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ヨネシゲ夢想 〜君が描いた空想の果てで〜  作者: 八王亭楽太郎
第八部【チャヅケ川の戦い】
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第424話 決戦、チャヅケ川の戦い 〜激戦〜

 対峙する青鬼(ヨネシゲ)とダミアン。

 その場に居合わせたドランカドやケンザン、マッスルたち別働隊に緊張が走る。


 ダミアンは青鬼を挑発するように言葉を続ける。


「フッフッフッ。また会えて嬉しいぜヨネさん。鬼のコスプレも似合ってるじゃんか。でも少し腹が弛んだのが玉に瑕だな」


「気安く『ヨネさん』と呼ぶな。それとこれはコスプレじゃねえ。腹回りは寧ろ引き締まった方だ。適当なことばかり言ってるんじゃねえよ」


「ハッハッハッ! まあそう怒るなってよ、ヨネさん。俺はずっとこの日を心待ちにしてたんだからさ」


「心待ちだと?」


「ああそうだぜ。この圧倒的な力でアンタをやる日をどれほど待ち望んだことか。今の俺ならアンタを瞬殺できる。早くヨネさんの泣きっ面が見たいなぁ! ブヒャヒャヒャッ!」


 驕り高ぶるのダミアンに青鬼がため息を漏らす。


「相変わらずの慢心だな。お前、先日俺にボコられたばかりだろう?」


 青鬼の一言にダミアンの表情が急変。怒り狂う肉食獣の如く顔が歪む。


「あぁ? 嫌なこと思い出させるなよ。これだから空気の読めねえ角刈りジジイは大嫌いなんだよ……今すぐ焼き殺してやるよおおおおおおおっ!!」 


「いかれてやがるぜ……」


 殺人鬼は怒りの咆哮を轟かせながら、底しれぬエネルギーを宿した赤いオーラを放つ。その肌を焼くようなジリジリとした熱が別働隊の兵士たちを恐怖させる。

 一方の青鬼は表情を一つも変えず、静かにダミアンを見つめていた。

 するとドランカドの心配そうな声が青鬼の耳に届く。


「ヨネさん……ヤバイっすよ……この間とは桁違いのパワーを感じるッスよ……」


「問題ない」


 青鬼は真四角野郎に一言だけそう告げると、次なる指示を出す。


「ドランカド、ここは俺に任せてくれ。お前たちは本隊と合流し、改革戦士団を制圧してくれ」


「了解しました!」


 ドランカドは敬礼すると、ケンザンら別働隊を引き連れて、その場を後にした。


 同輩たちを見届けた青鬼がダミアンに向き直る。


「ダミアン、お前にはここで消えてもらう。覚悟しろ」


「ブヒャヒャヒャッ! 何ほざいてやがる?! 消えるのはアンタの方だ! 灰すら残さずに焼き尽くしてやるよっ!」


「来い」


 青鬼と殺人鬼、戦いの火蓋が切られた。




 ――同じ頃、チャヅケ川各所では激戦が繰り広げられていた。


 マロウータンが甲高い声を響かせる。


麻呂芝居(マロプレイ)『鶴の恩返し』! ウホッ♡ 覗いてはいけませぬ――」


 突如、マロウータンとサラの間に現れた巨大な(ふすま)。映し出される白塗り顔のシルエット。


「何が『覗いてはいけませぬ』よ! 寒気がするわ!」


 サラは問答無用で白塗り顔を隠す巨大襖を空想術で焼き払う。


 すると――。


「「「「「「グワグワグワーッ!」」」」」」


「!!」


 焼き払われた襖の向こうから人面鶴――マロウータンの顔を持つ何百羽もの鶴型想獣がサラに襲い掛かる。


 しかし――


「うざいっ! 目障りよっ!」


 サラは空想杖を一振り。

 強烈な衝撃波が鶴型想獣を一瞬で粉砕する。


 ところが、サラの背後に迫る白い翼。


「約束を守れぬ小娘はお仕置きじゃ!」


「……っ! いつの間に!?」


「麻呂真奥義『鶴神の翼』!」


 白塗り顔は腕に生えた翼をサラに向かって打ち付ける。だがサラは瞬時にバリアを発動。鉄壁の守りでマロウータンの翼を弾き返す。


「ぬう……小娘がぁっ!」


「少しはできるみたいね。でもその程度じゃ私には勝てないよ」


「生意気な……」


「ウフフ、悔しかったら私を本気にさせてみなさい」


「臨むところじゃっ!」


 再び鶴親父と魔女っ子が激突する。




 ――こちらでも猛者同士が交戦。


「オラオラオラオラッ!」


 青炎纏う豹人間――ノアが強烈なパンチや回し蹴りを連続で繰り出す。

 対するソードは余裕の笑みを浮かべながらノアの攻撃を軽やかに交わす。


「どうした? 先程から空振りばかりではないか? 気合だけじゃ俺を倒せないぞ」


「黙れっ! 余裕でいられるのも今のうちだ――」


 次の瞬間。

 ノアは自慢の脚力を活かして飛翔、ソードの頭上高くまで飛び跳ねる。間髪入れずに踵を振り上げ急降下。ソードに渾身の一撃を繰り出した。


 しかし、振り落とされたノアの踵はソードの腕によって受け止められてしまう。


「クソッ!」


「そんな攻撃で俺を倒せると思ったか?」


 直後。

 ソードは懐からペーパーナイフを取り出すと、目にも止まらぬ速さでノアに向かって投擲。

 ノアは咄嗟に身を翻しながらペーパーナイフを回避。ソードと間合いをとる。


「フフッ、よく回避できたな。だが……これならどうだ?」


「っ!!」


 電光石火。

 ソードが一気にノアとの間合いを詰める。そのあまりもの速さにノアの身体は反応しきれず。ソードの手から繰り出された空気の刃がノアの右腕を斬りつける。


「うっ!」


「フフッ、まだまだ!」


 ソードは舞踊るようにして右手左手を交互に振り抜く。その度に空気の刃がノアの身体を切り刻む。


 たまらず膝を落とすノア。

 その身体からは血が滴り落ちる。

 

 ソードは冷たい眼差しでノアを見下ろす。


「――確かにお前は強者だ。一昔の俺であれば、今頃お前に打ち負かされていることだろう。だが……俺も遊んで過ごしていた訳ではない。南都での敗戦後は俺なりに特訓を積み重ねてきた。()からは強大な力を授かったが……使うまでもない。己の力のみで十分だ」


「要するに……俺は手加減されているって訳だな? 舐められたもんだぜ……」


 ノアは悔しそうに歯を剥き出す。

 一方のソードは不敵に口角を上げる。


「勘違いするな。俺は決して手加減などしていない。いつでも本気だ。借り物の力に頼る必要がないと言っているだけだ」


「そんな事言って……後で後悔しても知らねえぞ……」


「後悔することはない。何故ならば――お前はもう死ぬのだからな!」


「!!」


 刹那。

 ソードは隠し持っていたペーパーナイフを目にも止まらぬ速さで投げつける。青紫の光を帯びたペーパーナイフがノアの胸元に迫っていく――


 ところが、途中でペーパーナイフの軌道が変わる。

 刃と刃がぶつかり合う金属音が響き渡ったと同時にペーパーナイフが宙を舞った。


 ノアとソードの視線が一点に集まる。

 そこには──槍を構える、赤い戦装束に身を包んだ細身の黒髪マッスルの姿があった。


 ノアがその名を叫ぶ。


「ケンザンっ!」


「立て。何へばってやがる? お前を殺るのはこの俺だ!」


 その青年は――リゲル家臣『ケンザン・ブラント』。過去にノアと何度も激戦を演じた宿敵だ。

 だが、今は共通の敵を倒す為に戦う――同志である。


「フッ……言われなくてもわかっている。――助かったぞ」


「……礼なら無用。貸し借りは無しだ。それよりも――野郎どもっ!」


「「「「「「マッスルゥゥゥゥゥッ!!」」」」」」


 未だ立てずにいるノアの前に筋肉の防護壁――マッスル軍団が出現。


「ノア様、これは回復薬でマッスル。飲めば傷口がたちまち塞がり、筋肉も30パーセント増大するでマッスル!」


「回復薬、か……」


 ノアがマッスルから受け取った小瓶をじっと見つめていると、ケンザンの怒号が飛んでくる。


「ノアっ! 何ボケっとしてやがる!? とっとと回復薬を飲みやがれっ!」


「少々気が引けるが……背に腹は替えられぬ、か……」


 ノアは渋々小瓶に口をつける。


 直後、ノアの身体に異変が――


「おお……傷口が瞬く間に塞がっていくぞ。それに……この漲る力……!」


 気がつくと、そこにはマッスル豹人間が仁王立ちしていた。


「フフッ。そうでなくては面白くない。さあ、殺戮ショーを始めようではないか! ――イッツ・ショータイム!」


 ソードは好戦的笑みを見せながら両腕を大きく広げた。




 ――二体の巨大想獣『オメガ』と『アビス』相手に劣勢を強いられていた規格外の巨人『マッチャン・ボンレス』。しかし、サンディ家重臣『ヒョーガ』の参戦により、瞬く間に決着がついた。


 阿修羅化したヒョーガが六本の腕に持たれた刀から凍てつく斬撃を繰り出す。


「これでお終いだ」


「「ギャアアアアアアアッ!!」」


 オメガとアビスは不気味な断末魔を轟かせながら消滅した。


 その様子を見守っていたダイダラボッチ――マッチャンが感嘆の声を漏らす。


「流石、ヒョーガ殿。あの二体を一瞬で仕留めてしまうとは……」


「大したことではありませんよ。それよりも――」


 ヒョーガは周囲を見渡す。

 

(ノアとケンザンはソードと対峙、クボウ閣下はサラと、シュリーヴ()()はノーランの相手か……)


 ヒョーガは瞬時に思考を巡らせる。


「――ボンレス卿。至急、クボウ閣下の援護に向かっていただきたい」


「了解した!」


 マッチャンは地を響かせながらマロウータンの元へと急行する。


「さて、私は――」


 ヒョーガは上空を見上げる。

 そこには先程から幾度もなく激しい閃光と衝撃が走っていた。


「どうやら、旦那様と互角にやり合う相手がいるようだな――」


 ヒョーガは地を蹴り飛翔。主君の援護へと向かった。




 ――各所で激戦が繰り広げられる中、睨み合う両者の姿があった。


 全身からはヘドロを撒き散らすサングラスの中年男は――ウィルダネスの具現草王『ノーラン・ファイター』。


 対する二人組のオヤジは、保安局長官『ルドラ・シュリーヴ』とその息子『ドランカド・シュリーヴ』――シュリーヴ親子だ。


 今、もう一つの決戦が膜を開けようとしていた。


「「ウィルダネスの悲劇に終止符を打つ!」」




つづく……

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