第九話「ぽた、ぽた」
@ @ @
瞼を上げる。
ドアから光が漏れていた。
ぽた……ぽた……。
何か、液体がどこかから床に落ちている。
――人?
目がどんどん慣れてきて、視界がはっきりとしてくる。
黒い巻き髪?
「あね、き?」
驚愕して、体がピクリとも動かない。いや俺は殴られたのか。
「なぁに?」
いつもの、小型犬が吠えるような高くて、無邪気な声。
姉貴は笑っていた。口角を吊り上げて。
「――っ!」
恐怖で姉貴を見上げたまま動けない。姉貴の手を見ると、ナイフが握られていた。ナイフから、赤い液体がポタポタ流れ落ちている。
と、俺の服が濡れていることに気付いた。光の当たっているところを見ると、灰色のTシャツが赤く染まっているのがわかった。
眼球を動かし、姉貴の足元に向ける。
そこから血が流れてきていた。
「え……?」
人が、血まみれで倒れていた。こちらに背を向けて倒れているが、何とも生気が感じられない。
全く。
体が呼吸によって上下していたりもしない。
姉貴がゆっくりと俺の前までやってきて、腰を下ろす。
そして、そのナイフを高く振り上げて、俺に突き刺した。
「あははははははははは!!!」
高らかに、陽気に笑う姉貴は、子どものようだった。
ぐりぐりぐりぐりぐり……。何度もナイフを俺の腹の中で回す。
目を開けるのもしんどい。
また、暗くなっていく――
@ @ @




