完全やらせの指名依頼と勇者
「冒険者ギルドへようこそ。ご用件をお伺いいたします」
ドメスが向かったのは依頼受付カウンター。
主に野良魔獣退治の依頼を出すところだ。後は地方への手紙の配達、護衛任務などか。
僕は依頼したことが無いので依頼受付の方との面識はないのですが。
「明日の昼までの制限付きで荷運びを依頼したい。ドメス商店から南の迷宮内への配達だ」
「かしこまりました。迷宮内への配達となりますと割増料金がかかりますが」
「かまわない。今すぐ依頼できる冒険者はいるか?」
「おまちください。ただいま待機者が十数名おります。ちなみに荷の大きさと重さは?」
「冒険者が使う大型の背嚢を一つ、重さは60キーラよりやや少ない」
「でしたら一人で大丈夫ですね。ちなみに中身をお伺いしても?」
「保存のきく食糧や消耗品など補給物資を頼まれた。先方からは所定の場所に置けばよいと聞いている」
「かしこまりました。こちら送料先払いで800 Rとなります。万が一失敗した場合、荷物の補償はございません。送料は半額をお返しいたします」
「分かった。800Rだ。確かめてくれ。ドメス商会の場所と配送先はここに書いてある」
「確かにお預かりいたしました。迷宮内に昼までの配送となりますと朝の鐘が鳴るころに荷物の引き取りにお伺いとなりますがそれでよろしいでしょうか?」
「かまわない。荷は完全に梱包した状態で準備する。冒険者の手伝いは不要だ」
「その件も伝えておきます。最後に運び手に関して何かご注文があればお伺いいたしますが」
「口が堅く、正確に荷を運べれば誰でもかまわない」
「承知いたしました。では明日の朝よろしくお願いいたします」
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まさか闇奴隷商が迷宮を奴隷の受け渡しに使っていたとは…。
そんなつもりで南の平原迷宮を作ったのではないのですが。
迷宮内は死角になる場所が多く、物を隠すには最適かもしれない。
迷宮自体の自浄作用によって地面に置かれたものはMPTのある場所へと転送されるのだが、長くて数ニール、半日くらいはその場にとどまる。
ミドリの入った背嚢は多分最短時間で回収されたと思われ、本来であれば誰かが取りに来ていたと思われる。
今のやり取りは当然のように王族ネットワークで放送されており、冒険者が知らずに悪事に加担させられていたことも今回初めて判明したことで少なからず動揺が走っている。
なんというか空港で気軽に手荷物を預かったら違法なものが入っていて二度と日本に帰れないなんて事件をたまに耳にしますが、やっていることは大して変わらないだろう。
まさか違法借金奴隷を運ばされているとは夢にも思わないだろうし。
荷物の配送に関しては今回のように直接商会などへ取りに行くパターンと、冒険者ギルドの窓口で預かるパターンの二種類があるそうで。
窓口預かりならばみすかすえっくすでの検査が可能だが、引き取りに関しては都度冒険者に荷を改めさせるのも難しく、対策をどうするか…。
遠回りにはなるが一度冒険者ギルドに来てもらうよう規則を変える必要があると思われる。
その辺は冒険者ギルド長との話し合いになるのですが、本人はまだ大森林の洞窟から帰ってくる気配は無い。
週1くらいでギルド本部には戻っているようですが、滞在時間は短いようで顔を見る暇もないんですよね。
というか大森林の出張所の居心地を良くし過ぎたのも原因かもしれない。
大森林に派遣されているギルド職員も交代せずあちらに行ったままの人も多いらしく、ギルド本部は地方から応援に来た職員が半分くらいを占めている状態。
僕もようやく顔というか、深緑の慈悲を覚えてもらえたかなという感じで。
一応冒険者ギルドには一報を入れておいた方が良さそうだけど、今回の件はそのまま受けてもらわないと…。
おそらく今までも同様の手口で何十人もの違法借金奴隷が運ばれていると思われ、今までよくバレなかったなとそっちのほうが気になるんですけれど。
人一人を背負うとなれば相当重いはずなのだが、無駄に鍛え上げた冒険者にしてみれば背嚢1つ分くらいを背負うのは対して苦にならないのか?
僕も姫さまの加護ありなら生身でも相当な重量を担ぎ上げることが可能ですけれど。
加護を切ると一般成人男性となんら変わりない出力になりますが。
もしかして僕らも引き取り手を依頼しないといけない流れですかね?
その辺をカルロスからは聞いておらず、自分で取りに行く気になってましたので。
「サブローがエイトに指名依頼を出せば問題ないにゃ」とシロさんがナイスアイデアという感じで。
エイト名義の冒険者カードはF級のまま。荷運びなどは問題なく行える。
自分で自分に指名依頼?ギルドにはどう説明を?
ああ、変装して行けばよいと。
ちなみに冒険者カード二枚持ちはご法度なんですが僕だけ特例ということでギルド上層部には伝わっている。
というかそもそも二枚登録が出来ないしくみのはずなんですが。個人の魔力紋に反応するので二重発行自体が出来ないはずなのに双子がシステムをいじって可能にしてある。
ちなみに二人も本来であれば正式な冒険者として登録できない年齢にしか見えないが同じようにシステムの裏をかいて登録済みだ。
そんなわけで今から完全やらせの指名依頼へ向かうことに。




