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第1話 混血の少年

 ある日の朝、銀髪の少年は違和感を感じ、目を覚ます。 


 「あーあ……またやっちゃったよ 」


 銀髪の少年ジルクニスは深々とため息を吐く

 もうなんどこの状態を経験しただろうか。

 少年の小さな角が壁に突き刺さっていたのだ。

 それも前かがみの状態で。


 少年は普通に寝ることができない。

 少年は普通ではないからだ。

 彼の背中には翼があり、尻からは尻尾が生えている。

 体の一部には鱗や羽毛が生えてもいる。


 そんな彼は寝方を工夫しないと眠る事ができなかったのである。 


 仰向けは尻尾が邪魔で寝れない。

 太い尻尾があるせいで、下半身が持ち上がった寝方になってしまうのだ。

 

 横向きは背中の翼を傷めてしまう。

 翼にかかる負担が大きく、その体制で寝てしまうと、付け根が酷く痛むのだ。

 あれだけはもう勘弁と思う痛みである。


 とすると寝る時の体勢は自然とうつ伏せに近くなる。

 そしてうつ伏せに寝ると、たまに角が壁に刺さるのだ。


 「これは抜けないかなぁ 」


 ━コンコン━

 

 そんな時ドアがノックされた。


 「ジーク起きてるかい?……て、ワハハハハ、なんだまた刺さっているのか、ハハハ 」


 入ってきたのは金色の髪を後ろで縛り、青い目をした、ジルクニスより少し年上の魔人族である。

 その顔立ちは整っているが、知らない人が見れば怖いぐらい冷たい印象を受ける……のだが

 その人物は入るなり、壁に突き刺さっているジルクニスを見て、床の上を笑い転げている。

 家族以外には知られていないが、彼は家の中ではよく笑うし、冗談も言う。

 恐らく家族以外がこの状況を見たら、明日は槍が振るのかと思う事だろう。


 そんなアレクサンデルに、ジルクニスはこれ幸いと頼む。


 「アレク兄様、ちょっと抜くのに手を貸してもらえませんか? 」

 「仕方ないな。 でも尻尾で弾き飛ばすなよ。 頼むからな 」

 「弾き飛ばしませんよそんな事…… 」

 「んージーク、2週間前の事を思い出してごらん 」

 「あーその……そういえばすみませんでした 」


 ジークはその出来事を思い出して、非常に申し訳ない気分になる。

 なにせ抜かれた時の勢いで、思いっきり尻尾を振ってしまったことがあり、その反動で兄のアレクサンデルが壁に叩きつけられ医者に行く羽目になってしまったのだ。

 

 当のアレクサンデルも思い出したのか背中をさすっている。


 もっとも、ジークは直ぐにこの事を忘れてしまうのだが。

 優しい兄を持つと弟は甘えてしまうのだろうか。


 「じゃあ抜くぞ? せーの!よいしょ! 」


 突き刺さっていた角が壁からスポッと抜ける。

 それと同時に、抜いたアレキサンデルが倒れる事になったのは、ご愛嬌というやつだ。

 (尻尾で吹っ飛ばしてはないからな、セーフセーフ )

 

 「ありがとうございますアレク兄様。 ところで、何か僕に用があったのではないですか? 」

 ジークは刺さっていた角をさすりながらアレクサンデルに尋ねた。

 そしてアレクサンデルも慌てた様子で


 「そうだった。 父上がお呼びだ。 稽古の時間になっても降りてこないから起こしてこいとさ。 」

 

 そこで初めてジークは、自分が寝坊していることに気が付いた。

 もう既に日課となっている剣術の稽古の開始時刻はとっくに過ぎている。

 日の出と共に準備運動を初め、朝食前に稽古をするのが日課であった。


 だが今は兄の開けた扉から朝食の良い匂いがしてくる。

 今日は油がよくのったハムかベーコンかもしれない。

 だが、ジークはそんな事を気にしている余裕はなかった。

 

 「げぇっ! あのぉ兄様……父上は怒っておりました? 」


 ジークは恐る恐る尋ねる。


 ジークの父レギウスは時間に関しては人一倍厳しい。

 「全ての物事は、それにどれだけ効率よく時間をかけるかによって効果があらわれる 」とは父の言。


 時間に厳しいと同時に、学ぶことに厳しい人間に対して遅刻するという意味を、ジークは8歳児にしてよく理解していた。

 いや、理解というより、身を以て学習していたという事の方が正しいだろう。


 父レギウスが勤勉であるのと似て、ジークも勤勉である。

 屋敷にある書庫の本を読み漁り、その知識を吸収しようと努力していた。

 むろん最初の興味は伝記物や戦記物であったことは言うまでもない。

 

 寝坊した理由としても、夜こっそりと寝室を抜け出して書庫で本を読んでいたからだ。


 といってもそんな言い訳が通用する父ではない。

 もう既に地獄の門は開かれていた。


 そんなジークに対してアレクサンデルは最後通牒をつきつける。


 「もちろん。 あれは近づきたくない程だったね。 僕としては稽古は終わっているし、これから朝食を食べて、経済学の勉強をするという予定が、森にピクニックに出るような嬉しさだよ 」

 

 そういうアレクサンデルは笑顔だった。


 既にアレクサンデルは完全に他人事である。

 「あっ今日の朝食はベーコンだったね。 うん実に楽しみだ 」

 等と言いながらアレクサンデルはスキップをしつつ部屋を出て行った。


 「ア、アレク兄様待ってください! せめて壁に刺さっていたという事を父上に証言を!……兄様あああああああ!!! 」


 そんなジークの言葉も空しく終わり。

 アレクサンデルには届かなかった。

 もちろん残されたのは憂鬱な気分になっているジークであるのは明らかである。


 

 

これから頑張って書いていきたいと思いますので

興味を持っていただけたり、面白いと思っていただければ幸いです

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