妖精の国へ
姫さまとサフランの編入手続きで意外な事が!
無事に新しいメンバー、かえでと共に「自宅」に戻る。
かえでの自己紹介もそこそこに、学校の話になった。
サフランを学校に通わせる手続きは、目つきのするどいメイドこと、カレラさん経由で行われていた。
今からであれば学校に行って説明を受けられるという。
「エイトさま、戻られたばかりで申し訳ありませんが…」
サフランを預かった以上、きちんとしなければならない。
幸い、初日は顔合わせと教材の配布程度らしい。
「それじゃいってきます!」
姫さまとサフランを伴い、「学校」へ。
カレラさんとランサーさんも一緒だ。
頃合を見て、ルティリナとかえでにも勉強を教えたい。
そういえば、もえと双子の学力はどのくらいなんだろか。一度テストをしてみよう。
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うさみみおじいさんのいる守衛室で受付を済ませ、3階に上がる。
アイリスたちは見かけなかったが、代わりにこの前見かけた狐耳の女教師を発見した。
「すいません、今度からこちらにご厄介になります、シルフィールとサフランです。教材の受け取りと説明を受けに来たのですが」
狐耳の女教師はめがねをくっ!ともちあげると、
「お話は伺っております。こちらへ」
と案内をしてくれた。ちなみに耳と尻尾は白く、服装は白いブラウスに茶色の皮製ズボンでした。
瞳の色は眼鏡越しでよく見えず。何か特殊な加工でもされているのだろうか。
校長室のような感じの場所に通された。
カレラさんとランサーさんは部屋の外で待機している。
狐耳の女教師がくるっとその場で回る。
「私は校長代理のルナールと申します。編入される生徒さんは名のある貴族のご息女と伺っておりますが、特別扱いはいたしませんのでそのつもりで」
校長代理だったのね。最初から言ってくれれば(ry
「ええ、かまいません。厳しい指導をお願いします」
姫さまがごくりと生唾を飲み込む。サフランはやる気十分のようだ。
一国の姫様が2人も来たら大変だろうということで、どこかの貴族が社会体験に来たという設定のようだ。
「授業の他に勤労活動という時間を設け、城内にある作業場で掃除や片付けなどの簡単な作業を行ってもらいます。こちらも特別扱いはありません。よろしいですね?」
姫さまとサフランは未知の体験を前に緊張している様子だ。
「すいません、僕が授業や勤労活動の監視をするのはかまいませんか?サフランの父親からお目付け役を仰せつかっていますので」
「はい、くれぐれも他の生徒の迷惑になりませぬよう。あと、授業方針についても口出しされないよう願います」
過去に何かあったのだろうか?
教材一式と布製のかばんが手渡される。このかばんが通行証の代わりにもなるようだ。ふたの裏には小さな魔導陣が描かれ、不正防止対策もなされている。
「こちらが保護者用の通行証となります。なくしたり壊したりした場合、再発行はいたしませんのでそのつもりで」
ギルドカードに似た銀色の金属板を渡された。こちらにも魔導陣が入っている。
「こちらが時間割と部屋の案内です。遅くとも始業の10分前には教室に入ってください。今期は生徒数が多い為、お二人は来週から授業を受けてもらうことになります。できれば予習をしておいてください。なにか質問があればどうぞ」
「いえ、僕は大丈夫です。二人はいいかな?」
「「はい、勇者さま」」
その声に狐耳がピーンと伸びたのを僕は見逃さない!
「あの、もしかして?」
「はい、勇者のエイト・マスダといいます」
狐耳の先生がもう一度驚く。
「以前、親戚の者が大変お世話になりました!ルラーニャを覚えていらっしゃいますか?」
「ええ、あの正義感の強い女の子ですね」
「この前、村に帰った際にルラーニャから話を聞きました。勇者様に助けられたと、とても喜んでいましたのでお会いできたらお礼を言おうと思っていました」
僕が勇者のお披露目パレードで拾ったもとい助けたルラーニャの親戚だそうだ。なんとなく名前も似ている。
ルナールさんは勇者はお披露目のときに見た「深緑の慈悲」をいつも身に着けていると思っていたようで、ずっとその姿を探していたそうだ。
最近出番のない「深緑の慈悲」。窒息しなければすごくいい防具なのに。
「二人のことをよろしくお願いします」
「はい、びしびしと指導しますので!」
姫さまがすこしビクっとなった。僕にずっとくっついているよりもいいと思うよ。
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「自宅」に戻るとソネッタさんが出迎えてくれた。
「エイトさま、お客様がお見えです」
「どなたですか?」
「妖精国から見えられと…」
僕は急いで客間に向かう。
ソファに座り、上品なしぐさでお茶を飲む老人が僕の姿を見て立ち上がる。
「勇者エイトさま!突然の訪問で申し訳ない。私はノーマン。フィリーお嬢様の執事をしております」
「フィリー!フィリーは無事に帰れたのですね!」
「はい、突然お屋敷を飛び出されて、屋敷の者総出で探しておりましたところ、元気なお姿でお戻りに。まさか人里でお世話になっていたとは露知らず」
聞いたところでは、フィリーは人間の住む里の近くで動けなくなっているところを近くの村人に助けられたらしい。
その村ではフィリーを養うだけの余裕がなく、たままま勇者のお披露目に向かうために村を通りかかった貴族に世話を頼み、その後迎賓館のお風呂場で僕と出会った。というのが顛末のようだ。
「フィリーお嬢様は戻られたばかりは大変にお元気だったのですが、最近はあまりお食事もなさらず、自室にこもられております。侍女の申しますには、どうやら勇者さまにお会いしたいとの事」
「しかし、フィリーお嬢様は今回の件で人間の里へ出ることを禁じられております。そこで勇者様にお願いがあります。フィリーお嬢様のお見舞いをお願いできますでしょうか?」
「はい、フィリーが望むのであれば!」
「ただし、1つお願いがございます。お連れ出来ますのは勇者様お一人。武器も持ち込みはできませぬ。これは長年人間に虐げられてきた妖精族を刺激しないための措置です」
一緒に聞いていたもえの表情が険しくなる。
「それで、妖精の国へ行くにはどのくらい時間が掛かるのでしょう?」
「ここからすこし離れた場所に臨時の門を作りましたゆえ、半日もあれば」
「わかりました。すぐに支度をします」
もえをじっと見る。
「もえ、少しだけ留守をするけれど、フィリーのお見舞いをしてすぐに帰ってくる」
「あるじさま…。どこにもいかないで…」
もえの目に涙がいっぱいたまっている。ふっと居なくなったミカミさんのことを思い出してしまったようだ。
もえを残していくのは無理そうだ。
「ノーマンさん、この子を連れていってはだめでしょうか?」
僕はもえを保護したいきさつを簡単に説明する。
「…わかりました。ただし、武器となるものは持ち込めません。それだけはお願いします」
もえは髪飾りになっている「ザ・シード」を双子に預ける。
今からだとお見舞いの品を用意しなければと思ったが、ノーマンさんは妖精の国へは人里の物は持ち込めないというのであきらめた。
「それじゃ、行ってきます!」
「「マスター!もえちゃん!いってらっしゃい」です」
「勇者さま!フィリーによろしく!」
僕ともえはノーマンさんの案内で妖精の国へと向かった。
すぐに帰ってこられる。そんなことを思ったりもしましたが…。
勇者ともえは妖精の国へ。
ただのお見舞いで終わればいいのですが。




