閉じ込められた勇者
飛んで火に入るなんとか!勇者ともえの運命は!
事の始まりは、妖精の国へ来る途中からだ。
妖精の国から来たというノーマンの案内で、ライスリッチフィールド城の外に出た後、豪華な4頭立て(しかも普通の馬には見えない生き物)の馬車に乗り、街道からすこし外れた場所に突如浮かび上がった「門」に吸い込まれ、気がつくとどこかの領内だった。
馬車の窓はカーテンで閉じられ、外の様子はあまり見えなかったが、垣間見た風景は人と同じ姿で変わらぬ生活をする妖精族。
ノーマンに目で威嚇されて外をのぞくのをやめたが、何かおかしい。
町のはずれにある大きな屋敷の裏手に馬車は止まった。
人払い(妖精払い?)がされているようで誰も居ない裏口から屋敷の中に案内された。
ノーマンから「ここでお待ちください」といわれ、通された部屋がここだ。
「もえ、大丈夫?」
「はい、もえは大丈夫です。あるじさまは大丈夫ですか?」
「だいじょぶだよ!」
ポケットに隠していた非常食をもえに食べさせ、僕は空腹と格闘していた。1日抜いたところでなんということはない。
不意にドアが開く。入ってきたのはノーマンともう一人、男性なのか女性なのか見分けがつかないが一応男物の服を着ている青年?
こちらも人と同じ背格好である。
妖精族が小さいというのはもしかして迷信なんだろうか?
「あなたがフィリーを救ってくださった勇者エイト様ですね。私はゼオライド。フィリーの婚約者です」
すこし高めのハスキーボイス。着ているものも豪華だし、見た目は某劇団の花形のようだ。
そして、こ・・・こんやくしゃ!
心の中で声が裏返ってしまった!
「フィリーが屋敷を飛び出したと聞き、捜索隊を編成してあちこち探させたのですが、まさか仇敵の里にいたとは」
妖精族は昔、その羽が持つといわれる不老不死の効用を求めて、人から迫害を受けていたという。ゴーレムに吹き飛ばされて瀕死だった僕はフィリーの羽の力で助かったのだ。
「仇の仲間とはいえ、あなたはフィリーの命の恩人。たいしたおもてなしは出来ませぬが、今夜はゆっくりしていってください」
「あの、フィリーの具合はどうなんですか?」
肝心なことを聞きそびれてはいけない。
「彼女は気分が優れないようです。勇者様がお帰りになる前に回復すればいいのですが」
ゼオライドの目つきが悪い(悪巧みの方向で)。どうやら会わせる気はないようだ。ならばどうして僕は呼ばれたのだ。
「それでは夕食までこちらでおくつろぎください。あたらしい紅茶とサンドイッチを用意させましょう」
ゼオライドが部屋を出る。
ノーマンは何か言いたげであったがゼオライドが気になるのか、一礼をして去っていった。
「ゆ、勇者様、紅茶はいかがです?」
妖精族のメイドが香りのいい紅茶をいれてくれる。その手元はわずかだが震えていた。
「いい香りですね!どんな茶葉をお使いなんですか?それともなにか」
ポーカーフェイスの出来ない僕はいらないことを口走りそうになる。毒入りですか?と聞こうと思ったのはないしょのハムスターだ。
ガチャン!と大きな音を立ててティーポットが落ち、高いじゅうたんに紅茶のシミがひろがる。
ドアの向こうから音も立てずに数人のメイドが現れ、即座にじゅうたんが「洗浄」される。
こうして僕は紅茶に手をつける必要がなくなり、居心地の悪いソファに身を沈める。
もえをひざにのせ、髪をととのえてあげる。
「もえ、ごめんな。のどが渇いただろうけれど、帰るまで我慢できる?」
「だいじょうぶです!あるじさま!」
こんなときに水の魔導が使えればもえに飲ませてあげられるのに…。適性のないニュートラルな魔力がうらめしい。
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その頃、別室ではゼオライドが荒れていた。
「くそっ!あの人間め、どうやって見破ったのだ。たいした力もないくせに!夕食は手をつけないわけには行かないだろう。そのときが最後だ」
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窓のない部屋では時間の経過もわからない。
それも向こうの作戦なんだろうか。
しかし、こちらには「すまほーちゃん」という心強い味方がいた。
上着の影で「すまほーちゃん」をチェックする。何かあれば「十六夜」(おもらし)さんに助けを求めることも頭の隅にいれてある。
人里から土産は持ち込むなといわれたけれど、これは私物だと胸の中で屁理屈をこねる。
もえは連れてきたが「ザ・シード」を置いてきたのはミスだった。フィリーには一応話しているから変に隠すことも出来ないと思っていたのが裏目に。
ドアがノックされ、先ほどとは違う幼いメイドが水さしとお菓子を運んできた。
妖精族のロリメイド。重要なことなので記録しておく。
「勇者様、先ほどは失礼いたしました。代わりをお持ちしました」
幼いメイドはお菓子の下の紙ナプキンを意味ありげにしばらく見つめ、部屋を出て行った。
お菓子の下に敷かれた紙ナプキンに何か書かれている。
僕はお菓子を取る振りをして、その紙ナプキンに書かれた文字を読み取り、ポケットにしまう。
これを書いたのは誰だろう。文字の雰囲気からして女性っぽい。
「もえ、これは食べても大丈夫みたいだ。念のために先に僕が食べてみるよ」
慌てるもえの制止を振り切って、僕が率先してひとつ口に入れる。
「…!おいしい!」
効果音は例の練りまくるCMだ。
もえの表情が明るくなった。僕たちはいそいでお菓子を半分ほど平らげ、水でのどを潤す。
残りは他の紙ナプキンにくるんでポケットにしまっておいた。
とりあえず密室でひもじい思いをしなくてもよくなり、すこしだけ心にゆとりが出来た。
ポケットにしまったメッセージ入りの紙ナプキンを取り出す。他にフィリーとゼオライドのことが書かれていた。
僕の心の中に忘れ去られていた感情、暴れん坊ローブがむくむくとわきあがってくる。
ん?暴れん坊ローブといえば。武器ならあるじゃないか?
部屋の暖炉の上にあった飾り刀。あれを魔力強化すれば…。
なまくら3号の候補は決まった。
幼いメイドつまりロリメイド。
ロリメイドという響きが好きです。




