闇奴隷仲介業者に接触する勇者
翌朝。
カルロス雑貨店とは名ばかりの闇奴隷商、カルロスが急に自白を始めたという連絡が入った。
カルロスだけではない。
アコーギ商会の会長と子飼いの冒険者も次々と自白を始めたと。
聞けば昨晩、地下牢に大量のゴーストが出現し、牢にいた連中を一晩中苦しめたとか。
何度も言うが、この世界の人たちはゴーストに対して免疫が一切ない。
なぜならゴーストは生前に犯した罪を償えず、現世を彷徨う亡霊として認知されているから。
そんな罪深きゴーストにまとわりつかれれば自身もまた光の女神の下へとたどり着けなくなる。
犯罪者は頼んでもいないのに自白を始めるのだ。
ちなみに僕の知る限り、本物のゴーストは存在しない。
そのほとんどが野良精霊か定住精霊達。
おそらくは日中の事情聴取を面白半分で覗いており、なぜ本当のことをしゃべらないのか問いただしていたのかもしれない。
精霊とは本来人の目には見えず、その存在も人がその身に精霊を一人宿しているというくらいの認識しかない。
森の民の場合、身に宿す精霊とは別に森に棲む精霊を認識する力がある。
長い年月をかけてその精霊と絆を結び、魔導の行使を補助させるというのだ。
ちなみに僕の場合も魔導の行使は森の民とほぼ同じ。違うのは森の民が高位の精霊に働きかけ、微小精霊を動かすのに対し、僕は直接微小精霊に働きかけることが可能。
プログラムで例えるなら森の民は人の言葉で書かれたプロブラムをコンパイラに通し、僕の場合はマシン語を直接話すという感じか。
容疑者が口を割らないようならゴースト作戦を実行しようと思っていたのだが、先に精霊の方が動いたらしい。
朝ご飯の後は容疑者の取り調べを覗きに行くことになった。
本日の社長達の迷宮入りがちょっと怪しくなってきたな…先に連絡を入れておくことにする。
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「預言書の勇者様、こちらが聴取した内容です」
王城の地下牢へとやってきたのは僕とシロさん、どりあーどさん。
姫さま達にはちょっと刺激が強い場所なので今日は神社のお手伝いに行ってもらった。
うちで預かっている非合法の借金奴隷5人、そしてミドリも一緒に。
すこし体を動かしてもらって気分転換をしてもらおうという試みだ。
聴取を行っているバラの騎士から容疑者が口にした内容を受取る。
ちなみに監視用ドローンが張り付いているのだが、全部を聞く気にはなれないのでまずは要点だけを摘まむことに。
「あの二人、裏でつながってたんですか?」
「当人達にはその認識は無かったようですが、アコーギ商会が村から人を連れ去り、カルロス雑貨店に身柄を引き渡していたようで…」
めんどくさいことにここにきて第三者の関与が浮上。
仲介業者が別口で存在し、違法借金奴隷売買のマッチングを行っていることが発覚。
これは双方の口から出た話で、信憑性は高いとの事。
「商会の名前も分かっておらず、もぐりの業者の可能性もあります。今二人から接触方法を聞き出しているのですが、特別な割符が必要になると」
ちなみにカルロス商会で保護した5人は全員アコーギ商会の手によって誘拐されたと判明した。
二人に面識は無く、あくまで書類上での照合に過ぎないが。
ならばアコーギ商会から村に貸し付けた金の証文から村の場所を特定出来るのでは?
あの5人にはまだ本格的な聴取は行っていないが、普通の村人はその村から殆ど出ることが無く、自分の村がいったい何処にあるのか知らない場合が多い。
彼女達はそのパターンで、帰るべき村の場所を尋ねても知らないというのだ。
5人を連れて証文にある全ての村を回って特定することも考えたが、まずは本人たちの意思を確認しなければ。
以前借金奴隷として下級貴族の屋敷に囚われてた人たちは自分たちを売り飛ばした村に戻る気はないとの事で、神社の運営に力を貸してもらっている。
もしかしたら5人もそんな感じで連れてこられた可能性もあり、まずは事実確認を先に行う事とした。
いまなら住む場所も働く場所もあり、預かれるキャパは充分にある。
話は今夜聞くことにして、まずは第三者の割り出しを最優先事項とした。
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アコーギ商会とカルロス雑貨店から聞きだしたのは取次を行う第三者との接触方法。
「サブロー、いつでも大丈夫にゃ」
「どりあーどが全員つかまえる」
「二人ともおちついて。出てくるのは多分下っ端だから捕まえたところで何にもならないから」
危ない橋を渡るのに本人が出てくるとは思えない。
第三者に取り次ぐ第四者がいるはずだ。それも使い捨てが出来るチンピラのような存在が。
僕らは買う側、闇奴隷商を装って接触することにした。
服は急ぎ古着屋に飛び込んでなるべく商人に見えるようなものを購入。
古着屋に入るのはハナエ姉妹の事件以来か…。
シロさんとどりあーどさんは少しの間隠れてもらうことに。
カルロスから巻き上げた割符を持ち、指定された場所へと向かうと大通りから路地をいくつか入り、非常にかび臭い狭い通路へとたどり着く。
幅が3mほどの路地の突き当りは壁に見えるが、よく見れば人の出入りした痕跡が石畳に残っている。
王都の路地裏は建物の裏口と分からないよう、扉を壁に偽装していることが多いらしい。
よく見れば取っ手と思われる部分が変色し、足跡もあるので分かるのですが。
「買い物に来た」
突き当りの壁にそう話すと壁の一部に縦横20センチほどの穴が開き、目つきの悪い男と思われる目がこちらを伺う。
「割符を」
割符を取り出し、その穴へと差し込む。
「いつものやつはどうした?」
「夕べ飲みすぎて動けないと。代わりに自分が」
「この前もそんな話を聞いた気がするが。まあいい、何が欲しい」
「若くて上物のメスを1つ。みみありで」
要約するとケモノの特徴を持った若い女性を一人という意味だ。
これもカルロスから聞きだした情報だ。
「丁度いいのを仕入れたばかりだ。明日の昼過ぎに引き渡す。代金はいつもどおり半額前払いだ」
「持ってきた」
これもカルロスから(以下略
金貨の詰まった大き目の革袋を壁の穴に押し込むと先程の割符ともう1枚、メモのようなものを渡された。
「受け渡し場所が変わっているから気を付けろ。それと冒険者共が何かを探っている様子だと聞いている。面倒ごとに巻き込まれるな」
男はそう言い残すと壁の穴を閉じた。
金貨にはマーカーをつけてあり、何処に運ばれるか確認できるようにしてある。
今の目つきの悪い男自身にもマーカーを仕込み、映像と音声で確認が可能だ。
僕はなるべく怪しまれないようその場を後にした。




