女神の足跡
「ひめたべラジオ第七回放送」
エ「ラジオ7回目はついに真打登場!勇者エイトが」
預「エイトよ、この茶菓子、湿気っておるぞ。」
エ「あの、十六夜さん、それはぬれせんというもともと湿った」
預「そうか。わしはこうパリっとしたほうが」
預「茶菓子を取ってくるからしばし待つのじゃ」
エ「十六夜さんが戻る前にお便りの紹介を。ラジオネームどらごんさんから。「しっぽにさわったこと、わすれてはいないだろうか。そなたのことを思うと夜もねむれず」」
エ「こ、これは僕宛の手紙じゃないですか!」
預「すまん、まちがえたわい。」
エ「もう時間だそうです…。それではまた来週」
預「さらばじゃ!」
僕たちは一度森の外へ出た。
僕の後ろにいたはずのもえがいない。
「もえ!」
「「もえちゃん!」」
森の中ではぐれてしまったのか。
もえがいなくなったのに気がつかないなんて…。
「僕が探してきます!ソネッタさん、ギルド長をお願いします」
いまだに泣き止まないギルド長をソネッタさんにあずけ、僕は急いで森に戻る。
「はうはうどっぐ」に戻ったヴァルトさんが併走する。野営地で会ったときのサイズではなく普通の狼くらいになっている。
「手分けをして探しましょう。私は配下の者に呼びかけて協力させます」
ヴァルトさんが遠吠えをすると何頭かの「はうはうどっぐ」が返事をする。
僕は精霊の言葉に従って森の中を走る。
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しばらく森の中を進むと、大きな洞がある巨木のそばでもえを見つけた。
「もえ!急に居なくなってどうしたの?」
「あるじさま…ごめんなさい。気がついたらここに」
人が手を加えた雰囲気のある巨木を覗くと、中には誰かが住んでいたのか朽ち果てた家具のようなものが散乱していた。
「もえ、何か思い出したの?」
首を横に振るもえ。もえはここに来た理由を思い出せないようだ。
「もえ、帰ろう」
「はい、あるじさま…。あるじさま、死なないで…」
さっきギルド長が取り乱したときの言葉を思い出したようだ。
「大丈夫だから、ほーら!」
もえを抱え上げ、そのまま肩車をする。
「ひぁあ!」
もえの体温を感じながら帰ろうとしたその時、背後から虫の羽音が聞こえた。
羽音なんて生易しいものではない。たとえるならレシプロ戦闘機のエンジンのような音だ。
振り返るとそこには人のサイズほどの巨大な蜂がホバリングをしていた!
僕は肩車していたもえを下におろし、後ろにかばう。
蜂は首をかしげ、脳内に直接語りかける。
「モエ?隣の人はミカミさん?じゃないわね」
巨大な蜂はお約束のように光り輝くと、人間の女性の姿になる。
身長は170センチくらい、金髪に黒い瞳。見た目は20歳くらいだろうか。
これで普通の服を着ていたり全裸!だったりならまだわかる。
いわゆるボディコンといわれるぴちぴちのドレスを身に着けていた。
上半身は山脈の辺りを強調する黒一色、腰から下は蜂の黄色と黒の柄をモチーフにしているのか、毒々しいスプライトのニットでふくよかな曲線を覆っている。
足元は黒のピンヒールだ。やわらかな地面に刺さらずに立っていられるのが不思議だ。
「モエ、ひさしぶりね」
もえは僕の後ろに隠れてそっと様子を伺っている。
「あるじさま…。知らない人」
「モエ、忘れちゃったの?そうよねー。長いこと会ってないし」
ボディコンガールはいずこからかピンク色の扇子を取り出すとぱたぱたとあおぎ始める。
「それで、そちらの人はミカミの知り合い?」
こちらに扇子をびしっと向ける。どうやら鉄扇のようだ。
「あの、エイト・マスダといいます。その…ミカミさんという方とはたぶん面識はありません」
「モエをつれてるからミカミの知り合いかと。もしかして誘拐?」
「いえいえそんな!」
僕は宝物庫でもえと出会ったときの事を説明する。
「そっかー。モエは記憶喪失、ミカミは行方不明なのね。あなたちょっと頼りない感じだけどモエを頼んだわよ」
やっぱり頼りないのかー。言われるのは何度目だろう。
「頼りないというのは冗談よ?」
「はい・・・。それで、ミカミさんというのは?」
「うーんと、メガミだっけ?そんな名前でも呼ばれてたらしいわ」
メガミ。女神ならもえの前のあるじということか!
もえの表情が変わった!
「あるじさま…すこし思い出しました。ここはあるじさまの仮の住まい」
もえは僕のことも女神のことも「あるじさま」と呼ぶ。
「そうそう、ミカミがよくここに泊まって魔獣を追い掛け回してたの。たまたま遊びに来た私と出会って」
「勇者さまーーーー!もえちゃーーーーん」
そんな話をしていると精霊の伝言が無事通じたのか、みんなが集まってきた。
「あら、ヴァルトじゃない。どうしておば様の姿をまねているの?」
ヴァルトは先ほどの「はうはうどっぐ」から人の姿になっている。
「メリフィナ!それは黙って、あっ!」
ヴァルトさんの体があっという間に縮み、14、5歳くらいの女の子くらいになる。
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ヴァルトさんはどうやら無理をして姿を保っていたようだ。
「エイト、驚かないということはやはり私の姿を見たのだな」
「天幕の中で寝ぼけていて幻を見たのかと思ってまして。それで、どうして大人の姿に?」
「母が引退し、私が跡目を継ぐことになった。この姿もそうだが、小型の「はうはうどっぐ」では母のような威厳が無く命令も聞かぬ奴が出る始末」
「そこで母になりきり、統制を取ろうともくろんだのだが」
「ヴァルト、見た目だけじゃだめだからね?」
メリフィナさんがなぜか僕にウインクしながら言う。
うぐぐといった感じになっているヴァルトさん。こうしてみていると姉妹のようだ。
「そうそう、ヴァルト、前に話したミカミのこと覚えてる?」
「あの伝説の女神のことか?」
「その女神の従者がモエなのよ。」
「な…なんだって!」
さっきまで落ち込んでいたギルド長が真っ先に食いついた!
もえの前のあるじ「女神」についての情報が!




