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そこで明らかにマクソンスに感化されている二人の男たち。
「ぼくもキャンディスお姉様を守りたいです。マクソンスお兄様、もっとぼくをきたえてください……!」
「ああ、いいぜ! お前は筋がいいから絶対に強くなるぞ!」
「アルチュールを巻き込まないでくださいませ!」
キャンディスが止めてもアルチュールはすっかりマクソンスのやる気に感化されてしまっている。
アルチュールの可愛らしい顔に傷がついた日には気絶しそうになってしまった。
それからアルチュールが剣を握るのを止めようと奮闘するものの、彼は『キャンディスを守る』『強くなる』と言ってきかない。
ジャンヌによればキャンディスが大怪我してしまったのに、何もできなかったことが許せないそうだ。
アルチュールは『キャンディスお姉様を守れるように強くなるんです』と言って聞かず、毎日マクソンスに剣を教わっている。
「リュカお兄様、何とか言ってくださいませ!」
「任せて! 二人が怪我してもいいように傷薬はちゃんと常備しているから」
「……っ、違いますってば!」
リュカは自分で調合したという傷薬を嬉しそうにキャンディスに見せる。
二人に手当てする機会ができて嬉しいようだが、たまに剣の訓練に巻き込まれてぐったりしている姿を目にする。
怪我が治ったらキャンディスもマクソンスにしつこいほど訓練に誘われるのかと思うと今から憂鬱だ。
怪我が早く治ってほしいような欲しくないような複雑な気分だ。
キャンディスが騒がしい部屋に苛立っていると、エヴァとローズがいつものように紅茶とお菓子を運んでくる。
ホワイト宮殿のシェフたちもマクソンスとリュカが毎日のように入り浸るため大変そうだった。
それを伝えるとブルー宮殿とレッド宮殿のシェフたちから差し入れが届くようになる。
シェフたち同士で互いにいい刺激をもらっているようだ。
(くっ……なんなのよ、この状況は! こんなことになるなんて聞いていないわよっ)
この一カ月はとても騒がしい。
兄弟たちと過ごすことにもすっかりと慣れてしまった。
エヴァとローズ、ジャンヌとアルチュールと過ごしていた静かな日々が懐かしく思えた。
それからマオとタオが来たおかげで仕事も分散できているようだ。
エヴァとローズと双子同士ということもあり意気投合している。
何より双子同士だからか息ぴったりだ。
ミュリエルは隙あらばキャンディスにベッタリだった。
あまりにもぴったりとくっついていて仕事にならないため、ジャンヌに指導を受けている最中だ。
キャンディスの侍女というより、今はアルチュールの遊び相手になりつつあるらしい。
仕事の覚えもよく懸命に働く姿を見てジャンヌたちはメロメロだ。
何より髪をとかして、綺麗に整えるとますますアルチュールに似ていて人形のように可愛らしい。
喋らないので意思疎通をするのに大変ではあるが、最近は慣れてきた。
アルチュールに似ているせいなのか、キャンディスもミュリエルを受け入れるのが早かった。
(妹がいるとこんな感じなのかしら……)
妹、という言葉に忘れかけていたルイーズの存在を思い出す。
(あんなのが妹じゃなくてミュリエルが妹だったら、わたくしが可愛がってあげるのに……!)
体も細く、皆から食べ物を与えられているそうで試しにキャンディスもクッキーを上げてみると目をキラキラ輝かせてパクパクと食べる。
キャンディスの前ではニコニコしているのに、他の兄弟たちの前だと無表情なのもなんだか特別感があって気分がいいではないか。
それからモンファもキャンディスへの忠誠心が凄まじい。
彼女は『キャンディス皇女様をお守りするため』と、以前に増して訓練に打ち込み、護衛としての腕を磨いている。
侵入者や不審者にも容赦がなく、つい先日は商人になりすましてキャンディスを誘拐しようとした男はボコボコにされて一瞬で捕らえられてから牢に引き摺られていった。
その時のモンファの顔は恐ろしかった。
タオとマオも怪我をするまではかなりの実力者だったようで本当に隙がない。
侍女というよりはほぼ護衛だ。
ユーゴも「キャンディス皇女様から目が離せなかったので、やっと安心できます」と嫌味を言いつつも嬉しそうにしていた。
そんな時だった。
「失礼いたします。キャンディス皇女様、ジョルジュ殿下がいらしていますが……」
「…………!」
「お見舞いに、とのことですが……」
キャンディスはジョルジュの名前を聞いて、怪我をしてから届いていた手紙の数々を思い出していた。
(心配してくれていたんでしょうけど……怪我でうまく字が書けないからエヴァとローズに代筆を頼んで送り返してもらっていたのに)




