第427話 決戦、チャヅケ川の戦い 〜麻呂〜
チャヅケ川を流れる巨大桃。
そのままサラの前を通り過ぎるが――これまた巨大な手が天から伸びてくると、その桃をワシ掴み。拾い上げた。
サラが天を見上げると、そこには巨大桃を握る規格外の巨人――ダイダラボッチに変身したライス領主『マッチャン・ボンレス』の姿があった。
マッチャンは迷うことなく、手刀で巨大桃を真二つに割る。
すると――
なんということでしょう! 桃の中から白塗り顔の大きな赤ん坊が現れたではありませんか!
「ウホギャアーッ! ウホギャアーッ!」
その顔は――中年マロウータンと瓜二つ、だ。
マッチャンはその赤ん坊を両手で持ち上げなが命名する。
「お前の名前はマロ太郎、マロ太郎だ!」
マロ太郎、爆誕である。
直後、どこからともなく出現したとある軍団がサラに迫る。
それは、マロウータンと同じ顔を持つ、『犬』『猿』『雉』の群れだった!
「「「きびだんごプリーズ! ワンッ!」」」
「「「きびだんごプリーズ! キーッ!」」」
「「「きびだんごプリーズ! ケーンッ!」」」
マロ顔の犬猿雉軍団がサラにきびだんごを要求。しかし――
「やかましいっ! こっち来んなっ!」
サラは火炎を放射。
犬猿雉軍団――幻影を一瞬で消滅させた。
麻呂芝居『桃から生まれたマロ太郎』──不快感の極みだ。
一連の様子を見つめていたサラが怒りで身体を震わせる。
そして鋭い眼差しを向ける先にはマロ太郎――ではなく、マロウータンの姿があった。
「あなた……私を馬鹿にするのもいい加減にしなさい……」
「ウホッ。馬鹿にしておらんぞよ。儂はいつじゃって真面目ぞよ♡」
マロウータンは黒塗りの歯をニヤリと剥き出した。
「どこが真面目なのよっ! ふざけんじゃねえっ!」
サラは激怒。
空想杖を構えると、白塗り顔目掛けて光線を発射する。
「食らいなさいっ!」
だがしかし――
「ほよっ! そーれっ! ありゃっ!」
マロウータンは翼を羽ばたかせて軽やかに交わす。
どこか人を小馬鹿にしたような動作にサラの怒りが募っていく。
そんな彼女を見つめながらマロウータンが扇で口元を隠す。
(ウホッ。……やはりな。あの小娘、精神面はまだまだ未熟のようじゃのう……)
続けて、白塗り顔はバレリーナの如く高速で身体を回転させる。
「麻呂真奥義『白鶴舞踊』! ウホーッ♪ ウホホーッ♪ ウホーッ♪ ……――」
白い翼と扇を広げながら舞踊るマロウータン。案の定、サラが怒り狂う。
「どこまで私を馬鹿にすれば気が済むのよ!」
サラは空想杖を白塗り顔に向けると、渾身の光線を連射させる。
しかし――当たらない。
舞踊るマロウータンはサラの光線を見切っているかのように、ひらりひらりと躱してゆく。
「どうして……当たらないのよ……!」
サラの攻撃命中率は百発百中と言っても過言ではないほど正確だ。ところが目の前で踊る白塗り顔には一発も当たらない。
果して、今日までこのような状況に陥ったことがあっただろうか?
――屈辱的だ。
しかし、悔しさと怒りが増大する程、攻撃が、標的から遠ざかってゆく。
気付くとサラは息を切らしていた。
神様から強大な力を授かったが、その分体力と想素の消費量も大きい。
(この力……私の身体にはキャパオーバーだわ……)
すると、攻撃を停止させているサラにマロウータンが指摘する。
「ウホッ。一発も当てることができんとは、随分と心が乱されておるようじゃのう?」
「うるさい……」
「図星かえ? 儂の挑発に乗ってるようでは、そなたらの野望達成は程遠いぞよ。この世は、そなたらが思っている程甘くはないでおじゃる」
サラが鼻で笑う。
「フッ……確かに甘くない世界ね。厳しすぎる程に、理不尽極まりない世界だわ。……だからブチ壊して創り変えるのよ。理想な世界に……」
「そなたは……何故それほどまでにこの世界を憎むのじゃ?」
「それは、あのオヤジ……ヨネシゲがこの世界を改竄し、私たちから幸せを奪ったからよ」
「……聞かせよ、そなたの過去を」
「はあ!?」
突然のマロウータンのセリフにサラが拍子抜けした声を漏らす。
白塗り顔は構わず言葉を続ける。
「儂は、何人であっても不幸になることなど望んでおらぬ。もし、そなたが不幸な人生を歩み続けているとしたら、決して見過ごせない事実。この世界を正す為にも、儂は真実を知りたいのじゃ」
「あなたに話したところで何になるのよ? 私の幸せは……もう二度と戻って来ない……」
「それは大きな間違いじゃ」
「何ですって?」
睨むサラに白塗り顔が真顔で言う。
「少なくとも、今のそなたは自ら不幸な道を歩んでおる。なのに……罪なき者たちまで巻き込んで世界を創り変えるなど、逆恨みも良いところじゃ」
その一言にサラが怒鳴る。
「あなたに何がわかるっていうの!? 私の過去も知らなずに勝手なことを言わないで!」
「だから知りたいのじゃ。そなたの過去を」
「……っ」
金縁丸眼鏡から覗かせる真剣な眼差し。サラはその視線を避けるようにして俯き、唇を噛んだ。
つづく……




