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ヨネシゲ夢想 〜君が描いた空想の果てで〜  作者: 八王亭楽太郎
第八部【チャヅケ川の戦い】
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第427話 決戦、チャヅケ川の戦い 〜麻呂〜

 チャヅケ川を流れる巨大桃。

 そのままサラの前を通り過ぎるが――これまた巨大な手が天から伸びてくると、その桃をワシ掴み。拾い上げた。


 サラが天を見上げると、そこには巨大桃を握る規格外の巨人――ダイダラボッチに変身したライス領主『マッチャン・ボンレス』の姿があった。


 マッチャンは迷うことなく、手刀で巨大桃を真二つに割る。


 すると――


 なんということでしょう! 桃の中から白塗り顔の大きな赤ん坊が現れたではありませんか!


「ウホギャアーッ! ウホギャアーッ!」


 その顔は――中年マロウータンと瓜二つ、だ。


 マッチャンはその赤ん坊を両手で持ち上げなが命名する。


「お前の名前はマロ太郎、マロ太郎だ!」


 マロ太郎、爆誕である。


 直後、どこからともなく出現した()()()()()がサラに迫る。


 それは、マロウータンと同じ顔を持つ、『犬』『猿』『雉』の群れだった!


「「「きびだんごプリーズ! ワンッ!」」」

「「「きびだんごプリーズ! キーッ!」」」

「「「きびだんごプリーズ! ケーンッ!」」」


 マロ顔の犬猿雉軍団がサラにきびだんごを要求。しかし――


「やかましいっ! こっち来んなっ!」


 サラは火炎を放射。

 犬猿雉軍団――幻影を一瞬で消滅させた。


 麻呂芝居(マロプレイ)『桃から生まれたマロ太郎』──不快感の極みだ。


 一連の様子を見つめていたサラが怒りで身体を震わせる。

 そして鋭い眼差しを向ける先にはマロ太郎――ではなく、マロウータンの姿があった。


「あなた……私を馬鹿にするのもいい加減にしなさい……」


「ウホッ。馬鹿にしておらんぞよ。儂はいつじゃって真面目ぞよ♡」


 マロウータンは黒塗りの歯をニヤリと剥き出した。


「どこが真面目なのよっ! ふざけんじゃねえっ!」

 

 サラは激怒。

 空想杖を構えると、白塗り顔目掛けて光線を発射する。


「食らいなさいっ!」


 だがしかし――


「ほよっ! そーれっ! ありゃっ!」


 マロウータンは翼を羽ばたかせて軽やかに交わす。


 どこか人を小馬鹿にしたような動作にサラの怒りが募っていく。


 そんな彼女を見つめながらマロウータンが扇で口元を隠す。


(ウホッ。……やはりな。あの小娘、精神面はまだまだ未熟のようじゃのう……)


 続けて、白塗り顔はバレリーナの如く高速で身体を回転させる。

 

「麻呂真奥義『白鶴舞踊』! ウホーッ♪ ウホホーッ♪ ウホーッ♪ ……――」


 白い翼と扇を広げながら舞踊るマロウータン。案の定、サラが怒り狂う。


「どこまで私を馬鹿にすれば気が済むのよ!」


 サラは空想杖を白塗り顔に向けると、渾身の光線を連射させる。


 しかし――当たらない。


 舞踊るマロウータンはサラの光線を見切っているかのように、ひらりひらりと躱してゆく。


「どうして……当たらないのよ……!」


 サラの攻撃命中率は百発百中と言っても過言ではないほど正確だ。ところが目の前で踊る白塗り顔には一発も当たらない。

 果して、今日までこのような状況に陥ったことがあっただろうか?


 ――屈辱的だ。


 しかし、悔しさと怒りが増大する程、攻撃が、標的から遠ざかってゆく。


 気付くとサラは息を切らしていた。

 神様(サミュエル)から強大な力を授かったが、その分体力と想素の消費量も大きい。


(この力……私の身体にはキャパオーバーだわ……)


 すると、攻撃を停止させているサラにマロウータンが指摘する。


「ウホッ。一発も当てることができんとは、随分と心が乱されておるようじゃのう?」


「うるさい……」


「図星かえ? 儂の挑発に乗ってるようでは、そなたらの野望達成は程遠いぞよ。この世は、そなたらが思っている程甘くはないでおじゃる」


 サラが鼻で笑う。


「フッ……確かに甘くない世界ね。厳しすぎる程に、理不尽極まりない世界だわ。……だからブチ壊して創り変えるのよ。理想な世界に……」


「そなたは……何故それほどまでにこの世界を憎むのじゃ?」


「それは、あのオヤジ……ヨネシゲがこの世界を改竄し、()()()から幸せを奪ったからよ」


「……聞かせよ、そなたの過去を」


「はあ!?」


 突然のマロウータンのセリフにサラが拍子抜けした声を漏らす。


 白塗り顔は構わず言葉を続ける。


「儂は、何人(なんぴと)であっても不幸になることなど望んでおらぬ。もし、そなたが不幸な人生を歩み続けているとしたら、決して見過ごせない事実。この世界を正す為にも、儂は真実を知りたいのじゃ」


「あなたに話したところで何になるのよ? 私の幸せは……もう二度と戻って来ない……」


「それは大きな間違いじゃ」


「何ですって?」


 睨むサラに白塗り顔が真顔で言う。


「少なくとも、今のそなたは自ら不幸な道を歩んでおる。なのに……罪なき者たちまで巻き込んで世界を創り変えるなど、逆恨みも良いところじゃ」 


 その一言にサラが怒鳴る。


「あなたに何がわかるっていうの!? 私の過去も知らなずに勝手なことを言わないで!」


「だから知りたいのじゃ。そなたの過去を」


「……っ」


 金縁丸眼鏡から覗かせる真剣な眼差し。サラはその視線を避けるようにして俯き、唇を噛んだ。



つづく……

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