やや番外編「突然のお告げと混乱する大教会支部」
「報告します。大教会本部より緊急の連絡!」
今日の荷動きについて報告を受けていた男は突然の知らせに身を強張らせた。
「何があった?」
「偽勇者に動きあり。今夜にも捜索隊が乗り込んでくるとのお告げがあったとの事です!」
「どうしてここが分かった」
「あいにくそこまでは…」
本部の指示通り、違法借金奴隷の取引は何重にも予防線を引いて万が一にも情報が漏れたとしてもここまでたどり着けるはずは無かった。
「ここを引き払う。証拠になりそうなものはすべて処分だ」
「今日入っている注文は…」
「そのままにしておけ。取り消す時間が惜しい。とにかく早く荷物をまとめるよう手下に指示を出せ!」
男は矢継ぎ早に指示を出すと自身も最重要機密である隠し帳簿を処分するために自室へと急いだ。
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「あ、開かない…魔導金庫の鍵が壊れたのか?何の問題もなく使えていたのに」
床に直接くさびを打ち込み、絶対に盗まれないようにした魔導金庫。
それが逆に仇となってしまった。
金庫にいくら自分の魔力を流しても何の反応もない。
こんなことは今まで経験したこともなく。
万が一を考え、魔導金庫の登録者は自分だけとしているため他の人間に開錠させることも不可能。
「いや、開かないのなら好都合か。鍛冶師に特注で作らせた燃やすことも叩き壊すことも出来ない魔鉄鋼製の金庫だ。今は時間が惜しい。表に出ている書類だけでも焼くことにしよう」
金庫の中には帳簿類と売上の一部が保管されており、逃走資金に充当しようと思っていたがそれも当てが外れてしまった。
「準備出来ました。いつでも出られます!」
最初に大教会本部からの伝言を伝えてきた男が逃走準備が整ったことを伝えに来た。
「まずはアトレーンを目指す。光の女神様のお告げは道中で聞くことにしよう」
その場に詰めていた十数人のむさくるしい一団はてきぱきと荷物をまとめると後ろも振り返らずに拠点を後にした。
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「思ったよりも動きが早かったですね…。本部の捜索はあの金庫の中身だけになりそうですが」
一部始終を見張っていた僕と大人組のみなさん。
日の出荘のペントハウスで夜逃げの準備のために右往左往するむさいおじさん達を監視していた。
今から捕まえに行こうと思ったが、もしかすると大教会との接点が浮かび上がるのではという期待を込めてあえて泳がすことにした。
この男たち、完全に自分たちの事しか考えておらず今まで取引のあった闇奴隷商にはなんら連絡を入れる様子もなかった。
完全にトカゲのしっぽ切りだよな…と。
ドアに施錠もせずに荷馬車へと乗り込み、そのまま走り去る様子をドローンで追いかけることにして本部の様子を見守ることに。
ここがもぬけの殻だと「売り」や「買い」に来た商会が不審に思わないだろうか?
今のところ商会同士が横でつながっている様子は無く、むしろあえて連絡が取れないよう仲介役が入っているようにも見えた。
おそらくは一か所が摘発されても他の商会が芋づる式に捕まらない為の予防策なのかもしれないですが。
まぁ、証拠となる帳簿は既にスキャン済み、金庫の魔力認証も逃走の恐れがあると発覚した時点で書き換え済みですし。
ちなみに魔導金庫の「キー」となる部分は既に双子が解析をしており、魔力紋をコピーせずとも開くことが可能だ。
今回はドローン経由での操作の為魔力紋をコピーしましたが。
ちなみに僕個人が使っている小型の金庫については双子は触れてはいけないと認識しているのか特に「お話」をする様子もない。
中身は地球から持ち込んだ身分証だったりすぐに使う予定のない現金を納めているだけなのですが。
「オパール王妃さま。逃げた男たちはこのまま追跡をするとして、今夜の捜索は予定通りに」
「分かりました。バラの騎士はいつでも動けるよう手配済みですので」
今夜というより日没と同時におよそ30か所への同時ガサ入れを実施する。
捕まっている違法借金奴隷が女性ばかりということもあり、バラの騎士団のみで事に当たる。
一応各部隊に1体はアヒルちゃんをつけることにして、不慮の事故にそなえるつもりですが。
今回は捜索個所が多く、全ての現場に商業ギルド職員をつけるのは難しそうだ。
受付から人が誰もいなくなってしまうのも大変ですし。
総指揮はマッスルキングさん、補佐にマーガレット隊長が出ることになっている。
もしかして他の国にも似たような組織が蔓延っていたりしないですよね…。
まずはライスリッチフィールドの中だけでもきれいにしないと。
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「全員その場を動くな!臨時の改めである!」
夕暮れ時、それなりに人の往来がある商業区に完全武装の騎士十数人が集結し、商店のひとつへとなだれ込む。
突然の出来事に道行く市民は巻き込まれぬよう自然と距離を取る。
兵士に突入された商店はまさに寝耳に水と言った感じであまりの剣幕に黙って従う他はなかった。
「ここに違法借金奴隷を隠しているとの通報があった。店内をすべて見させてもらう」
「お、お待ちください。うちは普通の雑貨店です。借金奴隷などいるはずが…」
「ぐえ!地下に生体反応あり。出入口は店の奥」
兵士に交じって黄色い甲冑のようなものを纏った不可思議な存在が声を上げた。
「地下を改める。案内は不要だ」
騎士のうち二人が出入口を塞ぐと、残りの騎士の半分が店の奥に、半分はそのまま店の中の調査へと移った。
「第三部隊より本部へ。店内制圧完了。地下への入口を発見。これより突入します」
『本部より第三部隊へ。了解しました。映像も確認していますのでそのままどうぞ』
店主はいつの間にか後ろ手に拘束され、騎士の動きをただ見る事しか出来なかった。




