない」


景親。


少し笑う。


「受ける」


使者。


頭を下げる。


海陸国軍。


少なくとも。


今。


敵ではなくなった。


     ◇


夜。


南岸。


大亀国軍。


上陸。


兵。


三千。


さらに。


後続。


船。


多数。


九龍国側。


小舟。


十数隻。


闇。


火。


だが。


大型船へは。


行かない。


狙うのは。


荷揚げ用の小舟。


桟橋。


陸上倉。


松明。


一斉。


火。


「敵襲!」


「九龍軍!」


「船を守れ!」


混乱。


だが。


船は。


無傷。


上陸兵。


陸。


残される。


食料。


少ない。


矢。


少ない。


翌朝。


大亀国軍は。


海岸線から。


動けなくなった。


「追撃しますか」


武将が景親へ聞く。


景親は。


華を見る。


華は。


首を振る。


「しない」


景親も。


「しない」


「しかし」


「船は残した」


景親が言う。


「帰るなら」


一拍。


「帰らせろ」


大亀国軍。


一部。


その日のうちに。


船へ戻った。


     ◇


鳳国軍。


一万二千。


動く。


九龍軍。


景親。


本隊。


見せる。


兵。


少ない。


逃げる。


ように。


見せる。


鳳国軍。


追う。


一日。


二日。


徐々に。


道。


狭く。


湿地。


川。


そして。


夜。


雨。


「来た」


華が言う。


遠く。


鳳国軍の火。


景親。


地図。


「この位置なら」


「はい」


華。


頷く。


「明日の朝」


一拍。


「渡河中」


景親が。


立つ。


「叩く」


華は。


少し。


黙る。


「どうした」


「人」


「何」


「死にますよね」


景親が。


華を見る。


「死ぬ」


即答。


「どれくらい」


「分からん」


「でも」


「華」


景親の声。


重い。


「ここで止めなければ」


一拍。


「もっと死ぬ」


華。


黙る。


それも。


分かる。


華は。


目を閉じる。


「分かりました」


     ◇


翌朝。


鳳国軍。


渡河開始。


前衛。


千。


中軍。


続く。


後軍。


まだ。


向こう岸。


合図。


九龍軍。


矢。


上から。


一斉。


鳳国軍。


混乱。


川。


足。


取られる。


さらに。


上流。


小さな堰。


壊す。


水量。


増える。


馬。


倒れる。


「今!」


景親が叫ぶ。


九龍軍。


突撃。


だが。


華の案。


一つ。


景親が。


最後に。


加えていた。


敵の退路。


残す。


片側。


完全包囲。


しない。


その結果。


鳳国軍。


前衛。


崩れた。


だが。


全滅ではない。


退く。


戻る。


逃げる。


景親は。


追撃。


途中で。


止めた。


「追えば勝てます!」


武将。


叫ぶ。


景親。


首を振る。


「十分だ」


「しかし」


「兵を戻せ」


九龍軍。


追わない。


鳳国軍。


後退。


死者。


出た。


でも。


想定より。


少ない。


華は。


川岸。


立っていた。


水。


赤い。


「華」


五条。


横。


「見るな」


「見る」


「何で」


華は。


赤い水。


見る。


「俺が」


一拍。


「考えたから」


五条。


何も言わない。


「地図の上だと」


華は言う。


「簡単だった」


橋。


壊す。


道。


止める。


補給。


切る。


敵。


誘う。


「でも」


水。


赤い。


「人が死ぬ」


五条が。


静かに言う。


「覚えておけ」


華。


「うん」


「忘れた時」


一拍。


「お前は本当に危なくなる」


華。


ゆっくり。


頷いた。


     ◇


その日の夕方。


英は。


軍医所で。


ほとんど休んでいなかった。


敵。


味方。


区別なく。


運ばれる。


英。


手。


止まらない。


「次」


すみれ。


「はい」


鳳国兵。


腹。


深い。


九龍国軍医。


少し。


躊躇。


「敵兵です」


英が顔を上げる。


「だから?」


軍医。


黙る。


「患者です」


英は言う。


「そこへ」


「でも」


「次の患者が死にます」


軍医。


すぐ。


動く。


華は。


入口。


それを見る。


「先生」


「華様」


「何かできる?」


「邪魔をしないでください」


「分かった」


華は。


即答。


英が。


少しだけ。


華を見る。


「……水」


「何?」


「煮沸した水が足りません」


華。


振り返る。


「五条!」


「何だ」


「人集めて水沸かす!」


「俺は護衛だ」


「今は人手!」


五条。


少し。


ため息。


「分かった」


華も。


走る。


負傷兵。


泥。


血。


熱。


傷。


死。


前世。


華。


知っている。


完全ではない。


医学部でもない。


でも。


衛生。


煮沸。


手洗い。


隔離。


水。


記録。


できること。


ある。


華は。


兵たちへ。


「汚れた布と清潔な布分けて!」


「水は!」


「一度沸かして!」


「傷口触る前に手を洗う!」


最初。


誰も。


まともに聞かない。


だから。


華。


言い方。


変える。


「やらない人」


一拍。


「大将軍に報告します」


全員。


動いた。


五条が。


華を見る。


「卑怯」


「権力は使える時に使う」


「都に染まったな」


「成長した」


     ◇


深夜。


英。


まだ。


手当て。


華。


横。


座っている。


「華様」


「何」


「寝てください」


「先生も」


「私は医者です」


「俺は軍監」


「便利ですね」


「先生も」


二人。


少し。


笑う。


英が。


手を動かしながら言う。


「今日」


「うん」


「華様の策で」


華の顔。


少し。


硬くなる。


「人が死んだ」


英の手。


止まる。


「はい」


「いっぱい」


「はい」


「俺」


一拍。


「正しかったのかな」


英は。


すぐに答えない。


患者の布。


直す。


「分かりません」


華が。


英を見る。


「先生でも?」


「医者でも」


英。


答える。


「分からないことはあります」


少し。


「ただ」


華を見る。


「今日」


一拍。


「ここへ運ばれた九龍国兵は」


「うん」


「予想より少なかった」


華。


黙る。


「鳳国兵も」


英。


続ける。


「完全包囲されていたら」


一拍。


「もっと多かったでしょう」


華の目。


少し。


下がる。


「だから正しい?」


「違います」


英が答える。


「正しかったことにして」


一拍。


「忘れないでください」


華が。


英を見る。


「何を」


「ここに」


英は。


周囲。


負傷者。


見る。


「人がいたことを」


華は。


長く。


黙った。


「うん」


それだけ。


     ◇


翌朝。


急報。


鳳国軍。


後退。


大亀国軍。


上陸中止。


海陸国反乱軍。


停戦継続。


九龍軍。


勝利。


少なくとも。


戦況上は。


景親。


地図。


見る。


「第一段階は終わった」


華が。


「第一?」


「戦争が終わったとは言っていない」


華。


嫌な顔。


「まだ?」


「当然だ」


その時。


伝令。


「大将軍!」


「何だ」


「東昇国より」


部屋。


空気。


変わる。


「使節団!」


華が。


顔を上げる。


「目的は」


伝令。


少し。


戸惑う。


「停戦調停ではございません」


「では」


「橘華様との」


全員。


華を見る。


「面会を求めております」


華。


固まる。


「俺?」


景親。


華を見る。


「六国の頭脳が」


一拍。


「お前に興味を持ったようだな」


華。


本気で。


嫌そうな顔。


「何で」


五条。


後ろから。


「自覚がないから厄介なんだ」


英も。


軍医所の入口。


「同感です」


華。


二人を見る。


「何で先生まで!」


だが。


華は。


まだ知らない。


東昇国が。


華に会いたい理由。


その中には。


橘優希。


AI。


人格情報。


そして。


この世界が。


なぜ。


平安の姿をしているのか。


その答えに。


近づくものが。


含まれていた。


第十六話 死なせないための戦 了

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。