迷宮内で時間調整をする勇者
「殿、まかされたでござる」
今回は深緑の慈悲を使っていない関係でバケツヘルムにインカムを内蔵。
拡張バイザーに姫さまの顔が映り、イヤホンから接敵の警告が。
イヤホンはござる侍とテスラにもつけてもらっており、今の姫さまの声を聞いたござる侍が魔獣出現ポイントへと肉薄!
「せいっ!」
転送されてきたはいはいこぼるとと思しき緑色の物体は完全に実体化する前に左右へ泣き別れることとなった。
魔獣の転送中にも当たり判定があるバグのようなものだがここを狙って攻撃を仕掛けられる人間は殆どいない。
悲鳴も上げずに魔素へと還った不確定名はいはいこぼるとは錆びたナイフと茶色い小箱を一つドロップ。
そういえば荷物を入れるバッグが心もとないんですよね。
帰りに大荷物を背負って帰る計画なので余分な収納は持ち合わせておらず。
一応あひるちゃんは連れてきているが万が一の事態に備えた布石となっている。
「とりあえず二人は攻撃に専念、荷物を回収したらテスラが戦利品を預かって」
それまでは僕が戦利品を預かることとし、本命の荷物を回収したら選手交代ということで。
テスラに背負ってもらっても良いのだが、一応僕が荷運びを受注したので僕が運んだほうが良いだろう。
出坑した際の手続き時だけ背負っていればいいという話もあるが、ギルドの評価システムがどこまで依頼受注者を見張っているのか分からないので。
オフレコだよと冒険者ギルドの定住精霊から聞いた話ではギルド職員が冒険者に変装して依頼の達成状況を確認しているという話なので。
私服警官か!と思ったりもしましたが万が一があればギルドの信用問題にも発展するのでそのくらいの用心をして当然かなという感じ。
『勇者さま、また近くに魔獣の反応。今度は3体です!前方つきあたりを右に曲がって100メーエル』
こんな時に限ってエンカウント率が上がるのは何故なんでしょう。
一応魔獣の薄い方向を案内してもらっているのですが、もしかして今日は迷宮内の人が多いとか?
この前、雑に出現レベルを下げたばかりなのですけれど。
発令所で迷宮全体の混雑度を見るパラメーターは持っているが、普段はあまり気にすることが無いので見ないんですよね。
この前、金色の魔獣が出たというわさが流れた際は冒険者密度が一気に上がり、魔獣が過剰放出されたりもしましたが。
進行方向なので避けられそうになく、ござる侍とテスラに先行してもらって近づいてくる3体を倒してもらうことにした。
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ござる侍とテスラが1.5体ずつ倒して戦闘終了。
左右の魔獣を分担して倒し、真ん中の魔獣はござる侍が胴をなぎ、テスラが頭部を刺突してオーバーキル。
「銀箱1、ショートソードが1、これは鑑定の必要なしか…後はこん棒と…」
今度は銀箱が出てしまった。誰のLUKを参照しているんだろうか。
そして新古品のようなショートソード。何の飾りもない直剣で特に何の効果も無く誰かの落とし物と言った感じの物体がドロップした。
腰に佩いた刃こぼれショートソードと選手交代。
刃こぼれショートソードは魔力強化を施してあって誰かに拾われるとチートアイテムとなってしまうのでインベントリへと突っ込んでおくことに。
後で魔力を抜いて冒険者ギルドの廃材置き場へ返そうと思う。
思わぬ形でそれなりの武器のランクアップが果たせたところで時間を確認すると今から目的地へゆっくりと歩いて行けば丁度間に合うくらいの時間調整が出来た。
ちなみにこん棒はかさばるので捨てることにして邪魔にならないところへと立てかけておく。
こん棒といえば夕べななや旅館で買ったこん棒を持ってくればよかった。
あれも魔力強化すれば地味に使えますので。
今捨てたこん棒は後追いと呼ばれる廃棄アイテム専門で漁る冒険者によって回収されるだろう。
もしくは時間が来れば迷宮に吸い込まれるのですが。
『勇者さま。今のところ魔獣出現の兆候はありません』
MPTの抑止機能が働いたのかもしれない。
魔獣を一度に放出して迷宮内がパニックにならないよう閾値を設定して魔獣の出現頻度をある程度自働的に調整するようにはなっていますので。
とりあえず道なりに進むことに。
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『勇者さま、前方200メーエル先で戦闘中のようです』
基本的に他人が戦っているところは避けて通るのが暗黙のルールとなっている。
反応があった場所の情報をバケツヘルム内のバイザーに投影してもらったのだが、緑の点が3つ、そして赤い点が10個あまり。
緑の点はその赤い点に囲まれた状態で身動きが取れない様子にも見える。
管理迷宮内で命を落とすことは無いが、大けがをしてしばらく冒険者としての活動が出来ないという事態は起こりえる。
このまま見過ごすのもちょっとどうかと思い、助太刀が必要かまずは確認をすることに。
「ござる侍、テスラ。ちょっと急ぐよ」
迷宮内で走るのは本来推奨されていないが、緊急事態なので。
足音で新たな魔獣を呼び寄せる危険があるが、今のところこの通路には魔獣の湧く気配は無い。
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「このはいはいこぼると強すぎる!」
「盾にひびが!これ以上持ちこたえられない!」
「ふぁいやーぼーる!」
少女の放った火弾がこん棒を振り上げたはいはいこぼるとに命中するも多少のけぞらせただけでダメージらしいダメージを与えられなかった。
「どうして!発動体は新調したばかりなのに!」
気が付けば3人は広間の中央へと追い込まれ、周囲を得体のしれないはいはいこぼるとに包囲されることに。
「緊急脱出穴にも近づけない…」
誰しも最悪の展開を予想していたが「助太刀必要でござるか!」と女性の声が聞こえた。
「き、気を付けてください!この魔獣なにかおかしいです!」
自分たちよりもここに通りすがった冒険者の心配をする三人。
「ちょっと硬いだけでござる」
少女達が散々苦戦したはいはいこぼるとが縦に真っ二つにされ、魔素へと還る。
「ら・びあん・ろーず!茨の刺突!」
細剣の刺突によってあっというまに穴だらけにされたはいはいこぼると。
「とりあえず試し切り」
バケツヘルムのスリットが光ると、手にしたショートソードが一度に3体のはいはいこぼるとをなぎ倒す。
「あれ?もしかして魔導武器だったのかなこれ。勝手に使ったら怒られる奴かな?」
初撃で魔獣は半分に減り、残った魔獣が棒立ちになっている間に2度目の攻撃が行われ少女達の危機は回避された。




